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2006年4月21日 (金)

File.45 定価1,800円

1,800円。
映画館に足繁く通う方にはピン!とくるこの価格。そうです、日本における一般的な映画鑑賞料金です。デフレ絶頂のこのご時世でも強気に掲げられるこの料金。かねてから海外と比較して日本の映画料金は高いと指摘され、また全国ほぼ一律に料金が画一化されていることに不満を感じている人も多いようです。
今回は映画鑑賞料金について軽く触れてみたいと思います。
料金の引き下げは鑑賞者からの訴求が多い議題で、実は映画業界内においても何度となく問題にされている事柄なのですが、料金値下げは実現されていません。様々な要因がありますが、映画業界では鑑賞料金については暗黙の了解みたいなものが存在します。

製作・配給側にとってみれば料金1,800円は、映画鑑賞の「メーカー希望標準価格」に相当し、基準となる価格指標として支持されてきました。また製作側には1,800円の価格が付くことで、作品に対する商品価値を維持できる点で支持されています。自由経済では商品価値によって価格が変動しますが映画界においてはそれが無く、1,800円が鑑賞料金の定価であって、これを下回ることは作品イメージの低下につながるとの危惧があるわけです。

しかし、ほとんどの作品で一律の鑑賞料金が設定されているうえに、映画館ごとの価格差もほとんどない現状はお客様にとっては不透明な料金体系で、価格自由化の要望は数多くあります。興行サイドにおいては各種割引サービスの実施によってある程度の価格下落はあるものの、1,800円を割る恒常的な通常料金はほとんど見受けられません。

原因のひとつに配給と興行との関係が挙げられます。映画館における興行収入から一定の歩合で差し引かれた額が配給収入となるため、鑑賞料金の値下げは配給会社の収入減に直結し、それは製作者の収入減も意味します。映画の製作には多額の費用がかかるので、製作費を回収できない場合は当然赤字となってしまいます。
むやみに鑑賞料金を値下げして配収が減少すれば、配給からの圧力(配給停止等)がかかる可能性があり映画館にとっては怖いことです(これは仮定でのお話ですが)。そのうえ、値下げしたからといって鑑賞者数が大幅にUPするとは限らず、逆に自分の首を絞めることになる恐れもあります。
他にも理由はありますが、相対的にみてマイナス要因となる可能性が高いため、現在に至るまでこの価格は維持されてきました。

また、横並び意識の強い映画館業界ではこの標準価格の維持を是とする考えがあります。組合意識というと語弊があるかもしれませんが、同業社内で事を荒立てないためにもこの価格は機能しているところがあって、同じ興行会社チェーンの映画館でも割引サービスで都道府県によって実施内容に差異があるのは同じような理由だったりします。

製作、配給、興行それぞれ立場や理由は違えど、1,800円を容認しているといえます。なお、1,800円が高いか安いかという問題は個人差もあって難しいところですね。

シネコンの進出によって全国のスクリーン数は回復傾向にある現在、映画館に足を運ぶお客様の数も着実に増えてきています。映画館が身近になったことは大きな理由ですが、同時に最近の邦画の好調も大きく貢献している言えるでしょう。当たり前ですが観客に支持される作品があれば、自然に動員数は増えます。観客不在の映画製作が邦画に蔓延していた先ごろに比べれば、最近の成績は洋画と比べても善戦しているといえますし、結果的にさらなる顧客発掘につながります。ヒット作を作ることは至難の業で、そう簡単にはできないことでもありますが…。

出資すればきちんとリターンが見込まれるようなビジネスプランができれば、同時に鑑賞料金の多様化という新たな試みに挑戦する企業が出現するかもしれません。配給と興行と関係機関がタッグを組むことが必要ですが、それぞれにポジティブな結果をもたらすようなビジネスプラン・料金設定が行えればお客様にとっても映画館はより身近な存在になるかもしれませんね。試験的な動きもまだ見受けられませんが、近い将来には制約や慣習を振り払った料金システムを持った映画館が出来てくることを期待したいところです。

