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2006年2月 4日 (土)

File.20 映画はお茶の間で見る時代?

去る1月27日にスティーブン・ソダーバーグ監督の新作『バブル』がアメリカで公開されました。公開されただけであれば何てことはないのですが、今回はちょっとはなしが違います。
映画は映画館で公開後、一定期間を経てDVDなどへのパッケージ化やテレビ放映が行われますが、この『バブル』は
テレビ放映とDVD発売までをなんと劇場公開と同時進行でやってしまったのです。今までマイナーな作品やインディーズでは同様の例があったものの、ソダーバーグ監督のようなアカデミー賞受賞監督の作品では前代未聞、こんなことをされては死活問題だということで映画館側は猛反発。全米での公開劇場はわずか33館という、これまた異例の事態になっています。

ソダーバーグ監督は以前からフィルムを使用しないデジタル撮影方式の映画制作に関心を持っていた人で、今作はHDカメラを使用しての制作が行われました。予算はわずかに160万ドル、大作の多かったアカデミー賞受賞監督作品としては驚くほどの低予算です。監督は他にも同程度の低予算映画を5本製作する契約をすでに終えており、今後もワイドな公開方法をとっていくものと予想されます。

話は変わって…
映画は映画館で見る。それが当然と思う方と、テレビで見られたらそれで良いという方がいらっしゃいます。どちらが良い悪いではなく価値観の違いとでもいいましょうか。今でこそDVDやビデオの普及、CATV等で気軽に映画を楽しむことができるようになっていますが、かつて映画は映画館でしか見られないという時代が長らくありました。
テレビで映画を放送する、放送当時の映画業界では否定的な意見が大多数だったようです。そのなかで映画作品のテレビ放送を定着させた一人が故淀川長治氏でした。1966年にスタートして以来「さよなら、さよなら、さよなら」の名調子で人気を博した日曜洋画劇場は、映画館ではなくテレビで映画を見というそれまでとは全く違うスタイルを日本人に定着させました。

淀川氏自身は、テレビで放送することで「映画としての形は壊れても、映画を多くの人に見てもらいたい。そして映画としての形が変わっても、映画の魂は観客に伝わる」という想いを抱いていたそうです。
映画はフィルムを通してスクリーンに映し出されるものであり、ブラウン管上の映像は映画とは別の存在だとする認識は現在でも受け継がれています。それでも、テレビ放送によって映画を楽しむ間口が広がり、より気軽に多くの人々が触れられるようになったことは事実です。映画は映画館で見ることを前提に作られていますが、見る場所や形が変わったとしても映画の持つ力は伝わるという考えは、当時としては革新的な捉え方だったのではないかと推測します。

今回のソダーバーグ監督の手法も将来的にはテレビ放送される映画のように、当たり前になっているのかもしれません。劇場公開日に自宅で映画を見られる、そんな時代を予感させるような出来事でした。
しかし、現実問題としては増加の一途をたどる海賊版ソフト対策や、パッケージ化・放映権等以外の興収確保、商業映画館との対立など問題は山積しています。映画公開の手法も新たな局面にやってきました。今後の動向が注目されます。

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コメント

それでも、「ぜひ劇場で観たい!」と思わされる映画ってありますね。
淀川さんは偉大ですね。

投稿: 足柄 | 2006年2月 5日 (日) 21時18分

映画館で映画を観るようになってからは、テレビで映画を観るのは迫力が足りないように感じてしまうようになりました。

洋画の場合は字幕で観たいっていうのもあるんですけど。

とか言いながら、見逃した作品はみんなテレビで観ています(´・ω・`;)
それはそれでいいかっていう(笑)

「劇場で観ればよかった~~(´Д`;A)」と思うことは度々ありますけどねil||li(A´・ω・)


投稿: いおり | 2006年2月 5日 (日) 22時25分

足柄さん
淀川氏は「どんな映画でも良いところがある」と言っておられましたからね。良いところを見つけていく目は大切なんだなって感じさせられます。

いおりさん
個人的には映画はやっぱり映画館!という考えなので、テレビで見て面白かったときはショックを受けます…。
映画館ならではの大きな画面、暗い環境はやっぱり捨てがたいものがあります。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年2月 6日 (月) 01時42分

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