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2006年6月 2日 (金)

File.56 新宿松竹会館メモリアル 6

2006年5月14日に閉館した新宿松竹会館(新宿ピカデリー)を偲び、その姿を写真で振り返る連載の第六回目です。半月に渡る長期連載になっておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

お待たせいたしました。

今回は、あの
“伝説”の新宿ピカデリー4(通称ピカ4)を偲び、国内最後に残された驚愕スケールのロードショー館の姿を追います。新宿ピカデリー4の詳細についてはこちらの過去記事をご参照ください。
それでは、さっそく潜入してみましょう。


新宿松竹会館メモリアル Vol.6
~潜入!新宿ピカデリー4~




ここから全てがはじまる…
新宿ピカデリー4へは他の3館(新宿ピカデリー1・2・3)とは別の、この入口から入場します。松竹ボウルと兼用の入口には作品のポスターやタイムスケジュールが掲示されていて、とくに不審な点は見当たりません。
入場してから驚き、後悔するお客様が多かったのは、この普通な入口に罪があるのかも…。




次々に吸い込まれていく犠牲者たち(笑)
入口を入ると階段があり、左前方には松竹ボウルのモニターが鎮座しています。古ぼけた場内ですが、この先に展開する驚愕ワールドを匂わす様子はまだ見受けられません。
この日は大勢のお客様で賑わっていました。写真に写っている方々はピカ4経験者なのでしょうか、心配してしまいます(笑)。前の上映回は満席だったらしく、撮影時に見かけたお客様は退場後に開口一番、「44席しかなかったのか…、いやあ参った参った。画面見えないし狭いし!!」とこぼしていました。




奥に進むとこんなスペースが
階段の先にはまた階段があります。突き当りは開場時間や上映作品を示す掲示でぎっしり埋まっています。問題のピカ4はこの階段を上って2階に存在しています。




警告文
掲示物のなかで特に目をひくのがコレ。
観客に対する警告?それとも劇場側の言い訳?
間接的に「うちよりも他の劇場で観たほうがいいですよ」というメッセージになっているところに脱帽です。池袋か渋谷の劇場まで行くことをおすすめします、とさりげなく書かれていますね。

さあ、この警告を無視して先に進んでみましょう。




徐々に怪しい空気が感じられてきました
掲示スペース脇の螺旋階段はちょっと不気味な雰囲気です。赤い階段と緑色の壁が独特の雰囲気を醸し出しています。このあたりになると、一体どんな劇場なのだろうかと皆ちょっぴり不安になってくるんですね(笑)。B級ホラー映画の上映のときは雰囲気満点でした。




異界への門が開く
とうとう2階にあるピカ4の入口まで来てしまいました。
踊り場があるだけでロビーはありません。右手のドアを入ったところに券売機が見えます。この驚異的に狭いスペースに券売機ともぎり台が設置されていて、その奥の暗い部分がピカ4場内です。どこまでも小さくどこまでもチープ、それがピカ4の特徴。
ここにも
最後通牒(?)として先ほどの警告文が貼られています。「絶賛上映中」のコピーが良い味を出していますね。
引き返すなら今です。




これが新宿ピカデリー4だ!
ついに姿を現した新宿ピカデリー4、写真は場内の全景です。
広角レンズによる遠近感で実際よりも広く見えますが(笑)、座席数44席・列数5列の素晴らしく狭い映画館です。映画会社の業務試写室でもここよりは広いですし、背の高い人なら天井に手が届きます。目測ではだいたい50㎡くらいでしょうか…。広い家ならこの程度の面積の部屋もあることでしょう。
左右にあるような柱や構造躯体は邪魔なので通常の映画館設計では壁面の内側に隠してしまうのですが、ピカ4ではスペースが無くなってしまうので放置してあるようです。




劇場後部からの見渡し
角度を変えて後方から見てみますが、どうあがいても狭いです。天井が低いので圧迫感もありますね。禁煙サインもしっかりあり、上映中も煌々と輝いています。あと気づきにくいのですがスクリーンの設置位置が微妙に右寄りになっていて、中央位置のシートではセンターを外すという罠が仕組まれています。右から4席目の最前列がベストポジションです。
これだけ狭い劇場でありながら、鑑賞料金は通常通り大人1,800円が必要です。さすがに不満を感じるお客様も多かったと推察され、あの警告文は苦肉の言い訳だったのでしょう。
日本全土を探しても、このサイズの35mmフィルム上映ロードショー館はもう無いのではないでしょうか。恐るべきことはピカ4が映画製作配給会社・松竹の直営館で、松竹東急系(ST系)チェーンの頂点に位置する丸の内・新宿・梅田ピカデリー系列の直系映画館であるということです。看板倒れとはまさにこのこと?




