2009年10月10日 (土)

道案内(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

2009年10月17日(土)~25日(日)まで東京国際映画祭(以下 TIFF)がTOHOシネマズ六本木ヒルズとシネマート六本木を会場に開催されます(参照:File.71 映画祭とフィルムの山)。今年のTIFFは昨年までの東急Bunkamuraは使用されません。東京国際ファンタスティック映画祭が渋谷から姿を消して4年が経過、短命に終わった東京国際シネシティフェスティバルが開催された新宿歌舞伎町からも映画館の閉館が相次ぐなど年月の経過を感じさせる昨今です。

今回はメイン会場となるTOHOシネマズ六本木ヒルズへの簡単な道案内をご紹介します。初めて訪れる方だと意外に分かりにくい立地です。行きなれていても実は遠回りしているかも!?というわけで六本木交差点から徒歩で向かうことを想定した行き方をご紹介します。


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東京メトロ日比谷線・都営地下鉄大江戸線の六本木駅がある六本木交差点から劇場まではおよそ520m。六本木ヒルズの待ち合わせスポットで有名な蜘蛛のオブジェを経由するとさらに距離があります。駅から地上を通っていく際はハリウッド・ビューティー・プラザを抜けると近道です。


では六本木交差点から劇場まで出かけてみましょう!

Dscn2947_2六本木交差点からスタートします。六本木通り(都道412号線)を画面右方向(西)へ進みます。


Dscn2949_2地下鉄の出入り口が見えます。地下鉄利用の場合は出口3でここに出ます。


Dscn2950_2 麻布警察署の手前に小さな路地があります。左折します。


Dscn2951_2物々しい雰囲気ですが大丈夫です。この路地を進みましょう。


Dscn2952_2路地を抜けると森タワーがそびえています。このT字路を右折します。


Dscn2953_2ハリウッド・ビューティー・プラザに着きました。ここから建物内に入ります。


Dscn2955_2特に案内されていませんがここは駅方面からの入口となる建物です。左奥の通路へ進みます。


Dscn2956_2通路の先にドアがあります。ドアから外に出ましょう。


Dscn2957_2いったん外に出ると左手にはテレビ朝日が見えます。横断歩道を渡って右手奥のヒルサイド入口ドアを入ります。この通路を通るのは六本木ヒルズの関係者が多いようです。


Dscn2958_2横断歩道を渡るとヒルサイドの入口です。中に入ると飲食店街です。


Dscn2959_3ジョン・ジャーディの意匠がよく表れた通路が展開します。キャナルシティ博多(福岡市)や、なんばパークス(大阪市)を彷彿とさせます。付近はちょっとした展望スポットも隠れています。


Dscn2960_2左手にエレベーターと階段が見える広場に出てます。そのまま直進します。


Dscn2961_2視界が開け左手は広場の六本木ヒルズアリーナ、右手にエスカレーターが現れます。服飾雑貨店『ESTNATION』の右脇にあるエレベーターに乗ります。案内板にはエスカレーターへの矢印がありますがこれは遠回り。エレベーターは劇場直結です。


Dscn2962_2エレベーターKで3Fへ向かいます。


Dscn2966_2TOHOシネマズ六本木ヒルズに到着!
映画を存分にお楽しみください。


陸の孤島と揶揄されていた六本木も、都営地下鉄大江戸線の開通でアクセスが格段に良くなりました。とはいえ映画館は駅から遠い位置にあるので時間に余裕を持って訪れるのが良いでしょう。

拙サイトの映写的な注目はやはり全スクリーンがTHX認定を受けているTOHOシネマズ六本木ヒルズで映画を鑑賞できることですね。シネマート六本木も劇場の大きさは控えめながら充分の上映品質を提供されている映画館です。

TIFFと連動して様々な催しも開催されます。映写的な注目はTIFFと連動して開催される『東京・中国映画週間』。今年は渋谷シアターTSUTAYAをメイン会場に新宿ピカデリーと2ヶ所で上映されます。渋谷シアターTSUTAYAは映写・音響マニアの間で評価の高い映画館でこちらもTHX認定のシアター1で開催されます。全般的にプリントの品質クオリティが低い中国映画を、35mmフィルム上映で最上級の映写環境を誇るこの劇場がどのように映写するのか興味深いです。

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2009年9月17日 (木)

File.112 くつろぎの映画館

久しぶりの更新となります。いつも拙サイトを応援してくださっている皆様、更新が少ないことをお詫び申し上げます。またこのたび『週刊文春』誌(2009年9/24号)をご覧になってアクセスしていただいた皆様、はじめまして。

このホームページでは映画館や映画業界のことについて書き綴っております。映画についてのサイトは数あれど、「映画館」をクローズアップしたものはあまりなかったことをきっかけにスタートいたしました。2006年1月の開設以来、多くの方にご覧いただき誠に感謝しております。都合により更新回数は減っておりますが、今後ともご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます(参照:拙サイト開設の経緯)


さて、このたび『週刊文春』誌で取り上げられたテーマは“くつろぎを重視したおすすめの映画館”。全国の映画館をベスト10で選出する記事に拙サイトも微力ながらお手伝いさせていただきました。
選者3名により選出された映画館10サイトは実際に誌面をご覧いただくことにして、
今日は映画館におけるくつろぎをご紹介しようと思います。

近年の技術・設備の向上で映画館の上映環境は以前よりも格段に良くなりました。デジタル音響システムによる臨場感溢れる音響や年々大きくなっていくスクリーンのサイズといった上映設備の充実をはじめとし、ゆったりとした幅を持つ座席や広々とした座席間隔など劇場の細部に至るまで快適に映画を楽しめるような工夫があたり前に凝らされるようになりました。
映写設備についてはシネコンを中心に劇場設計規格のTHXや、それに匹敵する設備が導入され多くの映画館で高規格の上映環境が提供されています。上映設備の改善が現段階では最高水準に達し、
映画館では生き残りを賭けて次なるホスピタリティの開発に努めています。その1つに挙げられるのが「くつろぎ&居心地」の良さです。

では映画館におけるくつろぎ・居心地の良さとは何なのでしょうか。

今回の取材協力において「くつろぎ」という着目点には非常に悩まされました。なぜならばこれは映画館に関わらず選定基準が主観的で個人差が大きい点だからです。そのためくつろぎという理由をつけるためにはどうしても主観的な判断を入れざるを得ませんでした。
これがたとえば「規模の大きな映画館」であれば客席数が日本最大の「新宿ミラノ1」やスクリーン数が日本最多の「ユナイテッド・シネマ豊橋」など実データを挙げて選出できるのですが、同様に「良い音響の映画館」であれば好みや主観で大きく変わってきます。
くつろぎや音響は人によって感じ方が違うので正解がないのです。

映画館のシステムや施策によっても大きく異なることでしょう。指定席or自由席、飲食自由or飲食禁止などは真っ二つに評価が分かれると思います。ユナイテッド・シネマが実施している3歳未満のお子様の入場制限や、小さなお子様連れの方のためにTOHOシネマズが実施している「ママズクラブシアター」などはサービスを求めている方には大好評でも、それを快く思っていない方もいます。くつろぎは各個人の生活スタイルや考え方でいかようにも変化します。


今回の取材協力では偏った視点にならないように、様々な角度から検討したうえで10サイトを選出させていただきました。もちろん先に述べたようにこれが正解ではありません。100人の選者がいれば100通りの結果が出て当然だと思います。そういった意味で今回の特集記事は映画館に対する価値観が人によって大きく異なるという、あたり前ながら新鮮な発見をさせていただきました。

10サイトを選定するにあたって、最初に全国27サイトを選抜しました。せっかくの機会ですので以下に列挙します。

・ユナイテッド・シネマ札幌
・ユナイテッド・シネマ前橋
・ユナイテッド・シネマとしまえん
・ユナイテッド・シネマ浦和
・ユナイテッド・シネマ豊洲
・CINEMA・TWO(立川シネマシティ)
・三軒茶屋中央劇場
・TOHOシネマズ六本木ヒルズ
・TOHOシネマズ二条
・TOHOシネマズららぽーと横浜
・渋谷シアターTSUTAYA
・品川プリンスシネマ
・新宿ミラノ1
・新宿ピカデリー
・祇園会館
・京都シネマ
・なんばパークスシネマ
・シネマデプト友楽
・シネマメディアージュ
・ワーナー・マイカル・シネマズ海老名
・ワーナー・マイカル・シネマズみなとみらい
・チネグランデ(チネチッタ)
・サロンシネマ&シネツイン
・ベッセルおおち
・エーガル8シネマズ
・アルテリオ映像館(川崎市アートセンター)
・西尾劇場

(順不同)

