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2006年2月21日 (火)

File.31 スロープからスタジアムへ

楽しみにしている映画を見るため、早めに入場券を購入して見やすい座席を確保し、今か今かと上映を待っていると、前側の座席に座高の高いお客様がやってきた…。スクリーンにはその人の頭が被ってしまい見づらいことこのうえなし。せっかくの苦労も台無し…、がっくり!
みなさまのなかにも、同様のご経験がある方がいらっしゃるかもしれませんね。

客席からスクリーンの視界を確保するには、相応の対処が必要です。スクリーンが観客の視線前方に設置されている以上、前の座席に座っている方の座高が高ければ冒頭に挙げたような悲しい事態になります。それを避けるために映画館では様々な工夫が凝らされてきました。

対策として手っ取り早いのが座席を千鳥配列にする手法です。これは映画館のみならず、演芸場やコンサートホールなど様々な場所で採用されている定番の座席配列ですね。前の席と互い違いに座るので視界は改善されるものの、その効果には限界があります。
スクリーンを高い場所に設置するという手法も一般的です。スクリーンの位置が高くなればなるほど、前の人の頭が被る可能性は少なくなります。しかし同時に前方座席の観客ほど、上方への急な視野角度を強いられるというデメリットがあり、天井高の低い劇場では施工が難しくなります。

それとは逆にスクリーンではなく、座席自体の位置を高くするという発想から生まれたのがスロープ形式。シネコンを除けば日本の映画館の代表的な座席配置構造だと思われます。スロープの斜度は千差万別なものの、後方の座席ほど高い位置になるので一定以上の斜度があればどの座席からでも比較的良好な視界が得られます。従来館だと、これらの構造を複合的に活用した映画館が多くあり、座席の配列やスクリーンの高さに工夫を見出すことができます。

座席配置に新たな流れを持ち込んだのはシネコンでした。日本で最初のシネマコンプレックス(複合型映画館)をオープンさせたワーナー・マイカル・シネマズ(WMC)は(参照 File.11 黒船~シネコンの出航)、第一号館オープン時より全館スタジアム形式の座席配列を採用して注目を集めます。大規模競技場と同じようなしっかりとした段差をつけることで、それまでのスロープ形式よりも確実な視界を実現しました。よほどのことがない限り、前の人の頭でスクリーンが見えづらくなる心配はなくなったのです。
シネコン登場以前も段差の強い映画館はありましたが、本格的なスタジアム形式が普及するきっかけはWMCがもたらしたと思われます。東京都で言うならば新宿アカデミーや新宿東映パラス2(閉館)、シネマライズ1などが非シネコン館では立派な段差をつけた劇場構造を持っています。

シネコンの普及で現在ではスタジアム形式+高いスクリーン位置が一般的になりました。人の頭でスクリーンが隠されることも少なくなり快適な映画鑑賞が可能になった反面、車イス利用者には劇場内で移動できる範囲が狭くなったというデメリットも生まれました。スタジアム形式劇場には車イス専用座席が用意されていることが多いのですが、昔ながらのスロープ形式のほうが車イスでも移動が容易で座席の位置を選びやすいというメリットがあるので、それぞれに一長一短です。


話題の映画は、お近くのワーナー・マイカル!

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コメント

ビバ!スタジアム劇場!と思っていましたが、そういうデメリットもあるのか…。さらなる良案が生まれますように!

それにしても、前座席の人を呪わないでも良いのは、素晴しい進歩です。映画館に限らず、すべての劇場施設で真剣に考えてほしい課題ですな。

さらにワガママを言えば、トイレに立っても迷惑の掛からないシステムが出来たら本当に素晴しいなー。

投稿: 足柄 | 2006年2月23日 (木) 03時06分

サンダー・バードのように、座席が床に下がっていったり、シューターになってるサイバーな映画館があればすべてが改善されるかも…。想像してみるものの、実現はムリそうですけど(^^ゞ

現在のところはスタジアム形式が合理的なのかもしれません。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年2月23日 (木) 22時23分

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受信: 2006年3月 5日 (日) 23時32分

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