シートは良いです
狭い、小さいとマイナス面ばかりが話題になるピカ4も、座席に関しては及第点以上です。コトブキ社製と思われるシートが使われており、前の席との前後差も十分とってあります。ドリンクホルダーも完備されていてシネコン並みの充実ぶり。シートに関して言えば新宿でもトップクラスでしょう。
しかし場内には傾斜や段差がないので、前の人の頭(場合によっては肩も!)はしっかりとスクリーンにかかってしまいます。




サラウンドスピーカー
他の劇場では見たことの無いスピーカーです。恥ずかしながら不勉強な管理人にはこのスピーカーの機番は分かりません。学校の教室に設置されていそうなレトロ感溢れる外観をしています。レフト・ライトサラウンドに各2台、バックサラウンドに2台の計6台が設置されています。
現在の映画館は音響にデジタルフォーマットが導入されるなど進化を続けていますが、ピカ4はかつて主流だったアナログ音響のドルビー・ステレオが現役で使われています。ドルビー・ステレオは1974年にドルビー・ラボラトリーズ(アメリカ)が開発した、アナログ録音の4チャンネル映画音響フォーマットです。最近はアナログ音響上映館でも上位フォーマットにあたるドルビーSRを導入している映画館がほとんどなので、ドルビー・ステレオ館は珍しくなりました。




何かがありません
お気づきになられましたか?
そう、映写室がありません。その代わり(?)に監視カメラが設置されています。
ピカ4のように映写室を設けるスペースがない映画館では、客席後方からではなくスクリーン裏から映写をする
リア・プロジェクション方式を採用します。つまり、スクリーンの裏側に映写機が設置されているのです。
大スクリーンで画面いっぱいに映写するには相応の映写距離が必要になるのですが、リア・プロジェクションではスクリーンのすぐ近くに映写機があるので必然的に小さな画面になります。またスクリーン裏スピーカーからの音を透過させるサウンドホール(小さな穴です)もありません。リアプロ方式でサウンドホールがあったら映像がまぶしくなります。




迫力の大スクリーン!?
ピカ4のスクリーンサイズは以下の通りです。
ヴィスタサイズ:1.1m×1.8m
シネマスコープ:1.1m×2.4m
映画館にあまり行かれない方には実感がわかないかもしれませんが、1,800円を徴収する商業映画館としては信じられないサイズです。ヴィスタサイズはタタミ一畳と大差ありません。カーテンが開くと一畳サイズの小さなスクリーンが姿を現す光景はまさにエンターテインメント、場内がどよめく瞬間はピカ4名物。このスケールを伝えられないのが残念です。日本最大のスクリーンサイズを誇るTOHOシネマズ海老名の1番スクリーンならピカ4のスクリーン81個分が入ります。
最初は3列目にお座りだったお客様が、1列目に移動されています。賢明なチョイスです。ピカ4の特等席は1列目、というよりも前の人に邪魔されずにまともにスクリーンが見られるのが1列目だけなのです…。
スクリーン脇には謎の暖簾。この先に映写スペース入口と、トイレ・休憩スペースがあります。
上映開始前とエンドロール前後には映写係の方が堂々と場内を通って映写スペースに入ってきます。そんな凄い環境がここにはあります。




クリーニングはしないのでしょうか
スクリーンには薄っぺらいカーテンがかかっていて、普段は隠れています。そのカーテンもすっかりくたびれて汚れが目立ちます。せめてこういう備品は清潔感を保っていてほしいものです。カーテンは電動で開閉します。意外にハイテク!?