できる限り全国規模で選びましたが東北、甲信越、北陸、中部、九州、沖縄の映画館は未訪のため残念ながら選外となりました。さらにこの後、管理人が重視した点は以下です。

・座席の幅や間隔が窮屈ではないこと
・ロビーや劇場内の雰囲気が落ち着いていること
・スムーズな導線構造で心理的な圧迫感や抵抗感が少ない設計であること
・待合所や休憩スペースの充実性
・係員のオペレーションに安心感があること
・女性やお子様が出かけても安心できること
・映画館の立地環境が猥雑でないこと
・観客の鑑賞マナーが良いこと
・お手洗いや売店を気持ちよく利用できること
・その他実際に訪れた際の印象等

熟考の結果、以下の10サイトを選出させていただきました。10サイトに絞るのは非常に心苦しいものがあり他にもベスト10入りさせたかった映画館が多くあります。いずれも僅差においてのランキングとしてご覧いただければ幸いです。なお誌面に掲載されたベスト10は選者3名の総合評価で、当方が推薦した下記ランキングとは異なる結果となっています。

ユナイテッド・シネマとしまえん(東京都練馬区)
サロンシネマ&シネツイン(広島市中区)
TOHOシネマズ二条(京都市中京区)

4位 ワーナー・マイカル・シネマズみなとみらい(横浜市中区)
5位 ユナイテッド・シネマ豊洲(東京都江東区)
6位 ベッセルおおち(香川県東かがわ市)
7位 シネマデプト友楽(奈良県奈良市)
8位 京都シネマ(京都市下京区)
9位 エーガル8シネマズ(広島県福山市)
10位 西尾劇場(愛知県西尾市)

さて蓋を開けてみると他の2名の選者が推薦して1位と2位を獲得された映画館を私だけ選出しませんでした。上位2サイトは私も何度となく足を運んでおり、映画館としての設備や存在感は日本を代表するものであることは疑う余地がありません。しかし実際の現場の様子等を考慮した結果「くつろげる映画館」という観点から選外となりました。いずれも素晴らしい映画館ですが、落ち着いてリラックスできる環境からは少し遠のくと感じたられた結果です。どちらのシネコンも深夜上映を行っているので、夜中にしか映画館に行く時間がない人にはくつろぎの映画館と言えるかもしれませんね。“くつろぎ”以外の選考基準であれば高ランクであるため、順位をつけるのは本当に難しいと思い知った次第です。
一方で3位以下は票が重なったのか、はたまた私のランク付けが影響したのか分かりませんがほぼ上記のランキングに準ずる結果となりました。おすすめの映画館と一口に言っても見方や論点によって選択肢が変わることがよく分かりました。

今後さらに映画館は進歩していきます。映画館を育てるのは他ならぬお客様です。「ああだったらいいな、こうだったらいいな」をぜひ形にしていけたらと思います。映画館は映写や音響だけでなく、居心地やくつろぎを語る時代に入りました。デジタル映写・配信装置の開発により映画だけを見る施設にとどまらず中継放送上映や舞台の録画上映など新たな試みも始まっています。最近では個人や企業で映画館をレンタルできる営業形態も増えてきました。映画館の無限の可能性はこれからどのように進化していくのか目が離せませんね。

今回の記事をご覧になった方にはぜひ気軽に職場やご自宅から行きやすい映画館で映画を楽しんで頂きたいですね。そして気に入った作品があればぜひ2回目を違う映画館で味わってみてください。同じ映画でも感じ方や映画館の雰囲気の違いがあることに気づくと思います。そうやって映画館が好きになる方も多いんですよ。映画と同じくらいに映画館も楽しんでいただけたら嬉しく思います。

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2009年3月10日 (火)

雪の下の炎

お久しぶりの更新です。
管理人の多忙により長らく更新がストップしていること、お詫び申し上げます。その間多くの励ましのメッセージを頂戴し本当にありがとうございます。折を見て更新を続けてまいりますので今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

今日はどうしても書かなくてはいけないと思い筆をとりました。1959年3月10日のチベット蜂起とダライ・ラマ法王の亡命から50年。この日チベットは中華人民共和国による武力侵攻に対し立ち向かい、全チベット人の精神的・信仰的支柱であるダライ・ラマ法王を護るために立ち上がりました。これまでにおよそ120万人のチベットの方が犠牲になり本日はチベット人にとって鎮魂の一日です。いま中国当局はチベット自治区内の全通信を検閲し外国人の自治区立ち入りを禁止し、公安・武装警察・人民解放軍を動員した厳戒態勢でチベットの動向を監視しています。

ここでは多くのことは申し上げません。一人でも多くの方にチベットの人々が置かれている状況を知ってほしいと切に願います。

本日と13日に東京渋谷の映画館UPLINKでドキュメンタリー映画『雪の下の炎』が上映されます(本公開は来月より)。チベットの自由を訴え政治犯として33年間投獄された僧侶パルデン・ギャツォ師を取材した日米合作のドキュメンタリー映画です。

私は日本で映画に携わる者としてこの作品を支持します。一人でも多くの方にご覧頂き、チベットのことを知ってほしいと願っております。中国ではチベットの自治権やダライ・ラマ法王の話題はタブーであり論議することはできません。民主化や多党制の論議すらも反体制分子として監視対象なのです。外国人だからこそこの作品を見ることができるのです。当サイトでは政治的な話題についてはこれまで触れないようにしてまいりましたが今回はその方針を破らせていただきました。

チベットは一斉蜂起50周年を迎え、昨年の騒乱から一年が経過しました。2009年の正月祝い(ロサー)は追悼に捧げられ喪に服しています。チベットには言論の自由はありません。人権もありません。彼らがいちばん大切にしている信仰も文化大革命以後、徹底的に破壊されました。それでも彼らはいま厳冬のチベットで耐えています。チベット仏教が説く「非暴力」に訴えています。

オバマ米大統領の就任演説の際、彼のポケットにはかつてダライ・ラマ法王から贈られたカタ(敬愛を意味するスカーフ)が入っていました。いま全世界がチベットの動向を注視しています。ヒマラヤの厳しい寒さと雪の下で静かに炎は燃えています。
このたび『雪の下の炎』と『風の馬』が日本で公開されることを誇りに思い、UPLINK代表の浅井氏に心からの敬意を表します。そして犠牲になったすべての方々に哀悼の意を表すると共に、チベットに安寧が訪れることをお祈りいたします。

Free Tibet.

2009年3月10日
映写室からのつぶやき
管理人月夜野

映画『雪ノ下の炎』


楽監督から作品についてメッセージを頂きました(2009年9月19日)

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2008年6月10日 (火)

File.111 IMAGINE…

多数の観客と同じ時間を共有して映画を楽しむことは映画館ならではの醍醐味と言えるでしょう。映画館での映画鑑賞は“映画体験”と言い換えても良いほど家庭でのそれとは大きな違いがあるように思います。大きなスクリーンと充実した音響設備による効果はもちろんですが、大勢で同じ映画を鑑賞するというシチュエーションが、人間の感受性に与える影響は大きいのではないかと思われます。封切時に金銭を支払ってでも映画館で映画を見るという行為は、映画を共同で鑑賞体験する環境そのものにもお金を出していると考えて良いのではないでしょうか。

ある映画館で流れる本編前映像での「みんなで笑えば興奮100倍 みんなで泣けば感動100倍」というフレーズはこのことをうまく指していると思います。映像・音響テクノロジーの進歩で映画の演出表現は着実に向上しています。そして同じ作品を見に来た大勢の観客と共に泣き笑える映画館は、映画表現をさらに効果的に高めた体験ができる場所であると管理人は考えています。

しかしその一方で不特定多数の方が大勢集まる場所であるがゆえに、お互いが心地良く過ごせるように配慮をしなければせっかくの映画も台無しになってしまう危険もはらんでいます。今日はこれまでとは違う視点での映画館の話、鑑賞マナーについてお話しようと思います。


映画館特有の環境

都市部に住んでいる方は連日の満員電車通勤などで不特定多数の人と同じ時間を過ごす機会が多いことと思います。映画館も不特定多数の方が集まる点で満員電車と変わりはありませんが環境面で大きな違いがあり映画館特有の環境として以下が挙げられます。

・静寂の保たれた空間であること
・暗闇の保たれた空間であること
・映画鑑賞に集中できる空間であること

大まかに挙げるとこの3点が映画館の鑑賞環境で重要項目となります。3つめに挙げた「映画鑑賞に集中できる空間」で映画を楽しむためには、他のお客様への迷惑にならないように鑑賞マナーを守って時間を過ごす必要があります。
映画館では鑑賞マナー啓蒙のためにマナーCM上映や注意喚起のアナウンス等を行っているところが多く見られます。これらを理解して正しい鑑賞マナーを身につけたいものですね。


鑑賞マナーは映画館のルール!

