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2006年1月26日 (木)

File.11 黒船~シネコンの出航

都市の中心部から映画館が減少し始めて久しい。地方都市を中心に市街地から映画館が消え行く現状は時代の変化とはいえ、心情としては寂しく感じられます。日本映画最盛期の1960年、国内には実に7,457館が営業をしていて娯楽の王道として君臨していましたが、映画産業の衰退とビデオレンタル店との競合や多様なレジャー産業の誕生に合わせて、近年は経営の苦しくなった映画館は次々に閉館に追い込まれていきました。1993年には1,734館にまで落ち込み、映画興行界は暗黒時代を迎えました。

この年、映画興行業界に衝撃が走ります。タイム・ワーナーグループで映画製作配給部門を担当するワーナー・ブラザースと日本のマイカルが企業提携して、日本初の複合型映画館・シネマコンプレックス「ワーナー・マイカル・シネマズ海老名」以下WMC)を神奈川県海老名市にオープンさせたのです。このことは映画興行界では「大事件」であり、多くの注目を集めました。
現在ではすっかり定着したシネコンの営業形態ですが、当時としては異例づくめで画期的なものだったため同業他社の冷ややかな視線のなかでのオープンとなりました。「成功はしない」という厳しい見解もあるなかで、開業するやいなや観客の熱烈な支持を受け大成功を収めます。

WMCが画期的だったのは、ブロックブッキングの制約に縛られない作品構成を実現した点です。映画館というのはチェーン制度といって一種のグループ関係をもって営業をしています。東宝洋画系、東映系というように各興行会社ごとの枠組みのなかで上映作品が配給されてくるのです。東宝系の映画館では東映配給映画の上映は基本的にありませんし、逆もしかりです。チェーンマスターといってチェーン劇場系列のリーダーが存在して、「日劇」(旧日本劇場)や「丸の内ピカデリー」といったチェーンマスター館を旗艦とした全国多くの映画館チェーンが連動した作品を上映することになっています。
一方のWMCはワーナー・ブラザース作品だけ上映をするわけではなく、保有する複数のスクリーン(劇場)を使って
他社作品の上映を始めたのです。上記のような営業形態が慣例だった日本の映画業界ではまさに事件でした。

映画は1館につき基本的に1作品上映という常識を打ち破り、多種多様な作品を上映することで観客は映画館に出向いてから見たい作品を選ぶこともできるようになりました。WMCの大成功によりシネコンの優位性が注目を集めますが、現在のように乱立するのはまだ先のこととなります。この年に映画『ジュラシック・パーク』が大ヒットを記録、最新鋭のCGIとデジタル音響を本格的に使用したこの作品のヒットとWMCの誕生は、映画復権への新たなる希望の幕開けとなったのです。


話題の映画は、お近くのワーナー・マイカル!

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