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2006年1月30日 (月)

File.15 消え行く緞帳

演劇や舞台芸術をご覧になられる方にはお馴染みの存在である緞帳(どんちょう)。客席と舞台を隔てる巨大な幕形式の壁です。布切れ一枚のシンプルなものから、西陣織の豪華絢爛バージョンまで様々な様式が存在し、舞台と共に緞帳の鑑賞を楽しみにされている方も多いそうです。バリエーションが多いのも特徴で、高価なものでは数億円のものが存在しています。

映画館は演劇場から派生してきたもので、スクリーン手前に緞帳がかけられている所もありました。幕が開き場内の照明が落とされると、そこはもう映画の世界。緞帳は映画館の舞台装置の一つとして機能を果たしていました。
昨今は緞帳を備える映画館が減少し、
シネコンにいたってはほぼ全滅状態(初期のシネコンには見受けられました)となっています。従来館には今も緞帳を残している映画館はあるものの、常に幕を開けた状態の劇場も多くなり姿を見かける機会は少なくなりました。

松竹洋画系の旗艦劇場として君臨した渋谷パンテオン劇場は、2003年6月に地下鉄工事の関係上惜しくも閉館しましたが、この劇場は豪華な緞帳があることで有名でした。『闘牛14号』と題されたその緞帳は、建築家ル・コルビュジェがデザインしたもので縦9.5m、横22.8m。西陣織製で、1,000人クラスの大劇場・パンテオンを彩ったのです。巨大な幕が開くその光景は荘厳であり、映画への期待感を高揚させるに十分な効果を発揮していました。

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在りし日の東急文化会館(渋谷パンテオン)

近年は映画を上映していない時間にスライドCMをスクリーン上で流す劇場が多くなり、緞帳を備えた新館はほぼ姿を消しました。緞帳にはスクリーンの保護という機能もあるのですが、客席の最前列とスクリーン間のゆとりが以前より広くなり、スクリーン位置自体も高く設置されるようになったことや全面禁煙化も理由のひとつです。また、緞帳を稼動させる機器のメンテナンス、設置費用の削減の意味もあります。

このように最新の映画館では無用になってしまった緞帳ですが、幕の開閉による心理的演出効果は捨てがたいものがあるように感じます。実際、幕あるとスクリーンが実寸よりも大きく見える効果もあるそうです。
渋谷パンテオン跡地には東急系のシネコンが建設される予定になっており、あの緞帳が復活するのか楽しみなところです。

注:ここでは緞帳を広義にとらえてカーテンも同義にして記述しております。

現在公開中の『THE 有頂天ホテル』は緞帳のアニメーションで幕を開けます。舞台演出家の三谷氏らしい、なかなか粋な趣向です。



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コメント

そういえば緞帳、すっかり見なくなりましたね~。
子供の頃、緞帳が上がっていくのを見ながら、「映画が始まるんだぁ」ってわくわくしてたことを思い出しました。
あのちょっとした緊張感をまた味わってみたいものです。

投稿: いおり | 2006年1月30日 (月) 23時39分

個人的には緞帳があったほうが気分は盛り上がるので好きです。最近はまったく見かけなくなりましたが…。寂しいですね。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年1月31日 (火) 03時00分

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