しかし残念なことに必ずしもすべてのお客様が鑑賞マナーに対して理解されているわけではないようです。一部のお客様による迷惑行為によってお客様同士のトラブルや苦情が発生するのは日常茶飯事です。悲しいことではありますが近年の鑑賞マナーの低下は著しいものがあるように感じています。みなさんのなかにもマナー違反によって映画に集中できなかった経験がおありの方も大勢いらっしゃると推察します。

ここでは具体的な鑑賞マナーについて多くは申し上げません。映画に集中できてみんなが映画を楽しめる環境のために守るべきマナーは周りの人々へのちょっとした気配りで実現できるはずなのですから…。

海外では映画の上映中に大きなリアクションをとったり会話をすることが珍しくない地域も多くありますが、日本の映画館は静かに鑑賞するのが一般的です。映画館で映画を楽しめるように、ひとりひとりが配慮をしたいものですね。


これだけはやめて!

映画館で多発するマナー違反。ここでは特に悪質なもの・困るものを挙げてみます。マナーを守って利用されている大多数の方にご覧頂くのは恐縮ではありますがご容赦くださいませ。


・チケット未購入での他作品上映スクリーンへの侵入
シネコンなど複数の上映スクリーンがある映画館では様々なタイトルを上映しています。映画の上映チケットは基本的に同一作品に限り有効となっています。指定制および入替制の映画館は当該上映時刻のみ有効です。したがって1枚のチケットで他の作品を見ることは禁止されています。悪質なケースとして鑑賞後に他のスクリーンへ侵入して無銭で“はしご”されている例がありますがこれは窃盗です。発覚時点で警察引渡しの対象となります。

・上映作品の録画・録音行為
上映されている作品は著作物として保護されており、無断で録画・録音を行うことは法律で禁じられています。盗撮行為としてこれも発覚時点で警察へ引渡しとなります。一部作品においては撮影された映画館が特定できるものもあり、この場合は場内監視カメラなどを解析して容疑者を特定・逮捕することができます。違反者には10年以下の懲役刑など重たい刑罰が科せられます。

・器物破損行為
器物破損というと何やら破壊行為のように思われる方もいらっしゃるかもしれませんがちょっとしたことでも映画館の営業に支障が出る行為がいくつかあります。たとえば好奇心で上映スクリーンに触れるなどの行為。スクリーンの表面は塩化ビニールに金属の酸化物をベースとした特殊コーティングを施したもので大変にデリケートです。不用意に触れると手指のわずかな油脂でもシミとなって定着してしまい、これを除去することはできません。スクリーンには絶対に手を触れないようにお願いいたします。またサラウンドスピーカーなどもデリケートです。上映機材に触る行為は性能を損なったり破損につながります。座席の座席フックやドリンクホルダーなども大切に扱ってください。

・展示品の持ち去り行為
ロビーに掲示してあるポスターやスタンディーなどの宣伝物は配給会社から作品の宣伝用途のみに使用する許可を得て展示してあります。作品キャラクターのぬいぐるみなどは欲しくなる気持ちはよく分かりますが配給会社の所有物をお借りしているものです。持ち去り行為はたいへん困ります。

・劇場内での公序良俗に反する行為
まれなケースですが劇場内で公序良俗に反する行為に及ぶ方がいらっしゃることがあります。他のお客様が非常に不快な思いをするのは言うまでもありません。また上映後に後処理をするスタッフもたいへんです。ここでは公序良俗に反する行為とまとめて記述しますが様々なケースがあって想像を超えることも…。

・ゴミの不始末
楽しい映画が終わってみると場内はゴミの山…悲しい光景です。ゴミはロビー備え付けのゴミ箱までお持ちください。「自分くらい」という気持ちでも大勢集まると収拾がつきません。清掃時間に必要以上のスタッフを要すればそれだけ他のサービスが手薄になり、開場準備に要する時間も増えてしまいます。200席程度までの劇場ならば2人程度で対処可能ですが350席を超えるクラスになると5~6人以上で対応しないと間に合わなくなります。座席の奥にゴミを隠すなど悪質なケースも。言うまでもありませんがゴミはゴミ箱に。

・暴力行為
滅多にないこととは言えお客様同士や従業員への暴力行為も発生します。飲酒状態で発生することが多いです。理由はどうあれ暴力行為や恐喝行為は他のお客様に危険が及ぶため警察に通報することになります。

・痴漢・わいせつ行為
劇場内が暗いのを良いことに痴漢行為を行う人が出没することもあるようです。痴漢防止のため上映中に薄っすらと照明を点灯している映画館もありますが、犯罪抑止のために鑑賞環境が犠牲となっている例です。れっきとした犯罪でマナー以前の許しがたい行為です。

・禁煙場所での喫煙
映画館での火災は大きな懸念事項です。そのため近年の映画館は不燃建築材料や火災通報装置の設置で防災に取り組んでいます。消防条例等により多くの都道府県で劇場内での喫煙は禁止されています。また劇場施設全体が禁煙となっている映画館での喫煙はおやめください。映画館の火災通報装置は上映機器と直結しているためたばこの煙や熱による誤報でも安全装置が作動して全スクリーンの上映が停止します。発覚した場合損害賠償請求の対象となるので、喫煙は定められた場所でお願いします。


想像しよう

マナー違反のなかでも特に悪質なものを列挙してみました。悪質ではないにせよ他にも上映中のマナー違反は数多くあり、枚挙にいとまがありません。みなさんに気持ちよく映画館をご利用いただくためにも、他のお客様に配慮をして映画を楽しんでいただきたいと思います。

映写の視点からでは劇場内は携帯電話の電源をOFFにしてください。通話はもちろん、マナーモードでもバイブレーションの音や液晶画面のバックライトなどは周囲のお客様の映画鑑賞の妨げとなります。よりよい環境で映画をご覧頂くため映画館は場内の暗さや消音設備などにも気を配っています。バイブレーションのわずかな音やバックライトでも上映中は非常に目立つものです。

どういう行為が周囲の迷惑になるのかIMAGINE(想像)すれば、おのずとマナーは向上するのではないでしょうか。一部の人の行いで「映画館では集中できないから行かない」と言われるのは悲しいものです。快適な環境は映画館で気持ちよく大勢で楽しむために、ひとりひとりがマナーを守れば実現できること。映画を見るのにわざわざ周囲の人への想像力を働かすなんて…と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、本来なら想像しなくても自然に身についているはずのマナーだと思います。

本日は読んでいて楽しくない記事だったかもしれません。この文章で変化があるか分かりませんが、鑑賞マナーの向上を願わずにはいられません。せっかく時間とお金を使って映画館に行くのですから気持ちよく楽しみたいものですね。

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2008年5月13日 (火)

File.110 爆音映画祭

「映画は映画館で見るのが好き。それも大音響で」という方が増えています。そんな方のために今日は吉祥寺バウスシアター(東京都武蔵野市)で開催される爆音映画祭についてお話しようと思います。


音響技術の向上と大音量


録音技術と上映音響設備の向上により映画館の上映音量はこの数年で確実に大きくなりました。大きな要因として音響機材(スピーカーやパワーアンプ等)の高能率化と、音声フォーマットのデジタル化が挙げられます。1992年に劇場用音響システムとして発表されたドルビー・デジタルの登場で映画の音は録音から再生までをデジタル信号で扱えるようになりました。従来のアナログ音声より幅広いダイナミックレンジ(最小信号から最大信号のふり幅のこと)とCD並みの音声品質を活かし、迫力のある音量での上映を多くの映画館で行えるようになったのです。

大きな音量と言っても通常興行においては当然ながら常識的な範囲があります。映画館は老若男女問わず様々なお客様が来場される公共施設ですから映写担当の独断で「爆音にしてやる!」なんてことはできません。音量の感じ方は個人差が大きいために上映の際は音量に注意を払って決定する必要があるんですね。映写係も業務試写では音声に意識を集中させて最適な音量を常に意識する必要があります。作品の客層や性質にもよりますがお客様から苦情を頂戴するような大音量と、表現意図を無視した設定は基本的にNGというわけです。

映画の音は映画館において規定のレベルで再生されることを前提として制作されていて、作品や劇場の特性に合わせた適正音量が存在します。この規定レベルに沿った音量が最適な音量となり、誤差が大きいほど音の再現性が損なわれていきます。適正音量がどのくらいのレベルかと言うのは音響設備を調整する際の試験音を聞くことなどで養うことが可能ですが、ほとんどの映画館は映写係の感じ方に委ねられていることが多いようです。映画の規定音量については別の機会に言及しようと思います。


爆音問題


お話しを元に戻します。
では規定レベルをはるかに上回る、いわゆる爆音で上映を行うとどのようなことが起きるでしょうか…?