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コメント

先日はTBとスクリーンサイズについてのコメントありがとうございました。

平日に映画をみることが可能な私は、男性1000円の日(私が住んでいる仙台市の場合は、映画館によって木曜日のところと水曜日のところがあるんですが)にしか行かなくなってしまいました。
子供のころは前売り券の半券を集めるのが楽しみだったものですが・・・

DVDの値段を考えると、やはり1800円は高いんじゃないかという気がします。ただ1000円の日だからといって、映画館が埋まっているかというとそうでもないんですよね。確かに値下げしたからって観客が来るということにも、ならないんだろうなと・・・

90年代の前半に萩本欽一さんが、15分の短編を5本立てにして、1本300円。見た分だけ払う(見た本数は自己申告で)というユニークな企画「欽ちゃんのシネマジャック」というのをやって、一律映画料金を壊す起爆剤になるかとも思ったんですが、単発の試みに終わりましたね。

投稿: TARO | 2006年5月 2日 (火) 23時11分

TAROさんこんにちは。

チネ・ラヴィータが水曜日、MOVIXが木曜日ですよね。女性割引は普及していますが、男性割引はなかなか広まりません。不思議です(笑)。客として考えれば当然ながら安く見られたほうがいいので、割引の日に見に行くのは自然なことです!

ただし、恒常的な割引をしてもお客様が増えるかは別問題になってしまいます。一度価格を下げてペイができなかった場合、再び値上げすることは顧客からのネガティブイメージになってしまいますし…。薄利多売といかないのが映画です(>_<)

釣りバカ日誌などでは廉価な価格設定が見られます。こういう試みが増えるとおもしろいですね。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年5月 3日 (水) 18時45分

こんにちは。
当日料金1800円は高いと思いますが、最終的に映画を制作する資金に関わってくるとなると、一概に苦情も言いにくいものなのですねえ。

わたしは絵のついた前売券が好きで、半券を取っておきます。うっかりコンビニで購入したら、チケぴの印刷券でがっくりしたことがあります(でも取ってあります)。
というか当日券で入っても捨てたりしないです。
自分がいかにもオタクのような気がして、あんまり人には言いませんが…。

前々から疑問に思っていたのですが、教えていただけますでしょうか。
前売券というのは、どの段階で映画館の利益として計上されるのでしょうか。
劇場窓口とプレイガイド等外部で購入するのとでは違うのか。
劇場窓口で売っていても、全国共通券の場合は購入した映画館で観るとは限りませんよね。

前売券やレディース・デイ等の割引料金は利益が出るのでしょうか。
もしかして、当日料金とは利益配分とかが違うのでしょうか。映画館側の持ち出しということなのかな。
これを説明してもらうと、映画館としては都合が悪いということがあれば適当に省略してもらってもかまいません。

投稿: かわうそ | 2007年9月 9日 (日) 01時15分

かわうそさん、こんにちは。

映画館の券売利益は配給との契約や各種の条件によって実情は様々なのでお答えできる範囲での書き込みになりますことご了承ください。

前売券が通常料金に比べて割安に設定(1,300円~1,500円前後)されているのは、いわゆる公開前大量販売を行うことで先に利益を上げられるのが前提になっています。窓口やプレイガイドの他、企業や団体に販売することで配給が事前売上げを立てることができる保険のようなものです。

前売券を販売している時点では映画館での利益はほとんどありません。一応は販売代理手数料がわずかに入りますけど…。もちろん金券ショップやネットオークションなどの二次販売は除外です。

映画公開後にチケット窓口でもぎった券(着券と言います)を配給に計上してはじめて映画館の利益になります。当日料金も含めてあらかじめ契約で交わされた比率で利益は按分されます。興収と配収です。
つまるところ前売券は映画館にとって紙切れなんです。いくら売っても利益にはほとんどなりません。着券してはじめてお金として機能します(切り離し無効というのもそのためです)。

