« File.58 新宿松竹会館メモリアル 8 | トップページ | File.60 場内音楽 »

2006年6月22日 (木)

File.59 新宿松竹会館建替え続報

47年間の歴史に幕を下ろした新宿松竹会館を偲ぶ連載記事「新宿松竹会館メモリアル」、多くの方々からご閲覧いただき感謝いたします。一ヶ月間の連載中に多数の反響を頂戴し、あらためて新宿松竹会館の存在をかみ締める思いです。
連載は終了しましたが、本日は建替え計画のおおまかな概要と最終営業日の様子をお伝えしようと思います。

☆最終営業日レポート
2006年5月14日の最終営業はイベントが催されることも無く、淡々と終了しました。

映画酒場ゾートロープさんの記事にもありますが、寂しい千秋楽だったことが残念でなりません。
拙サイト管理人も新宿ピカデリー1の最終上映『小さき勇者たち~GAMERA~』を鑑賞したのですが、上映前と上映後のアナウンスには閉館の案内や挨拶は一切無く、何事も無かったかのように全営業は終了しました。上映後ロビーにいるスタッフも無愛想に淡々とパンフレットを販売するだけ。まさか老舗百貨店の閉店のようにエントランスに従業員総出で御挨拶という大それたものは期待していませんでしたが、
アナウンスも終了時の挨拶も全く無い素っ気無さには驚きを隠せませんでした。

このような歴史と格式、規模を持つ映画館が閉館する場合、普通は閉館イベントがあってもおかしくはありません。今年1月の東宝系老舗・京都宝塚閉館の際はイベント「街の灯よ、ありがとう 京都宝塚・スカラ座・京極東宝ラストショー」が開催され、多くのファンが劇場と一体となって花道を飾ったのとは対照的です。私自身、新宿松竹会館ではイベントは無いだろうと感じていたのですが、本当に“何もなく終わってしまった”ことに寂しさを感じずにはいられません。

映画館という場所は映画を上映する場であると同時に、多くの観客にとって思い出の詰まった施設でもあります。47年間の長きに渡って新宿の地で営業を続けてきたのですから、その間に数多くの思い出とドラマがここで繰り返されてきたことでしょう。
そして今回の閉館は拙記事で多数のご反響を頂いたように、閉館を惜しんでいる人も数多くいます。最終上映は全820席の劇場にわずか50人程度の入場者数でしたが、大抵の方が名残惜しそうにカメラで場内を撮影されていました。きっとここで最後に映画を観たかった常連の方々で、わざわざこの日を選んで出向いたのだと思われます。この日は“新宿のタイガーマスク”さんも松竹会館に来場されていました。

最後の別れにやってきた顧客にとって、新宿松竹会館側の無愛想さはどう映ったでしょうか?これはそのまま松竹という会社の印象に直結しているかもしれません。
実際お客様のなかには「本当に挨拶も何もしない気なのか…」とつぶやいている方もいらっしゃいました。自分が贔屓にしてきた歴史ある老舗映画館の閉館に立ち会ったことは忘れないでしょうし、「あの会社(劇場)は最後に一言の挨拶もなかった」という記憶も残っていくでしょう。
私個人の感想としては、なぜアナウンスに一言「本日で閉館いたします。ご愛顧ありがとうございました。」を付け加えることすらできなかったのか不思議に感じるとともに、ゾートロープさんと同じくサービス業としてのあり方を考えさせられました。事情はあったのかもしれませんが、お客様の目線に立った姿勢が欠如していたと言わざるをえません。

映写品質は古い映画館だから贅沢は言いませんが、いつもと変わらぬ品質でした。
映像がスクリーン右下外側方向へ斜めに大幅にはみだし、画面左側にはアパーチュアープレートの陰が映りこんでいるうえに、フォーカスも甘いという悲惨な状況でした。またスクリーンサイズがきちんと合っていないので、『デスノート』予告編では字幕が画面下側で切れているというお粗末さ。音量も小さめで迫力に欠ける音響。せっかくの大劇場・大スクリーンでもこのような映写では映画が台無しとなってしまいます。ここでも顧客に対する意識が欠けていることを
感じてしまいます。

以上、前回までの連載とは違って苦言を並べてしまいましたが、無くなるには惜しい日本を代表する大劇場のひとつなので、あえてネガティブなレポートも最後に残しておきたいと思います。