ええ、様々な問題が発生すると思います。
まずお客様から苦情を頂きます。規定レベルでも音が大きいと感じられるお客様はいらっしゃるので爆音になれば結果は目に見えています。設備面でもスピーカーの破損につながったり、隣接スクリーンや近隣への騒音を招く恐れがあります。作品も普通の台詞が怒鳴り声のように大きくなって不自然に聴こえるでしょう。音が歪んだり割れたりして適正な再生が難しくなり、音の正確性も損なわれてしまいます。基本的に爆音での上映はそれに耐えられるだけの音響設備・構造設計と観客の許容がなければ難しいですね。

こういった様々な理由により映画館で爆音を体験する機会はありません。大音量が好きな方には物足りないと思うこともあるかもしれませんが、映画の音作りが爆音を想定していない以上は仕方がありません。


そこで爆音映画祭!


そこで注目したいのが吉祥寺バウスシアターで2008年5月17(土)~24日(土)にわたって開催される爆音映画祭です。2004年に『クンドゥン』(1997年)上映で初披露されて以来コアなファンを持つ爆音上映がついに爆音映画祭として終日プログラムで登場します。このような企画上映として枠を設けることができれば思う存分に爆音を体感することができますね。

吉祥寺バウスシアターは芝居小屋やライブ会場として使用されてきた名残で音響調整ミキサー機材を保有しており、上映スピーカーもシネマ用とは異なるCOMMUNITY社製PA用スピーカーが使われます(ライトおよびレフトスピーカー)。
爆音というのは単に音量を上げれば実現できるものではなく、熟練者による調整と音作りを経てはじめて実現できるもの。吉祥寺バウスシアターの爆音上映では毎回音響調整作業を行い、手間をかけて音を作っているそうです。前述の通り爆音上映を行うための環境を整えているからこそできる芸当と言えるでしょう。

具体的にはL・RチャンネルにPAスピーカーを4発×2とスクリーン裏のCチャンネル4発をバイアンプ接続でドライブ。映画再生と言うよりはロックコンサートに対応できるパワフルな布陣です。音声信号は映写機から後のBチェーンにミキサーとブースターをかまして細部まで音作りを行い観客席まで届けられます。単純に音量を上げるだけの爆音騒音上映とは違い、上映者の解釈・意図を交えた音響設計にも注目です。

一方で映画館の音響設計や調整は、様々な映画を無難に正確に再生することを目的にチューニングされ変更することはありません。映画の音を録音するダビングステージと映画館の音環境を整合させることで正確な再生が行えるように設計されるため、映画に合わせて調整することはあまりないのです。
映画館で多様な再生に対応する例としてはユナイテッド・シネマ豊洲のAFC、CINEMA TWOのKicリアルサウンド、ベッセルおおちのDCS、MOVIXの一部サイトにある音響調整システムなどが挙げられます。日比谷みゆき座でイベント的に行われたオペラシアター・リアルサウンドもイコライザー調整で音場を創成する試みとして良い例です。CINEMA TWOは映画館としては異色のPA寄りなセッティングが見受けられます。

映画館で普段上映されている音量はやや大きめな場合で平均85dB程度。生活環境で例えると走行中の電車・バス車内に相当します。爆音映画祭ではこのレベルのおよそ4倍相当、自動車の警笛や鉄道のガード直下並かそれ以上の大音量で上映が行われます。このような大音量を映画館で体験することはできません。前述の通り映画館の音響機材は世界的な統一基準でセッティングされていることが多く、音の調整をしたりチャンネルごとの音量を変えることは基本的に行いません。THXの映画館では設定を変えて上映するのはNGとなります。

爆音映画祭は通常の映画鑑賞とはまったく違う鑑賞方法を提示する意欲的な試みだと思います。映画制作者が作った音に爆音という新たなエレメントを吹き込み、スタッフの解釈を通した爆音に身を委ねるという鑑賞方法はひとつの上映スタイルとして画期的な形態ではないでしょうか。溢れ出す大音量とスクリーンから今まで見えてこなかったもの、聞こえなかった音が発見できるような気がします。

注目の作品は22日(木)13:30~『ロスト・ハイウェイ』と16:10~『プライベート・ライアン』。『ロスト・ハイウェイ』は鬼才デヴィッド・リンチ監督が誘う不可解で不条理なストーリーが秀逸で冒頭からデヴィッド・ボウイの楽曲で疾走する怪作。リンチ監督の作品は録音・ミキシング共に素晴らしく、5・1chをこれだけ効果的に使いこなせる監督は少ないと思います。電話のベルやフレッド家の低音ノイズがどう再現されるか聴きどころ。フレッドの変身シーンの多重ミックス音とマリリン・マンソンのヴォーカルにも注目でしょうか。
『プライベート・ライアン』は説明不要でしょう。アカデミー賞音響賞と音響編集賞をダブル受賞したマルチチャンネルの見本市のような派手音響が味わえます。爆音でオマハビーチの狂気が再現されると思うとゾクゾクします。
戦闘シーンの壮絶なサウンドばかり注目される映画ですが、爆音上映で戦場の静寂や夜間シーンとエディット・ピアフがどのように表現されるか楽しみですね。この2作品は私もぜひ鑑賞したいと思っております。

爆音映画祭は映画の新たな楽しみ方を提示してくれるきっかけになるかもしれません。今後も映画祭が定着して開催されるように、成功をお祈りしたいと思います。

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2008年5月 3日 (土)

File.109 WMC東岸和田メモリアル 5

連載記事「ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田メモリアル」の最終回です。日頃から「もっと映写のことを書け」とご要望を頂いているので今回は映写の観点から5番スクリーンの所感を記して締めくくろうと思います。

5番スクリーンはWMC海老名7番スクリーンと同時に国内で初めてライセンス供与されたTHX映画館の最古参です。座席数は476席、スクリーンサイズ6.4m×14.94mの堂々たる規模は開館から15年経た今も色褪せません。

オープン当時は「東に海老名、西に東岸和田あり」と呼ばれるほど抜群のブランド力を発揮し、劇場入口の発光型THXサインパネルからもその自信の程が窺えますね。
今でこそ国内のTHX認定館は50サイト101スクリーン(2008年4月現在)まで増加しましたが、認定館の新規開業が停滞している現在は再びTHXの希少価値が上がっているように思います。なお商用映画館の国内初認定は前述通りWMC海老名と東岸和田ですが、立川シネマシティも同時期に初認定を目指していました。

オープン時は世界最先端の設備を有した映画館としても知られました。それまで一流設備と評価されていた北野劇場(大阪市北区 1980年開業)や日本劇場(東京都千代田区 1984年開業)とは一線を画するTHXに準拠した音響設備構造を構築して、日本に新次元の映画音響をもたらした功績は計り知れません。


5番THXスクリーンを観察


映像品質を低下させるスクリーンへの反射光を低減するために場内のカラーリングはモノトーンでまとめられています。この頃は側壁が白色の映画館も多くありました。
壁面はグラスウールで加工されTHXの残響規定をクリアする設計となっています。スピーカーも壁面に埋め込まず直接取り付けて音声品質の低下を防いでいます。



22基のサラウンドスピーカーが客席をくまなく取り巻いています。サラウンドスピーカーのセッティングはTHXの指定で決定され小型のスピーカーで客席全体を包み込むように設置するのが定石です。このスピーカーは旧タイプのJBL8330で現在は販売されていません。日本各地の映画館で今も活躍しているので見覚えのある方も多いと思います。



WMC東岸和田のスクリーンサイズになると縦幅が6mを超えます。客席の配置が緩いスロープ構造だと前の人の頭がスクリーンに被さるので画面の設置位置を高くする必要があります。この方法は画面を見上げる角度が急になってしまうデメリットがあります。
この劇場ではスタジアム形式で客席の段差を大きくし、多くの座席でスクリーンを見上げることなく見やすい視野環境を提供しています。サイドブロックの座席が内側方向に設置されているのも工夫のひとつ。おかげで画面と客席に一体感が生まれます。またスクリーンと客席の位置を揃えることにより音響の品質向上にも一役買っています。



連載の4回目にも書いたことですが、当時の常識からすると大都市の大劇場ではない収容人員500名を下回る劇場で横幅15m級のスクリーンは非常に大きなサイズでした。日本劇場(1008席)9m×18m、新宿プラザ劇場(東京都新宿区 1044席)7.5×18.1mなどの国内最大級の劇場と比べてみれば客席数に対する画面スケールは明らかです。
全デジタル音響方式を装備した点も革新的でした。画像のように幕間にはdtsのロゴが映し出されていました。



映画の音声がモノラルやステレオ主流の頃は音を壁で反射させて擬似的な音響立体感や響きを創生する手法が多用されました。デジタル音響が主流となりつつある現在は緻密なサウンドデザインを明確に再現するために場内の残響を極力抑える設計が主流です。WMC東岸和田は8スクリーン全てに吸音構造を採用。アナログ音響からデジタル音響まで効果的に再生できるように設計されています。
なかでも残響特性はTHX規格で特に基準が厳しく決められている項目で、各周波数帯域ごとに最大値と最低値が定められています。この規格内に残響時間を収めたのは海老名と東岸和田が国内の映画館で最初です。古い映画館では残響時間が2秒以上というクラシック音楽ホール並のところもあり、映画再生にとってこのような過度な残響があると台詞が聞き取りづらくなったりエコーがかかったりして音の情報量が著しく低下します。