現実、割引料金では利益が少ないのが本当のところです。だからコンセッションや物品販売で利益を出さないといけないのです。
招待券やポイントカードによる大幅なディスカウントまたは無料鑑賞権は映画館が持ち出しで提供する場合もあります。1名様につき立つ売上げと動員を配給に報告する必要がありますから、大きなマイナス料金(900円以下など)は映画館が負担しているのです。

よって映画料金は高いと言われつつも、現状の料金は今のシステムでは妥当だと個人的には捉えています。一般1,000円などでは映画館は倒産するでしょう。そのため、各種の割引料金やポイントサービスなどで生き残りを図っているという側面もあります。シネマイレージやMOVIXクラブカードなどのポイントは実質の値下げの側面もあるわけです。例えば6回見れば1回無料ならば、毎回300円割り引いているのと同じことを意味します。

半券コレクターは大変多いですよ。半券ケースから大切に取り出すお客様も普通にいます。前売券のもぎりをきれいに切り取らなければいけないという決まりはありませんが、なるべく美しく切り取るほうが良いですよね。なかなかそこまで丁寧にできないのですが…。まれに自分で切り取る方もいるようです(゜o゜)

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年9月 9日 (日) 02時07分

こんにちは。
再々しょうもない質問に真摯なお答えありがとうございます。

>半券コレクターは大変多いですよ

慰めて下さってありがとうございます。
日本のどこかにはそんなマニアが棲息しているんですね。
全然いなくはないと思っていましたが、私の周りには何かを溜め込むのが好きという人間がいませんので、まあ訊かれでもしない限りは言いません。
そんなマニアと交流したいかというと、そうでもないんですが。

>もぎった券(着券と言います)を配給に計上してはじめて映画館の利益になります

やっぱりそうですか。
そうすると、劇場窓口で売った分は一旦配給会社に入金されているってことかな。
でも実際に現金が行ったり来たりしている訳じゃなくて、経理処理は当日券の配給会社配分と相殺処理でもしているのかなあ。

映画館名が入ったそこでしか使えない券を劇場窓口で売った時点でも、やっぱり売上処理は出来ないんですね。
全国共通券があるのに劇場限定の前売券が出せるのは、配給会社とその映画館との力関係でもあるのでしょうか。

私は前売券を買っておいて、うっかり上映時期を逃してしまうことがたまにあるんですが、そういうときその分のお金はもしかして配給会社へそっくりそのまま入るのでしょうか。
ずーっと以前に上映期間を過ぎていることに気づいて、映画館でこの券どうしたらいいでしょうと訊いたら、その映画の次に上映していた映画に入らせてくれたことがありました。これから気をつけてねとは言われましたが。

投稿: かわうそ | 2007年9月 9日 (日) 23時04分

半券コレクターは超メジャーです。数万人規模の人口はいるとみて間違いないと思いますよ。割引よりも半券目当てに前売券を購入している方も多いです。そのため「ぴあ」やファミリーマート発券は敬遠される傾向にあるようです。券面デザインが重要なのですね。

映画館にとっては着券がお金の代理として機能します。でもそれだけでは紙切れですから、前売着券と打ち込みデータを配給に提示することで映画館の利益が生まれるようになっています。
興行不良のいわゆるタマ入れなどでは逆に配給が身銭を切って興行保証する場合もあって、このときも前売が使われます。配給が前売を購入するような図式になります。

いずれにしても前売券を販売しても映画館の利益ではないのです。利益になるならどこの映画館も販売するでしょう(TOHOシネマズ六本木ヒルズなどは取り扱いなしです)。映画館が映画で稼ぐには動員を出す必要があるわけです。そこではじめて前売券の価値が出てくるような仕組みです。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年9月10日 (月) 01時28分

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