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2006年1月21日 (土)

File.6 全席指定制のメリット

シネマコンプレックス(通称シネコン、複合型映画館)の普及により、ここ数年来で爆発的に増加したのが全席指定制度です。上映チケットを購入する際にあらかじめ決められた座席が割り当てられる方式のことで、JR特急列車や旅客機の発券制度と同じようなものです。以前は映画館といえば全席自由・立ち見もOKが常識でしたが、最近ではめっきり数も減ってきています。

なぜ、全席指定が普及したのか。そのメリットとは何なのか。

映画館に訪れるお客様は必ずチケット売場で上映チケットを購入します。言うなればチケット売場がいちばん混み合いやすいポジションということです。もちろん、売店も混み合いますが、すべての来場者が売店を利用するというわけではありませんので、混雑率としてはチケット売場がダントツとなります。大作が公開された直後の休日に行列ができているのを見てうんざりしたり、危うく上映時間に遅れそうになってしまった経験がある方もいらっしゃるかと思います。ロビーは黒山の人だかりで、ここはディズニーランド?と思うような雑踏が出現します。

さて本題です。全席指定制にはこの大混雑を緩和するメリットがあるのです。自由席の場合、お客様は好みの座席を選ぼうとして上映開始前にロビーと劇場入口で行列を作ります。単館であれば混雑も単純な周期でやってきますが、多数の作品を上映しているシネコンではこの行列は大混雑の原因となります。とくに複数の作品が同じ時間帯に上映開始される場合は、1館上映と比較すると数倍の人間が一度に殺到することとなり危険でもあります。指定制であれば、チケット購入時に自分の座席を決められるので上映時間前に席取りで並ぶ必要はありませんし、時間ぎりぎりまで有意義に過ごすことが可能となります。同時にロビーの混雑も緩和することができるのです。

至れり尽くせりのようですが指定制は劇場側のメリットのほうが多く、観客側には逆にデメリットが多い傾向があることも事実です。まず、チケットを買ったら自由に座席を移動することは原則としてできません。何らかの理由で座席を移りたくても、指定制だと他のお客様がチケットを持ってやってくるかもしれないので気が引けるものです。スクリーンの視野角度や座席の位置をこだわる方であれば実際に場内の様子を見てから席を選びたいという方もいらっしゃいますし、購入時に見る座席表だけでは劇場の構造やスクリーンサイズも把握できないので不安になることもあるかもしれません。なお、大都市圏のメイン館などでは劇場中央部の良席のみ指定制にして割増料金になっていることもあります。

全席指定制ということは同時に完全入替制も意味します。チケットは購入した回の上映のみ有効で、続けて二回目を見ることはできないので自由席制のように一日映画館に入り浸るようなことはできないことになります。どうしても見たければもう一回チケットを購入しなおさないといけません。

以前は混雑する休日のみ指定制度を取り入れていた劇場が多くありましたが、現在ではシネコンを中心に終日全席指定席となっていることが当たり前のようになってきました。指定制度黎明期、某大手シネコンチェーンでは「コンピュータが見やすい席を自動的にお取りします」という触れ込みを行っていたのですが、実際は係員が手動で選んでいたということでクレームになった事例がありました。“見やすい席”というのは個人によって違います。座席の位置にこだわるお客様と、劇場側の温度差を感じる事例のひとつですが、現在ではこういうこともなくなり座席表を元にお客様に選んでいただくシステムが通常になっています。しかし、座席を選ぶのに時間がかかり、かえって混雑の元になっているという皮肉な声も聞かれますね…。

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コメント

私が行っている映画館も、昨年から全席指定制になりました。
好きな席で観れるようにはなりましたが、その好きな席を取るために早くから並んだりすることもあるので、自由席と指定席、どちらがいいかは謎です。

ちなみに、私は真ん中の「特等席」的な席よりも、一番後ろの隅っこの席で観るのが落ち着きます。
誰にも邪魔されない感じがするので。

投稿: いおり | 2006年1月22日 (日) 21時04分

そういえば倉敷東映が閉館したそうで…。
街中の昔からある映画館が消えていくのは寂しいものがあります。

自由席と指定席はどちらも一長一短で、優劣は決めにくいですよね。私は見る位置は中央にこだわるほうです。隅っこは苦手(笑)。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年1月23日 (月) 22時33分

その観客側のデメリットを解消するために、各映画館・各スクリーンごとの座席表のベストポジションをつづったブログを運営しています。
http://blog.livedoor.jp/tokyoeigakanbancho/
よろしくお願いします!

投稿: トーキョー映画館番長 | 2011年11月21日 (月) 09時49分

トーキョー映画館番長さん

ご来訪ありがとうございます。映画館ごとのベストポジションをまとめられるとは新たな切り口で面白いですね。座席表からベストポジションを探すのも楽しいです。トーキョー映画館番長さんの「定義」が明示されているのも客観性があって分かりやすいと思います。

現在の映画館には代表点と言われる、音響調整の位置が決められています。原則としてスクリーンから後壁までの2/3に位置する席です。基本的に真ん中は視野・音響的にもあまり好ましくありません。そして実際にいちばん良いとされるのは代表点よりわずかに後ろあたりになります。だいたい前から7割目あたりの列に相当します。多くの映写担当や監督はこのあたりに座ります。

映画は映像と音響がバランスよく視聴できる位置が王道で、ちょうどそこが前から7割目になるんですね。トーキョー映画館番長さんが最初の挙げられている新宿ピカデリー1番だと“座席表から推測される”ベストポジションはM列18あたりになります。これは実際にレイアウトを見ないと分かりませんが、映画館設計のセオリーからはこのあたりが基準になります。

座席のベストポジションは非常に嗜好が分かれるので「見やすい席、良い席」の方程式はありません。ただ、DolbyやTHXのセオリーに則っている現在の映画館ではスクリーンから2/3かそれより少し後ろで、センターラインと、あえてやや外した位置をターゲットにするとバランスの良い視聴が可能です。

ぜひ今後も情報を集積されて、役立つデータベースを発信してください。楽しみにしております。

投稿: 管理人:月夜野 | 2011年11月22日 (火) 00時47分

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