映写室の下に空間がある一風変わった構造になっています。本来ならば「映写室が張り出している」と形容できるところですが、張り出し部の下に座席がないのですっきりとして見た目も良いですね。これでもかと設置されたサラウンドスピーカーが大迫力です。
リア壁面はかまぼこ状の音響調整素材が並べられフロントからの音声を効果的に吸収すると共に、リアサラウンドの音の定位を拡散させる構造になっているようです。
後部壁面の形状や吸音性・音反射性は箱全体の音響特性に影響を与える重要な部分です。THXは明瞭な台詞再生を重視して劇場後部の音反射を抑制し、スクリーンへの反響を起こさない劇場設計を推奨しています。この設計思想はTHXの認定を受けていない多くの映画館でも支持されています。スクリーン裏のメインスピーカーと相対する場所だけに気を遣うところですね。




鑑賞の感想


この日は5番THXスクリーンで『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』を鑑賞しました。音響方式はドルビー・デジタル(SRD)です。上映に先立って劇場マネージャーの方によるスクリーン前でのご挨拶がありました。15年間の感謝の意がこもった挨拶に思わず拍手…。場内の他のお客様も拍手をされ、ほのぼのとした雰囲気での上映開始となりました。

閉館する映画館なので予告編の上映は無し。ポリシー映像に続いてTHXトレーラー「TEX2 MOO CAN」とドルビー・デジタル・トレーラー「EGYPT」の上映。本来であればTHXトレーラーが後に上映されるはずで変則的な順序ですね。トレーラーは使い古されて変色し、音量も不足していましたが省略せずに上映していたことは大変嬉しく思いました。サウンドトレーラーは仕方がないとしても、THX認定の映画館はアドバンテージとなるTHXトレーラーは省略してほしくないと個人的に思います。

さて、音響マニアの間では総じて厳しい評価を受けることの多かった5番THX。以下は一個人の感想であることを前提でお読みいただけたら幸いです。


映写について


まず鑑賞時の映写能力については一級の品質を示していたことを書き記したいと思います。
連載で触れた通り5番スクリーンは映写室が高い位置にあるうえにカーブのついたスクリーンを使用している関係上、スクリーン全面にフォーカスを合わせるのが難しい造り。映写俯角がきついほどコサイン誤差と呼ばれるフォーカスのずれが生じ、画面に均一な焦点を合わせることができなくなるのです。これをどれだけ均一かつシャープに調節できるかが映写技師の腕の見せ所とも言えます。この大きな俯角でもTHXの基準に収まるのは意外に感じました。

映写機とスクリーンの水平ラインが正対すると左図のように適正な映写が可能。俯角が大きいほど右図のように台形状の歪曲が生じ画質の低下とフォーカスの不具合が発生する。この問題はスタジアム形式の映画館でよく見受けられる。

ちょっと小難しいお話しになってしまいましたが、要するにWMC東岸和田5番スクリーンは良好なフォーカスを出すのが少々難しい劇場なのです。

この点において隅々まで非常にシャープな像を結んでいた映写技術は素晴らしかったです。フィルム画像の粒子がきちんと分離して確認できました。そして使い込んでいる映写機のはずなのに画面の揺れも抑えられており高品質な映写で映画を楽しむことができました。欠点としては輝度が弱く画面が暗かったことでしょうか。暗さが作品の雰囲気にはマッチしていたもののもう少し上げるべきでしょうね。

映像は切れ味に優れボヤけた感じのないクッキリ目の再現。闇の再現が奥行き深く表現され、暗部に上品な艶やかさが感じられます。シャープネスと立体感が際立っているので映像に説得力がありました。総じてとても気合いの入った映写と見て取れ、輝度が暗い以外は気になることはありませんでした。もう少し明るい映写であれば解像感や階調もさらにはっきり分かったと思います。


音響について


音響は個性のある箱です。特筆すべきは台詞再生を主に担当するセンタースピーカーの音が生々しいこと…。いわゆる肉声感と言いますか人の声が生っぽく聞こえる個性が際立っています。フロントの音場はスクリーンの前に立体的に創生され、音楽や環境音を担当するL・Rスピーカーとセンタースピーカーが程よく分離独立して再生されているのは見事です。
そして緻密に配された22基ものサラウンドスピーカーとフロント音声が一体化して濃密なサラウンド音場を展開。

台詞再生で肉声感を強く感じる映画館は多くありません。5番スクリーンは息遣いまで感じ取れるような繊細な表現力を有しており、音響の派手な映画よりはミュージカル映画や重厚な人間ドラマの上映に適している印象を持ちました。またフロントの拡がり感やサラウンドの濃密な表現は海老名7番THXに共通した個性と言えそうです。

その一方で音の切れ味、解像感に鋭さはなくマイルドな味わいと言えます。フロントの残響は海老名よりも控えめですが聴感上での全体的な残響成分はTHXとしてはやや多めに感じられました。これはサイドに張り出した梁や劇場の形状に起因するのではないかと思います。
メインスピーカーとサラウンドスピーカーの一体感と音場の厚みは素晴らしく、リアの音響調整素材による拡散効果も感じられました。

メリハリがあって解像感ある音響や派手な重低音やサラウンド感を求める向きには多少不満が感じられる音かもしれません。管理人の印象では肉声感のリアリティは素晴らしいと思いましたし、一歩前に出てくるフロント音場の存在とサラウンドとの一体感は他ではあまり感じられない特徴で気に入りました。くせの少ない音でサラウンドの音源が柔らかく全体をカバーしているのもTHXらしいと思いました。響きが多少なりともあり箱の後部と上部で音がやや濁る点が惜しいですね。

映像と音響の品質を考えれば、はるばる訪れてこの劇場で鑑賞できて良かったと思いました。11年前にここで『コンタクト』を見たときの衝撃はまんざらでもなかったなあと実感することができ、建設から15年の歳月を経た最初のシネコンとすれば充分及第点と言える劇場です。


さようならWMC東岸和田


自分が映画館に関心を示すきっかけを与えてくれた映画館の閉館は寂しいですが、ロビーのメッセージ掲示やスタッフの閉館挨拶などフィナーレを締めくくるのに充分な記憶を自分の心のなかに留めることができました。今後はWMCりんくう泉南が後任となって業務を引き継いでくれることでしょう。WMC東岸和田で見た作品数は多くはありませんが、5番THX以外のスクリーンも思い出として大切にしまっておこうと思います。

15年間おつかれさまでした。
さようなら、ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田。

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2008年4月17日 (木)

File.108 WMC東岸和田メモリアル 4

しばらくの間、更新をお休みさせていただいておりました。
ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田閉館特集の四回目です。閉館をむかえたロビーの掲示物が目をひきました。



WMC東岸和田メモリアル Vol.4




閉館告知

閉館理由「施設の老朽化等により」と含みを持たせているあたりに様々な要因があったことを想像させます。商圏や地域購買力を考えれば大阪府下に3サイトの展開は意外に少ないように感じられます。しかし大手チェーンの109シネマズ、シネプレックス、ティジョイ、ユナイテッド・シネマの4社が大阪府に各1サイト展開であることを考えればWMCは多いほうですね。埼玉県や神奈川県のシネコン過密進出のほうが異常なのかもしれません。




15年分のありがとう

SPECIAL THANKS FAIRと題して1月5日から閉館までの一ヶ月間、15年間のヒット作19作品を500円で提供。また岸和田にゆかりのある『岸和田少年愚連隊』『だんじり』を無料上映。総決算として閉館間際の三日間は封切中の全作品が1,000円で上映されました。収益の一部は岸和田市社会福祉協議会への車椅子15台寄贈として活用されました。

こういう短期間での企画上映は映写スタッフにとって大変な重作業になります。
編成部は映画配給会社と上映契約を締結、プリントを手配→編集作業→試写チェック→上映→解体作業→返送…この繰り返しです。旧作品はプリントの状態が良くないものもあるので取り扱いにとても神経を使います。
またスクリーンを多く持つシネコンでも大量の上映作品を控えると上映に必要な巻き取りリングアセンブリ(通称リング/ワッパ。ノンリワインド・1台式映写で必要となる
)と呼ばれる部材が不足するので他のサイトからかき集めて対応することになります(参照 File.71 映画祭とフィルムの山)




多くの思い出がつづられたメッセージカード

ロビー特設コーナーでお客様からのメッセージが多数紹介されていました。この映画館を支持する人々の熱い思いが感じられました。すべてのメッセージをご紹介できず残念です。お客様の数だけこの映画館にはドラマがあったんですね…。




