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2006年1月28日 (土)

File.13 シネコンの隆盛と既存館の衰退

シネコンのお話3話目です。前回に引き続き、今回はシネコンの増加と既存館の減少する現況についてお話します。

大型商業施設の出店規制緩和に乗じ、各社シネコンは一斉に新規出店に乗り出しました。国内シネコンのパイオニアであるワーナー・マイカル・シネマズは、親会社であるマイカルの商業施設サティと同居する形態で怒涛の出店攻勢をかけます。それに続いて松竹、東映などの国内大手配給会社もシネコンの経営に着手、独立系興行会社も参戦しての大乱戦の様相を呈しました。国内映画会社の雄・東宝は東京のお台場にシネコンをオープンさせた後は沈黙を守っていましたが、2003年に外資系のVIRGIN CINEMASを100億円で買収し、一気にトップレースに躍り出ました。
現在、
ワーナー・マイカル・シネマズとTOHOシネマズ(旧VIRGIN CINEMAS)が総スクリーン数で激しいトップ争いを繰り広げており、次いで松竹系のMOVIX、住友・角川系のユナイテッド・シネマ、東急系の109シネマズ、ヘラルド系のシネプレックスなどがコンスタントに出店を行っています。ユナイテッド・シネマは2005年6月にAMCシアターズを50億円で買収し、国内3番手に成長しています。

シネコン間の競争が激しさを増すなか、長年営業してきた既存館は窮地に立たされました。長年にわたって強固な関係で配給会社と上映契約を続けて営業してきたにも関わらず、その配給会社がシネコンの経営を始めてしまったために、皮肉なことに配給会社自体がライバルになってしまったのです。次々にオープンするシネコンに対抗できるだけの体力を持った既存館は少なく、大都市圏を除いて次々と閉館に追い込まれていきました。配給会社直営館にも閉館するところが現れる始末です。シネコンの誕生で斜陽だった日本映画業界に明るい兆しが見えてきたさなか、急激なペースで既存館の減少が始まります。それはシネコンのオープンによるスクリーン数増加とは反比例する、何とも皮肉なものとなりました。

ここで、2004年現在での映画館の各種統計を見てみましょう。総映画館数は2,438館で、最盛期の7,457館には遠く及ばないものの着実に数を増やしており、これには1998年前後のシネコン出店ラッシュが大きく関係しています。この数値は1993年以降では過去最高となります。
年間総入場者数は1億4257万人で、
国民一人が年に一回映画館を訪れている計算ですね。しかし、これらの数値の過半数を占めるのがシネコンによるもので全スクリーン数2,438中、単独館は290に過ぎません。国内の映画館のうち、実に58%はシネコンなのです。既存館の減少傾向とシネコンの増加傾向は現在もなお落ち着く気配がありません。この年の映画館総売上は2,274億円ですが、ここにもシネコン一人勝ちの状況が見て取れます。単独館の売上は161億円に過ぎず、対するシネコンは1,459億円に達しています。1994年の底以来、総売上高も最高を記録しました。

今後もシネコン主流で既存館が減少していく傾向に変化はないと思われますが、これはシネコンVS既存館からシネコン同士の生き残り合戦へと移行していくことを意味します。上記のようにシネコン会社間の買収劇も見られるようになり、ワーナー(マイカルの破綻)やヴァージン(東宝による買収)、ユナイテッド(住友と角川資本に変化)といった“シネコンといえば外資系企業”という図式も成立しなくなっています。
大手シネコンは今年も新規出店の計画を立てており、とくにTOHOシネマズとMOVIXが元気です。大都市部ではミニシアターの増加も最近の特徴として見られますが、既存館の衰退はもはや歯止めのかからない状況にまできてしまいました。地方都市ではシネコン出店の影響で、既存館がゼロになる所も増えています。1月29日には群馬県前橋市が映画館数ゼロとなり、県庁所在地としては全国唯一の映画館の無い街となります(その前橋市にも来年にシネコンがオープンします)。

街から、昔ながらの映画館が消えていく・・・。シネコンの高品質な設備や利便性は魅力的ですが、映画館はそれだけでは物足りないと思うのは詭弁でしょうか?時代の変化と共に看板を下ろしていく古き良き映画館を見送るたびに、哀愁を感じるのは私だけでしょうか。

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