☆建替えの概要
さて、新宿松竹会館は間もなく取り壊し工事に入り、2008年9月にシネコンとなって装いも新たにオープンします。松竹初の都心型シネコン、必然的にフラッグシップの劇場となることが予想され完成が待たれるところです。
以前から隣接の伊勢丹会館と共同再開発の計画がありましたが、現時点で東映と東宝が共同開発している新宿バルト9(仮称)が至近に建設中のため、これに対抗するべく計画を前倒しで進めた形跡がありますね。

新宿松竹会館(仮称)再開発概要
【所在地】 東京都新宿区新宿3-15
【敷地面積】 1,611.13㎡(487.36坪)
【投資額】 60億円
【計画規模】 地上12F、地下2F 
【スケジュール】 平成18年6月解体開始、平成20年9月竣工(予定)
【スクリーン数】 10スクリーン(予定)
【座席数】 2,260席(予定)
【駐車台数・駐輪台数】 56台・80台(予定)
※ マルチプレックスシアター使用フロアーは3F~12Fとなり、その他フロアーは貸し店舗

気になる劇場のスペックですが、最大スクリーンとなる1番スクリーンには松竹映画館初のプレミアム席が設置されるようです。これは座席数90席程度のバルコニー席で、TOHOシネマズ六本木ヒルズの「A-LISTバルコニー」を一般向けにアレンジしたようなものになりそうです。
フロア構成はB1F~2Fはテナントが入居、3Fがロビー&売店で4F~12Fが映画館になります。
座席数は1番:635席、2番:287席、3番:301席、4番:227席、5番:127席、6番:157席、7番:115席、8番:127席、9番:127席、10番:157席で合計2,260席の計画。全体的に小粒なスクリーンが多いので、作品数を多めにラインナップしてローテーションを組むスケジュールが予想されます。

注目点は、映画館としての用途以外にもすぐに転用できるように設計されている点ですね。映画館は天井の高い構造になっているため他用途に転用するには不向きで大幅なリフォームが必要ですが、建設される新館は各フロアで床を増築したり座席を取り外せるようにすることで万が一の業種転換にも対応できるようになっています。将来を見据えた設計構造から長期戦略に則った投資であることが窺えます。

劇場のネーミングはピカデリーの名前を継承するか、それとも松竹系シネコンMOVIXにするかで意見が分かれています。自社系シネコンをMOVIXで統一するのか、ピカデリーチェーンの伝統を受け継ぐのか。今後の新館命名にも影響を与えそうです。

消え行く新宿ピカデリーの最期は本当に寂しいものとなってしまい残念でした。今はただ、生まれ変わる新・新宿松竹会館の誕生を楽しみに待ちたいと思います。松竹にとっては丸の内ピカデリーと並ぶ東京のメイン劇場になるので、設備・サービス共にきっと素晴らしい映画館が出来上がることでしょう。
その日までしばらく新宿松竹会館とはお別れとなります。再来年のオープンが待ち遠しいですね。



|

« File.58 新宿松竹会館メモリアル 8 | トップページ | File.60 場内音楽 »

新宿松竹会館」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

映画上映設備」カテゴリの記事

映画業界のお話」カテゴリの記事

映画関連ニュース」カテゴリの記事

映画館のお話」カテゴリの記事

コメント

こんにちは
先日は書き込みありがとうございました。
建て替えですか、シネコン流行りですね。
10スクリーンで2,260席だと小さい箱になるのでしょうか?映画館に足を運ぶんだったら大きなスクリーンで見たいものです。
是非、ピカデリーの名を継承して欲しいと思います。

投稿: maq | 2006年6月24日 (土) 09時21分

maqさんこんにちは。

単館よりもシネコンのほうが営業効率が良いため、これからはさらにシネコンが主流になっていきそうですね。
最大劇場が635席、シネコンなら最大級に分類されるキャパシティなのでスクリーンサイズも期待できそうですけど、千人超だったピカデリーと比較すると小さく感じてしまいますね。

名称はまだ未定のようです。ピカデリーは丸の内や梅田で現役なので継承される可能性は十分あると思います。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年6月25日 (日) 03時12分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/30969/2323649

この記事へのトラックバック一覧です: File.59 新宿松竹会館建替え続報:

« File.58 新宿松竹会館メモリアル 8 | トップページ | File.60 場内音楽 »