悲痛なメッセージも…

このメッセージを書いた女の子はどういう気持ちだったのでしょうか。





スタッフのメッセージ

お客様からのメッセージに対して、劇場スタッフの皆さんからも一筆が添えられていました。スタッフひとりひとりの頑張りで15年の歳月を刻んできたのだと思うと、奇しくもクロージングスタッフとなった皆さんの気持ちはいかばかりでしょうか。みなさんお疲れ様でした。MGの皆さんもきっと新天地で頑張っていることでしょう。

「シネコンは工業的で無機質だ」という厳しい声を耳にすることがありますが、WMC東岸和田は手作りのPOPや掲示で親しみのわく劇場空間が構築され居心地の良いシネコンでした。その裏側には様々な努力を重ねてきたスタッフの姿が見えます。お客様にはきっとそのことが伝わっていたと思います。人の温もりや心遣いを感じる映画館、WMC東岸和田。私にはそう感じられました。

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2008年3月20日 (木)

File.107 WMC東岸和田メモリアル 3

ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田閉館特集の三回目です。
東京と大阪間の日帰り遠征行程のため、1作品だけ見てとんぼ返りすることになりました。WMC東岸和田のメインスクリーンである5番THXスクリーン(定員476名)の様子をご紹介しようと思います。




WMC東岸和田メモリアル Vol.3




5番スクリーンの入口
コリドールの最奥部にある5番スクリーンはWMC東岸和田で最大の定員数476名を有するメインスクリーンです。出入口はこの後方扉のみ(非常口除く)で4枚扉の広い間口を有しています。
二重扉や回折導線構造にしない代わりに出入口付近にスペースを設け、側壁開口で場内への光の侵入を防いでいる細かな配慮に感心します。これはミニシアターや古い映画館で見かける形態でシネコンでは珍しいです。前方からスロープ形式で入退場するシネコンでは考えらない構造です。




THX認定を表すサインパネル
ここは日本で3番目に認定を受けた歴史あるスクリーンです。入口の電光タイプのシネマプラークがTHX認定劇場であることを誇らしげに主張しています。

WMC東岸和田が認定された当時のTHXが、ルーカス・フィルムの一部門「LUCASFILM LTD,THX Division」であったことが読み取れますね。現在のTHXはルーカス・フィルムからは分離して資本関係を解消しているために、現行のシネマプラークにはLUCASFILMの文言は入りません。残念なことにこれが国内興行会社のTHX離れの決定打となったのです。

上側にある音響フォーマット表示はWMCオリジナルのサービスです。作品ごとの上映フォーマットを入口で明示してあり音響マニアには嬉しいですね。この表示はドルビー・デジタル(SRD)を表しています。





最後列から見た劇場内
最初にこの劇場を訪れたときの驚きは今も忘れられません。完全なスタジアム形式を用いて大きな劇場でも見やすい視野を確保できることを見事に証明し、欧米サイズのゆったりとしたシートに腰を沈めてTHXを体感できたのです。
設計技術の進歩した現在見ると特徴のある場内ではありませんが、陳腐さを感じるところがないのは素晴らしいと思います。15年前にこれほどの劇場を造り上げた設計・施工各位の努力に敬意を表したいと思います。1993年当時はこんな高規格の劇場は他にはなかったのです。映画館に新時代の到来を告げた名箱と言えるでしょう。





スクリーン前からの眺め
476席の定員のわりにはコンパクトな印象を受けます。天井高や左右梁の構造など視覚的にそう見えるようです。構造はWMC海老名7番スクリーンを一回り小さくした印象で、さすがに同時期オープンだけあってよく似ています。海老名は劇場中央に通路がありド真ん中には座れないのですが、こちらは左右に通路を4本通して中央通路を排しています。映写窓は小さな窓が2ヶ所開口し天井高の限界の位置にありますね。





劇場中間部から後方を望む
フィゲラス社製のシートがブロックごとに角度をつけて配置されています。座席は遠くスペインから輸入されました。大きめな欧米サイズでドリンクホルダーを装備した座席は今では当たり前となっていますが、当時は驚きをもって迎えられました。
画像では分かりにくいかもしれませんが、客席に急角度の段差が設けられています。天井高とスクリーン位置を勘案したうえでの角度と思われますが、スクリーンの位置が低めなためこれでもやや足りないくらいです。そのため映写窓の設置位置もぎりぎりまで高い位置に設計されています。縦方向を圧縮したような形状なので少し窮屈にも見えますね。





当時は観客の度肝を抜くサイズでした
湾曲スクリーンを採用し、大画面の魅力を余すところなく伝えてきてくれました。スクリーンサイズは6.40m×14.94m。開館当時は定員700~1,000人超の大劇場で導入される常識外れの超特大幕でした。実寸は定員574名の海老名7番よりは多少小さめですが、定員数で考えれば東岸和田のほうが割合として大きなサイズを入れていることになります。
スクリーン周りのカーテンはくたびれた様子で近くで見ると痛々しかったです。とくに下部一文字幕のほころびは激しいものでした。

注目なのはオレンジ色の幕。これ、電動式スクリーンカーテンです。シネコンでスクリーンカーテンを備えているところは非常に数少ないので貴重な存在でした。残念ながら今回は開閉することもなくスクリーンにはカラースライドが投影されています。デジタルサウンド黎明期にdtsを備えた最先端の映画館でした。メインスクリーンでありながらステージはありません。





中央通路付近
劇場の中央部に通路があり、2つのブロックに分断されるような構造になっています。大劇場でよく見る造りです。





側壁構造
WMC東岸和田の劇場は側壁仕上をグラスウール充填+ドレープカーテン包みで全スクリーンを施工しています。最近のシネコンはWMCも含めて、グラスウール化粧板ですっきりと覆うことが多いです。東岸和田で使われているようなドレープカーテンは吸音面積を増加させるのと同時に壁面に視覚的変化を付けられるのが利点です。海外のシネコンでよく見かけますね。

腰壁は青色の壁紙が使われ吸音設備はありません。ここに吸音構造を設けないのは汚れや破損に対する耐性を持たせると同時に、
あえて客席側にアコースティック(残響)を反射させて音響効果を高める目的があります。映画館の設計セオリーで重要な役割を持つ吸音設計、しかし良い音響のためには吸音するだけではダメなんです。





特徴的な構造を備えた映写室外壁
ドレープカーテン側壁と共に特徴的だったのがこのリア壁。かまぼこ状の吸音拡散体をずらりと並べて、その間にサラウンドスピーカーJBL8330が10台も設置されていて壮観です。
映写室外壁は劇場の音響性能を左右する非常に重要な場所。シネプレックスのHDCSや東宝関西興行のTHASなどでリア壁面に特殊吸音材を採用したり、新宿バルト9のメインスクリーンが東岸和田と同様な造りになっているなど、さまざまな工夫を凝らすことで品質が変化する部分です。

THX認定をクリアするにはリア壁面を確実に吸音・遮音することが条件で、設計が悪いと台詞にエコーがかかったりフロントの音声に濁りが生じるといった悪影響が顕著に出てきます。認定基準のひとつである暗騒音NC-30をクリアするために遮音設計も重要ですね。

梁の部分は空調機構のようで株式会社IMAGICAの試写室、立川シネマシティのCITY2 THXを連想させます。梁は吸音処理をしておらず音声を反響させる役割を持っているように感じられました。実際にこれら壁面の効果を鑑賞の際に感じることができたので、連載最終回で少し触れてみようと思います。





劇場最後列からの俯瞰
当サイトを愛読してくださっている方には見覚えのある雰囲気かもしれません。そう、品川と軽井沢のIMAXシアターによく似ていますよね。 それだけ客席が急角度で設計されていることがこの画像だとよく分かります。スクリーンを限界まで高く設置して客席の段差を多めにとることにより前の人の頭部が画面に被らないように配慮されているのですが、それでもなお角度不足は否めません。この劇場最大の欠点と言えます。

また幕間の場内照度がたいへん暗いのが気になりました。画像を見ていただくと分かる通り後方のライトしか点灯していないのです。実際の場内の明るさはこれら全ての画像よりも格段に暗くてスクリーン前などは真っ暗でピントを合わせることができず、レンズの距離目盛を使用したほどです。
WMC東岸和田場内は画像ほど明るくなく、撮影時に露出補正をかけて+3EV相当明るめに撮影していることをご承知おきください。





再び入口前
最後列の後ろ側にはこのようなスペースが用意されています。上部のテラス部分が映写室です。冒頭でも触れましたがこのスペースのおかげで途中入場の際も光が差し込むことがなく、回折構造やスロープも不要で合理的です。スロープ構造でありながら光漏れのある劇場が多いなかで評価できる設計です。ミニシアターや古い劇場の一部にこのようなスペースが散見されますがシネコンでは珍しく、またこれだけの広さは他では見たことがありません。
天井の高さをさらに取れて映写室を後方にセットバックできていれば、ここも客席が設置されていたことでしょう。フリースペースにしたのは正解だと思います。





