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2006年3月 7日 (火)

File.35 良い子はお家へ

映画館の立地といえばかつては市街地の中心部、それも繁華街や歓楽街というのが一般的でしたが、現在は郊外に建設された大型ショッピングセンターにシネコンが多数併設され、自宅から映画館まで至近距離ということも珍しくなくなりました。
従来館では夕方からの上映が最終回となることが多かったのに対し、シネコンではレイトショー等と称して21時以降に上映が開始される回が設けられていることが一般的です。とくに
レイトショーでは通常鑑賞料金よりも割安に設定されていることがほとんどのため、週末は意外に混雑します。自宅で夕食を囲んだ後、近所のシネコンで安く映画を鑑賞するということも可能になったわけです(参照 File.14 映画館は都心回帰へ)

興行サイドとしてはレイトショー割引で利益率は下がっても、より多くのお客様に来場していただきたいというのが本音なのですが、深夜興行の場合は残念ながら全てのお客様にご入場いただけるというわけではありません。
今日は深夜興行における入場制限についてお話したいと思います。

夜間に映画館に出かけると、館内に「○時以降は18歳未満の方のご入場はお断りいたします」などという掲示を見かけることがあります。これは各地方自治体が定めている青少年保護育成条例に基づいて掲示されているもので、当該映画館がこれに従っているという意思表示となるものです。
青少年保護育成条例は長野県をのぞく46都道府県で施行されている条例で、名称の通り青少年の健全な育成を目的としたもの。各都道府県によって内容や条例名称は多少異なります。

東京都の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」を例に見てみましょう。映画興行でとくに重視されるのは以下の部分です。

(深夜外出の制限)
第15条の2 何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
3 何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りでない。
4 深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人、その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。

(深夜における興行場等への立入りの制限等)
第16条 次に掲げる施設を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、深夜においては、当該施設に青少年を立ち入らせてはならない。
一 興行場
四 設備を設けて客に主に図書類の閲覧若しくは観覧又は電気通信設備によるインターネットの利用を行わせる施設(図書館法(昭和25年法律第118号)第2条第1項に規定する図書館を除く。)
2 前項各号に掲げる施設を経営する者は、深夜において営業を営む場合は、当該営業の場所の入口の見やすいところに、東京都規則で定める様式による掲示をしておかなければならない。

お堅い文章ですが、何となく意味は伝わりますね。要は、深夜に青少年を外出させるのはけしからん 家へ帰るように指導しなさいということです。補足としては「青少年」は18歳未満の者、「深夜」は午後11時から翌日午前4時までの時間をさし、「図書類」に映写フィルムおよびスライドが含まれています。

映画館は営業するにあたりこの条例を遵守する義務があるため、お客様が入場を許可するように強く訴えても映画館は拒否しないといけません。時折これが原因でクレームに発展することもありますが、条例として定められている以上致し方ないことです。青少年のお客様だけのご来場だと説明してご納得いただける場合が多いのですが、保護者の方が同伴だと「親が同伴しているのになぜだめなのか」ということになり、お引取り願うのに説得をすることも多々あります。なお保護者の方にも定めがあり
第15条の4 保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後11時から翌日午前4時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければならない。
となっています。

もし、条例を破って未成年のお客様を深夜興行で入場させた場合、警告のうえ映画館側には30万円以下の罰金が科せられます。実際、他のお客様からの通報で公安当局によって映画館に事情聴取・立ち入り調査が行われることもあるのです。
大多数の映画館では深夜の上映ではファミリー向けの作品を外したり、チケット販売の際にお客様の年齢を確認するなどして自衛しているというのが実際のところです。最終上映時刻を23時前にスケジューリングすることもよく行われています(23:00に上映が終了すれば違反になりません)。ご利用のお客様にとっては不満や意見もあるかと思うのですが、立場の弱い映画館としては手立てがないのが現状のようです。
今回ご紹介したのは東京都での一例です。現段階では大阪府が最も厳格な内容の条例を施行しており、府民からも様々な意見が出されて注目されています。

なお、青少年保護育成条例は青少年健全育成基本法として法制化の動きがあります。2002年に国会提出が予定されていたものの、多方面から猛烈な批判を受けて断念されました。主に表現の自由を規制する恐れや有害の判断を公権力が行うことに対する反対意見、青少年から有害と無害の判断を奪う恐れがあることなどが争点となり、個人情報保護法・人権擁護法と並んでメディア規制三法と呼ばれることも。
現在、自民党はこの青少年健全育成基本法の早期成立をマニフェストに掲げており、今後の動きが注目されるところです。

包囲されたメディア―表現・報道の自由と規制三法

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コメント

>郊外に建設された大型ショッピングセンターにシネコンが多数併設

私の地元も、このケースです。
駅周辺の繁華街ではなく、元工業地帯の大型工場等の跡地に、次々にショッピングモールとシネコンが建設されました。
その後、ゲームセンター、ボーリング、カラケ、漫画&ネットカフェ、パチンコ、温泉、食事処、託児所(!)が1つになった娯楽施設も新たに独立して建設されました。
深夜上映もしているようですが、どんな状態なんでしょう。
余談ですが、私の姉はそこで彼氏と何故か「シルミド」を見ることに。デート映画じゃないよね…。

投稿: 足柄 | 2006年3月10日 (金) 23時35分

足柄さんこんにちは。

それは…一大娯楽施設ですね。
至れり尽くせりで便利ですけど、繁華街の既存施設には打撃があるかもしれませんね。

企画上映を深夜に上映している映画館はありますけど、通常のロードショーでもあまり来客は見込めません。先般にかいた浅草東宝はオールナイト3本立てとか上映していましたね。

デートで『シルミド』、なんか熱いセレクト(*^_^*)

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年3月11日 (土) 05時55分

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この2月1日から、「大阪府青少年健全育成条例」が改正されました。  この条文をすべて読むのはめちゃ困難なので・・・もっとも大阪府に住んでらっしゃる方には読んで欲しいんですが、私自身・・・「ちょっと厳しいんじゃ?」って思うところだけをピックアップします。  もちろん「映画」に関してなんですが(笑)  第五節 夜間立入り制限等 (夜間営業を行う施設への立入り制限等) 第二十四条 (前部分略)青少年を当該施設に立ち入らせてはならない。 一 �... [続きを読む]

受信: 2006年3月 7日 (火) 13時19分

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