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2006年3月10日 (金)

File.36 続映と打ち切り

鑑賞しようとしていた作品が、まだ公開されて間もないのに公開終了していた…という経験はありませんか?、逆に一方でロングランを更新している作品があったりと、作品の上映期間はまちまちです。
今回は映画館の上映期間はどのような根拠で決められているのかをご紹介いたします。

まず最初に、ブッキングについて触れておきたいと思います。ブッキングとは映画配給会社が映画館に映画を提供すること・上映館を確保することを言い、日本ではブッキングの形態がブロックブッキングフリーブッキングの二つに大きく分かれています。ブロックブッキングとは特に邦画で用いられるシステムで、一年間の上映スケジュールをあらかじめ決めて作品をラインナップすることを指し、フリーブッキングは逆にスケジュールを決めず、自由に構成を考えるものを言います。
ブロックブッキングはとくにチェーンを組む(東宝系、東映系、松竹東急系など)映画館で行われています。映画館は年間12作品程度の安定した作品配給を受けられるかわりにスケジュールがあらかじめ決まっているため、大ヒット作品でも上映終了にしたり逆に不入り作品でも続映しないとならないというデメリットがあります。期間限定のリバイバル上映などの企画上映も難しいです。
フリーブッキングは上映期間が決まっていないのでそういった拘束に捕らわれることがなく、臨機応変なスケジューリングが可能となっています。

フリーブッキングの普及にはシネコンが大きな牽引力となりました(参照 File.11 黒船~シネコンの出航)。複数のスクリーンを動員数にあわせて流動的に割り当てることで、無駄のない興行を維持することが容易になったのです。動員力のある作品を長い期間上映することは劇場・観客双方にとって好都合で、シネコンでは例外なくこの方式で運用されています。シネコンの運用システムが、フリーブッキングを前提に成り立っているとも言えるでしょう。

ではフリーブッキングのシネコンでは上映期間をどのように決めているのか。
各映画館には
週間アベレージ(週AVや週アベとも)というデータがあります。これは一定期間における劇場週間興行成績の平均値で、これを元に上映期間や上映するスクリーンの客席数割り当てを考えるのです。公開作品の興行成績が週アベレージを大きく上回ればヒット作ということで続映、下回れば不入りということで小さなスクリーンに格下げ、さらにダメなら終映といった形で、上映期間の決定に大きく関与します。
週アベレージは過去の平均値なので、常に確実な読みを行えるわけではありません。使用しているデータ値のなかに大ヒット作が混じっていると、必然的にアベレージが高くなるのでそのぶん、ハードルも高くなるわけです。最後はやはり人間の経験がモノをいいますし、土地柄や客層によってヒットの仕方も異なるので指標のひとつとして用いられます。

上映終了で作品を見逃すことを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。劇場に問い合わせることが確実ですが、上映期間は予想をすれば何となくですが読めてきます。
公開2週目で最も小さいスクリーンで上映されているような作品は要注意、あっという間に打ち切りということもあり得ます。他に、公開からすぐ一日一回上映など上映回数が極端に少ないのも危険信号です。シネコンでは
公開1週間で上映終了というシビアなスケジュールがたまに存在したりします。配給会社にとっては厳しい仕打ちです…。公開初日から小さいスクリーンで公開されるような映画は要注意といえるでしょう。
逆に最初は小さいスクリーンだったのに、日を追うごとに大きなスクリーンに格上げされる作品はヒット(大化け)化する可能性がありますね。また、アカデミー賞ノミネート作品などは受賞後に化けたりする(アカデミー賞効果は大きい)ので、様子を見ながら慎重に上映を続行したりもします。

例外としては、配給会社系のシネコンでは自社系列作品は多少成績が悪くても続映されます。TOHOシネマズ(東宝)、T-JOY(東映)、MOVIX(松竹)と国内大手配給三社は自前のシネコンを保有しているので、当然ですが自社作品は優遇して上映されることが多くなっています。

1999年、松竹のブロックブッキング制度は崩壊しました。フリーブッキング制にすることで、以前よりも興行側の力が大きくなったといって良いでしょう。不人気の作品を短期間で上映終了したり、劇場の判断で作品ラインナップを選択できるということは、劇場公開作品が事業の基幹をなす配給会社にとっては大きなプレッシャーになるからです。また製作側もより支持を得られる作品作りをするための原動力になります。
ブロックブッキングでは作品が安定供給されるために劇場の自助努力が低下するとか、馴れ合いの温床になるなどと様々に揶揄されてきました。今後はブロックブッキングの衰退と合わせて、映画館同士以上に配給会社同士が弱肉強食の戦国時代に突入していくことが予想されます。

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コメント

月夜野さん、はじめまして。
トラックバックしていただいたのでのぞきに来ました。
興業に関わる方の視点ってなかなかないので面白いです。私のブログも映画はメインテーマのひとつなので、これからよろしくお願いします。

投稿: sakaiosamu | 2006年3月12日 (日) 01時11分

sakaiosamuさん、ご来訪ありがとうございます。

ご興味を持っていただけたようで恐縮です。ご覧の通りマニアックというか日常生活で役に立たないサイトなんですが、遊びに来ていただけると嬉しいです!

sakaiosamuさんのサイトは考察が具体的で読んでいてフムフムと思うことが多々ありますね。映画関連の内容も楽しみにしております。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年3月12日 (日) 11時22分

映画がロングランになるかどうかには単純にヒットしているかどうかだけではなく、いろいろな要因があるのですね。

私が去年はまった「オペラ座の怪人」はとても特殊な例だったかもしれません。
1月の終わりに封切られて3月にメイン館で一度終了したあとも別のところで続映していて、4月の下旬になんと再び日劇で1ヶ月の凱旋上映。こんなことはあまりないことだと聞きましたが、GW中もずっと観られてファンはみんな大喜びでした。

ハリー・ポッターは1月末に、まだ1位を守っていたのに終了。他の映画館もどんどん終わっていきましたが、例の品川のIMAXだけは続いていて(まぁこれもIMAXという特殊な例なのかもしませんが)3月10日までの続映がさらにのびて4月9日までになりました。
1日2回とはいえ結構まだまだ混んでいるのはうれしい限りです。

去年のSWなどはスッパリ終わってしまってなんだか寂しかったですが、DVDの発売などにも絡んでいるのでしょうね。

投稿: Angelita | 2006年3月12日 (日) 12時32分

凱旋上映は企画上映なわけですが、一般のメイン館ではなかなか都合が付かずに実施しにくい面があります。とくにスケジュールが決まっている日劇で実施されたというのは凄いですね。

上映期間は様々な要因が絡み合って決まっていくので一筋縄ではいきません。儲からない作品はシネコンではスッパリ終わってしまいますし、配給がプッシュしていたら長く上映してたり…。
いろいろと大人の事情があるようです。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年3月15日 (水) 02時17分

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