脱出
異界のピカ4から脱出、ようやく下界が見えてきました。2枚目にご紹介した階段を上から見るとこんな感じです。幾多の人々がこの劇場に来てしまった無念さを感じながらこの階段を降りていったのでしょう。




とどめはこの光景
ようやく外に出てこれたと思ったら眼前に広がるのはこの光景。映画の余韻も台無しになります。最初から最後まで強烈なインパクトを残す映画体験が可能だった新宿ピカデリー4も、5月14日に営業を終了しました。
映画鑑賞環境としては非常に劣悪ですが、こんな個性ある映画館が消えていくことに一抹の寂しさも感じてしまいます。ともあれ、他ではなかなか味わえない“何か”が新宿ピカデリー4にはありました。


新宿松竹会館メモリアル 7に続きます。


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コメント

いやあ・・・絶句。

楽しませていただきました。
地方の古い映画館は、映画全盛期に出来た建物だったりするので、結構中は広いんですよね。こんな映画館が存在したというのが驚き。まして新宿に、しかも松竹直営館で・・・

>カーテンは電動で開閉します。

惜しい!手動で、窓のカーテンみたいに紐で引くんだったら完璧だったのに。。。。。

投稿: TARO | 2006年6月 2日 (金) 11時47分

TAROさんこんにちは。

こんな劇場が存在し、現存してきた事実が凄いですよね。それも都心でピカデリーの名を掲げて。
それでも味のあるというか、観客同士の一体感を味わえる劇場でした。

カーテンは残念(?)ながら電動です。この開閉速度が案外速いんです!

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年6月 5日 (月) 07時56分

月夜野さん おひさしぶりです!
無事に彼の地から帰って(?)まいりました。
しばらく見ないうちにこのシリーズも6まですすんでいたのですね。

今回も本当に丁寧なレポート面白かったです。
5列しかないなんてびっくり。こんな劇場があったなんて。
椅子だけは最新なのが泣かせてくれます。
その昔日劇の地下の丸の内東宝には何と、柱の後ろの席というのがありましたっけ(笑)

シネコン時代。設備が整っていくとこんな個性的な映画館もどんどん姿を消していくのですね。

投稿: Angelita | 2006年6月 7日 (水) 00時31分

はじめまして!「まちえい・映写室だより」の管理人をしているものです☆
遊びにきました♪


>上映開始前とエンドロール前後には映写係の方が堂々と場内を通って映写スペースに入ってきます

には大爆笑でした。
凄い魅力的。こういう映画館が、次々となくなっていってしまうのは、とても寂しいですね。

また、遊びにきます☆よろしくお願いします!

投稿: まちえい子 | 2006年6月 8日 (木) 10時47分

以前新ピカで働いていたものです。
もう●年以上ピカ4(当時はピカ3)の中を見ていなかったので、
感慨深い思いで拝見しました。
以前は試写室だった所を改造して
つくった劇場で、
あのスクリーン脇からずっと奥にある扉を開くと複雑な通路を経由して
ピカ1の映写室と繋がっていたりするのです。技師さんはその通路を使ってピカ1とピカ4をいったりきたりすることもあったと記憶してます。
「スクリーンの縁をネズミが走っていた」とお客様のクレームを貰うこともしばしばありました。

投稿: しんぴか | 2006年6月 8日 (木) 17時40分

Angelitaさんこんにちは、というよりもおかえりなさい!かな。ご無事に戻られたようで安心しました。また旅行記を楽しみにしております。
はい、こんな映画館が21世紀の東京都心に残っていたのです…。ロードショー館とは思えぬ風情が最高でした。こういう無理矢理な構造を持った映画館がどんどん消えていきます。シネコンは意外に印象に残らないものですが、ピカ4で観た映画は違う意味で印象に残ります。

まちえい子さん、ご来訪ありがとうございます。
実際に映画館で勤務されている方からのコメントはなかなかないのでどうぞよろしくお願いいたします。
町田だと新宿間は電車1本なので新宿松竹会館もすぐですね。
町田だと周辺がシネコン激戦区なだけに運営も大変かと思いますが、まちえいからの情報発信を楽しみにしています!

しんぴかさん、ご来訪ありがとうございます。
新宿ピカデリーの関係者の方からの貴重な内情コメント、大変嬉しいです。ちょっとでも懐かしく感じていただければ幸いです。
ピカ4のトイレの先には突き当たりのドアがありますね。ピカ1の場内に当てはめると左側壁から映写室方向へ向かうもののようですが…。あの通路で映写室がつながっていたのですね。
ネズミは…映画館にお約束でしょうか(笑)。新しい映画館でも結構いるようです。
またのご来訪お待ちしております。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年6月 8日 (木) 19時12分

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受信: 2007年9月17日 (月) 02時42分

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