客席はまばら…
サンクスキャンペーン1,000興行でしたが動員は多くなく空席が目立っていました。
こうして振り返ってみると現行WMCの緑色×黄色の内装よりもシックで大人っぽい色彩設計になっていますね。壁面の橙色の間接照明も消灯していて残念な限りです。
このような構造はフラットな壁面に変化をつけ音響へ効果的に作用します。設計時にそこまで考えてあったかは分かりませんが、この劇場はTHXとしては豊かな残響成分を持つ箱で独特の心地よさがあったことは事実です。目立った個性がない半面で豊かな響きが空間を満たすところがこの5番THXの持ち味だったと思います。

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2008年2月28日 (木)

File.106 WMC東岸和田メモリアル 2

ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田閉館特集の二回目です。

今回訪れて感じたのはWMC東岸和田は15年前にオープンしたシネコンの元祖とは思えないほどに完成度が高いことです。さすがに最新のシネコンと比較すればほころびもありますが、今なお通用する設計の良さと大切に使われてきた施設に古さを感じさせるものはありませんでした。WMCが海老名と共に最初のサイトとして気合を入れて造り上げたことがストレートに伝わってくるようです。
施設の老朽化で閉館するのは惜しい…、心からそう思える映画館でした。



WMC東岸和田メモリアル Vol.2




1階エントランス
駐車場からエントランスを入るとロビーが広がっています。目の前には階段とエレベーター、背後にはエスカレーターがあり2階がメインロビーになっています。かつて左手にはチケット売場があったのですが、その後はゲームコーナーに改装されたようです。訪れたときはゲーム機もなく閑散としていました。以前は駐車場側のガラス窓にTHX『Broadway』バージョンのポスターが飾ってあったのを思い出しましたがこれも無くなっていました。




2階メインロビーに続く階段
外の風景をガラス越しに眺めながら階段を上っていく、ちょっとした高揚感を味わえます。同様に新宿バルト9など上層階に劇場がある映画館は運用面ではコストがかかり不便もありますが、観客に対し心理的なプラス効果があるように思います。逆になんばパークスシネマのような「下る」映画館は気分も盛り下がるような…!?
これから観る映画への期待を込めてこの階段を上った人が多くいたことでしょう。




エレベーター前のロビー入口付近
晴れた日には明るく陽光が差し込むロビーです。入口の明るい雰囲気と、コーポレートカラーのブルーと控えめな照明で演出された奥手のコントラストがキマっています。ポスターケースのあるところにエスカレーターが設置されています。




2階ロビーの全景
総座席数1,900名規模の標準クラスシネコンとしては天井高もあり、ゆったりとした広いロビーが用意されています。オープン当時は総座席数で日本一の映画館でした。中央奥にボックスオフィス、その右脇に劇場への入口があり施設全体レイアウトは縦長構造を採っています。左奥がSATY棟との連絡口です。
『タイタニック』を観に来たときは自由席制だったので、開場時間前はこの撮影位置あたりまで長蛇の列ができていました。指定席制の普及でそんな光景も見られなくなりました。




ボックス前から劇場入口をのぞむ
ちょうど上映時間の合間ということもあったのですが、閉館割引1,000円興行のわりにはお客様の姿はまばらでした。平日の昼間は動員も少なかったのではないでしょうか。

WMCはサイトオープンから7年前後が経過すると改装を実施して施設更新を行います。東岸和田も1999年頃に、姉妹館の海老名とともにリニューアルが行われました。海老名に予算を多く割いたため、東岸和田は節約することになったという話を聞いたことがありますが、東岸和田は最近のWMCサイトと比較しても大きく見劣りするところはありませんでした。むしろ1993年に開業したシネコンとはも思えないほどで、設備を陳腐化させずに営業している努力が垣間見えます。
劇場入口脇にトゥイーティーがいるの、お分かりになりますか?




シネマストア
充実した設備のなかで地味な一角のシネマストア。壁面には閉館特集上映のパネルが設置されています。




明るくポップなカラーリングと充実設備のコンセッション
改装時にコンセもリニューアルしたようです。姉妹館の海老名と同じ黄色いタイルが鮮やかです。

コンセをリニューアルする際は営業と改装を同時に行うためとても手間がかかります。方法としては従来のカウンターの前に仮設カウンターを造り、そこで営業をしながら従来のカウンターを撤去・改装していく手順が用いられます。水道や電気はもちろん、ポップコーンマシーンやディスペンサーも移動させつつ…と大変です。新カウンターが完成すれば仮設カウンターを撤去して新装オープン。このコンセも恐らくは同じような手法で改装したのではないでしょうか。

建物はこの奥に続いているので、バックヤードは広いんだろうなあと想像します。もしかしたら事務所もここにある…?シネコンの事務所はお客様導線からは分からないところにあって、なぜかその場所を推理してしまうクセが管理人にはあります(笑)。




ロビー中央のモニター群
ロビーにモニターを数多く設置して予告編を放映する手法はオープン当時に強烈なインパクトを観客に与えました。WMCのロビーと言えばこのモニター群を連想する人も多いのではないでしょうか。モニター最多設置サイトはWMC新百合ヶ丘(川崎市麻生区)です。
モニターの脇にはEV製スピーカーが設置されています。劇場はJBLです。JBLとKCSが基本のWMCなのに、ロビーにはEVを採用するミスマッチが何とも不思議な印象…。




再びロビーの全景
こうして見るとWMCのロビーは独自のセオリーに則り統一されたデザインが施されているのでどこのサイトを訪れても「ワーナーに来た!」と実感できます。他のシネコンだとサイトごとに独自の内装コンセプトを定めているところが多いのですが、WMCは共通したイメージを忠実に構成することによってオリジナリティを出していると言えるでしょう。大型SCに入居してメインターゲット層をファミリーに設定している点も共通です。

WMCでは海外のワーナー系列劇場と共通するデザインも採用されておりユナイテッド・シネマと同様にワールドワイドな気配が感じられます。日本最後の外資系映画館というのも影響しているのでしょうか。




CINEMA入口
このエントランスを入ると左に屈曲し、長いコリドール(回廊)が延びています。海老名はコリドール最奥部で多少の屈曲があるのに対して、東岸和田は8番スクリーンの入口から最後まで一直線に延びています。通路の両脇に複数のスクリーンを配置し、その上階に映写室を設置するシネコンの雛形はここ東岸和田で完成をみたのです。
入口付近や通路には手作りのPOPが丁寧に飾られていて、思わず目を向けてしまいます。地元密着型の映画館だなあと感じ入りました。




観客を劇場へいざなうコリドール
明るいロビーから一転して、間接照明のみの空間が現れます。この光景こそシネコン黎明期に観客をワクワクさせたシネコンならではの演出装置です。
劇場入口にはLEDで作品名が表示され、大きなガラスブロックサインでスクリーンナンバーが一目で分かるようになっています。

このガラスパネルはサイトによって色の組み合わせが違うんですよ。WMC上峰(佐賀県三養基郡上峰町)で初採用されて以来、長年に渡ってWMCの象徴だったこのパネルも新規サイトでは見られなくなってしまい残念です。個人的には現行の緑色ボードよりも、このガラスブロックのほうが見栄えも良いので復活してほしいと願っています。




サインパネルのアップ
マリンブルーに黄色のナンバーが清々しい印象を与えます。ガラスブロックの内側に光源を仕込んで全体が発光しているかのように見せています。シネコンによっては派手な照明や色使いを多用しているところも見受けられますが、WMCはブルーを基調にして一見は地味でいて、要所に鮮やかなカラーをさりげなく使うところが上手いです。
上部の作品名表示LEDにご注目。ご当地らしいラインナップが泣けます。




コリドール最奥部と5番THXの入口
通路はここで左右に分かれてT字型構造を呈しています。左に212席の3・4番スクリーン、右側に東岸和田の看板劇場である476席の5番THXスクリーンが鎮座しています。T字の両端は1階屋外への非常階段となっています。サインパネルの上側は鏡面仕上げで下側に立つと自分の姿がそのまま映りこんで見えます。

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2008年2月24日 (日)

File.105 WMC東岸和田メモリアル 1

日本で最初のシネマコンプレックスとして知られるワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田(大阪府岸和田市 以下WMC東岸和田)が2008年2月3日(日)をもって閉館しました。日本の映画興行界に外資系シネコンという新風を吹き込んだWMC東岸和田のオープンは今から15年前の1993年4月29日。その直前の24日にはWMC海老名もオープンして両館がシネコンの先駆けとして認知されています。

WMCの閉館は今回が初めてではありません。以前にWMC鈴鹿、WMC福岡東、WMC石巻の3サイトが閉館されています(参照 File.79 WMC石巻閉館)。しかしいずれも閉館にあわせて代替サイトをオープンさせていることに対して、WMC東岸和田はシネコン史上初の代替サイトがない純粋な閉館となります。最寄のWMCは約13km南方のWMCりんくう泉南(大阪府泉南市)です。

関連記事
File.11 黒船~シネコンの出航
File.12 シネコン~その革新性
File.70 ワーナー・マイカル創立15周年

シネコンの先駆けというだけあってオープン当時は周囲に同様の映画館はなく、近隣の映画ファンは大阪ミナミの映画館で鑑賞するのが主流だったようです。現在は珍しくなくなったシネコンの形態も当時は物珍しさもあり休日ともなると近隣道路は「ワーナー渋滞」とも呼ばれるほどの集客を見せ大盛況だったそうです。
映画館は繁華街に立地するのが常識だった当時に都心部から離れた郊外に立地して、アクセス手段は鉄道と自動車のどちらでも利用可能という利便性の高さは映画ファンの心をつかみ、映画興行の新しいモデルケースとしてWMC東岸和田の名は知れ渡ったのです。

拙サイト管理人も過去記事で触れている通り、過去に何度かWMC東岸和田を利用したことがあります。その頃は今と違ってシネコンやデジタル音響システムは珍しかった時代で、行く度に充実した設備の素晴らしさに感服したものです。いまこうして映画と映画館のサイトを運営しているのは、WMC東岸和田での鑑賞体験がきっかけだったと言っても過言ではありません。

初めて行ったときのことはまるで昨日のことのように思い出します。

2階建て構造で広々としたロビーでは多数のモニターに予告編が映し出され、メニューが豊富に揃ったコンセッションでナチョスとドリンクを買い、広々とした通路を通って劇場内に入ればスタジアム形式で観やすい画面。適度な固さでゆったりとしたフィゲラス製のシート。最新設備を誇示するかのようなDOLBYサウンドトレーラーの上映。歯切れ良く軽やかに鳴らすJBLのアメリカンサウンド。海老名と東岸和田にしかなかった貴重なTHX CINEMA。このどれもが異次元の映画館体験だったのです。シネコンの最低基準を作り上げた映画館と言えるでしょう。

閉館すると聞き8年ぶりにWMC東岸和田を訪ねました。様々な記憶が思い起こされ、自身にとってこの映画館が特別な存在であったことを再確認することとなりました。



WMC東岸和田メモリアル Vol.1




WMC東岸和田周辺の衛星画像

東岸和田SATYのテナントでありながら独立建築となっている珍しい形態のシネコンです。SATY棟とはデッキで繋がれて自由に移動することができます。L字型の建築の屈折部分が最大劇場の#5 THX(476席)です。
自動車でアクセスする際は画像左上に見える国道26号線から細い路地を通るので、混雑時は渋滞するのも納得です。JR阪和線東岸和田駅からは至近ですが、往来の多い踏切を渡るなど徒歩5分以上かかります。



周辺の映画館勢力図

長らく大阪府南部の盟主シネコンとして君臨していたWMC東岸和田に対し、最初に出現したライバルは1999年に同じ岸和田市内に開業したユナイテッド・シネマ岸和田。メインスクリーンはTHX認定を取得し総座席数2,545席を誇る国内最大級のスケールは今なお存在感を放っています。
その後も豊かな地域商圏人口に目をつけて複数のシネコンが進出して、シネコンの激戦地となりました。WMC東岸和田の閉館後は、WMCりんくう泉南が役目を引き継ぐことになります。以前は和泉府中(和泉市)などにも映画館があったように思いますが現在は閉館してしまった様子です。このような状況の中で堺東映シネマの踏ん張りには目を見張ります。

閉館理由は施設の老朽化ということですが、熾烈な競争の結果も一因と思われます。また大阪市内でも梅田の梅田ブルク7を先頭にして、南街会館がTOHOシネマズなんばへ建て替えられ、南海難波駅に隣接してなんばパークスシネマが開業。大阪駅にも巨大シネコンが待機中で世代交代が着実に進んでいます。



ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田 DATA
所在地:大阪府岸和田市土生町2-32-7
開館日:1993年4月29日
総劇場数:8
総座席数:1,971席
スクリーン1:248席、SRD-EX、dts
スクリーン2:248席、SRD、dts
スクリーン3:212席、SRD、dts
スクリーン4:212席、SRD、dts
スクリーン5:476席、SRD-EX、dts、SDDS、THX
スクリーン6:192席、SRD、dts
スクリーン7:191席、SRD、dts
スクリーン8:192席、SRD、dts

半数のスクリーンが中規模の定員数を有しています。独立建築で占有面積を広く取れたからでしょうか? 300人クラスの箱がないので、大ヒット作の複数ブッキングはスクリーン1と2の奪い合いになりますね。観客にとっても箱の大きさにばらつきが少ないので、メインスクリーン以外は規模の違いによる不公平感が少ないように思えます。
スペック上では全館dts対応館になっていますが、移動式のdts-6Dデコーダーで対応していたのではないかと推測します。余談ですが近年のシネコンでは全館dts対応となっていても1~3台程度の移動式デコーダーを使いまわして運用しています。dts対応作品が少ないので全館に設置せずとも間に合います。



東岸和田駅ホームに停車中の関空紀州路快速

天王寺駅から30分、関西国際空港(関西空港駅)から16分、大阪駅からも42分。いずれも乗り換え不要と、鉄道アクセスは非常に便利な東岸和田。特急を除く全旅客列車が停車します。岸和田市の中心市街は南海本線岸和田駅周辺になり、JR東岸和田駅周辺は住宅街になっています。岸和田市は岸和田城やだんじり祭、たまねぎの名産地として知られていますね。著名人も多く輩出していて清原和博選手やファッションデザイナーのコシノ氏、作曲家の大野愛果氏らがよく知られています。

画像の車両は関空紀州路快速223系。首都圏では特急相当になるであろう豪華な車両が贅沢にも快速列車で運用されています。同系列車両はJR西日本アーバンネットワークの中核である新快速にも使用されていて、関西の鉄道は車両設備もダイヤ編成も非常に快適で感心させられます。東京に住んでいるとこの斬新な車両が14年も前から使用されていることに驚かされますね。さすがは私鉄王国と言われるだけはあります。関空紀州路快速は2区間先の日根野駅で車両分割され、関西空港行きと和歌山行きになります。かつては東岸和田を通過する関空特快ウイングという種別がありましたが現在は廃止されたようです。



東岸和田駅前から東岸和田SATYをのぞむ

駅前からはSATYが見えるので迷うことはありません。ただしWMC東岸和田はSATYの施設群のなかで駅から最も遠いところにあるので、時間に余裕を持って訪れたほうが良いですね。
駅員さんが自動改札機脇の窓口で利用客ひとりづつに挨拶をされていて、気持ちよく駅を利用することができました。人の温もりを感じられるさりげないサービスが光ります。



看板はあるけどまだたどり着けない!

東岸和田SATYの敷地内に入りましたがまだ映画館は見えません。このままさらに進んでいきます。



WMC東岸和田全景

東岸和田駅から歩くこと約5分で映画館に到着しました。右側がSATY棟で奥手に連結デッキが見えます。商業施設に入居する映画館は防音構造が貧弱だとテナントに騒音を及ぼす可能性がありますが、このように建物が独立していれば音漏れを心配せずに営業することが可能です。シネコンとしてこれは贅沢な土地の使い方ですね。建物は閉館後に解体されるそうです。



駐車場+2階建て構造になっている白亜のシネコン

独立建築であることの優位性を活かし1階部分は駐車場とチケット売場、2階が劇場区画と多層構造を有効利用しています。映写室は3階になるのでしょう。駐車場から直接映画館にアクセスできる利便性も魅力。まさにアメリカ的シネコンのスタイルを踏襲していると言えます。外観はホワイト一色で映画撮影スタジオっぽい外観なのも良いですね。



WMC東岸和田北面

国道26号線からやってくるとこちらが正面になります。ガラス張りの部分は駐車場フロアと2階を結ぶ階段&エレベータースペースです。外観はいたってシンプルで、WBロゴが一番派手(笑)。創設初期の頃の“これぞワーナー・マイカル!”らしさが溢れています。



正面エントランス

ポスターケースがズラっと並び、右奥にメインエントランスがあります。ポスターケースはスクリーン数と同じ8つなので、上映作品すべてを掲示することはできませんね。場内はスタジアム形式でバリアフリーに関して古さは否めませんが、入口のスロープとエレベーター設備などある程度の配慮はなされています。
上部の窓は以前は明り取りに使われていたように記憶していますが、久しぶりに訪れるとイラストパネルで覆われていました。この窓周囲の建築デザインは姉妹館の海老名に非常に似ています。



WBロゴと窓部分のアップ

このWBロゴは関西国際空港から飛び立った機上からも見えるんですよ。阪和線の線路と国道26号線を目で追っていけば見つけることができます。南向きに離陸したら無理ですが…。
建物の側面はネオン管が仕込まれています。夜間は点灯するのかな。夜景もぜひ見ておきたかったです。

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