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2006年6月25日 (日)

File.60 場内音楽

今回は久しぶりに劇場設備に関するお話をしたいと思います。
映画館の設備や演出は年を追うごとに進歩し、細部にもこだわってコストや手間をかけたハイグレードな映画館が増えてきています。劇場設備というと発券システムや映写・音響機材が注目されがちですが、本日は非常に地味な設備のひとつである劇場内の音楽再生システムについてご紹介いたします。

上映時間の幕間、多くの映画館ではBGMを再生して劇場空間を演出しています。これは劇場営業において必要不可欠なサービスではなくむしろ無くても困らないものですが、実施している映画館は以前に比べると現在はかなりの数になりました。
映画上映にあまり必要のない幕間BGMを行う理由は、
静まり返った劇場は賑わいや活力を感じにくく、寂しい印象を観客に与えるのを避けるためです。これは他の商業施設と全く同じ理由です。映画館特有の理由として、設計の新しい映画館の多くが劇場内の壁面や天井を吸音構造にしていて、無音の場内では耳が若干詰まったような感覚を覚えることが多くあるため、これを避ける意味合いも含まれています。

お客様のなかにはBGMは不要と考えている方もいらっしゃるので一概にサービスとは呼べない一面もあります。理由は様々で、“鑑賞前は意識を集中したい”、“強制的に音楽を聞かされるのは好ましくない”等の意見が時々聞かれます。映画館は意識を集中して映画を鑑賞するところで、BGMは不要というわけですね。これはBGMを流すスキー場を避けるスキーヤー・スノーボーダーがいる状況と似ているようにも感じます。新しい映画館でもBGMを流さない劇場があるようなので、対応は事業主によって様々なのが実情です。

BGMのセレクトも、劇場によって傾向が異なります。多いのは上映中の作品に関連する音楽か、その時期のヒットチャート音楽。映写スタッフが好みの音楽を適当にセレクトして再生している映画館もあります。これはスタッフの好みやセンスが色濃く反映されるので結構楽しめます。上映作品の音楽は市販されているサウンドトラックCDを使ったり、配給会社から映画館に配布されるプロモーション用サンプルCDを使うことが多いですね。

次に劇場内のBGMはどのようにして再生されているのかをご説明いたします。
たいていの劇場ではBGM記録媒体は通常の音楽CDが使用されており、特別なシステムを組んでいるわけではありません。映画本編だと音響は通常の場合上映プリントに映像と共に記録されているので映写機に備え付けた専用の読み取り機で音声信号を扱うのですが、BGMに関しては皆さんおなじみの音楽CDプレイヤーやDVDプレイヤーなどが使用されていて、プレイヤーで再生された音声信号をパワーアンプを介して場内のスピーカーで流しています。

シネコンの場合は複数のスクリーンがあるのでそれに対応しなくてはなりません。劇場が1つだと上記のように運用できますが、シネコンでスクリーン数に応じてCDプレイヤーを導入するのは無駄があるので、代わりに分配器を使用します。1台のCDプレイヤーで再生した信号を分配器を通じて各スクリーンに配信することで、再生機能を集約して効率的に運用します。シネコンが映写室を一ヶ所にまとめて設計するのと同じ論理です。

2006年4月にオープンしたばかりのMOVIX堺はBGM再生にDVDを使用して、5.1chサラウンドを実現しました。BGMは再生音量を小さく設定するので5.1chにしても効果は薄いと思うのですが、BGMまでサラウンド再生にする試みは映画館らしくておもしろいですね。
映画音響には将来的に現行の5.1chを上回る多チャンネル音響システム(10ch以上)の実用化が予想されるので、そのときにはBGMもサラウンド再生が一般的になるかもしれません!?




サウンドハウス

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コメント

これもまた興味深い話題でした。

私の中では映画館のBGMはサントラが普通という認識でしたが、そうでないところもありますよね。
でもサントラが流れている方がいいなぁ。単館ではなくシネコンだとそうでないところが多いのでしょうね。

私はシネコンがない時代から映画館に親しんでいたので、映画館まるごとひとつの映画の世界になっている方が好きなんです。

投稿: Angelita | 2006年6月30日 (金) 23時48分

Angelitaさんこんにちは。

映画館でのBGMの是非については表立って語られることは今まで無く、おそらくここで取り上げなければ表面に出てくることは無かったであろう地味な話題なのでご覧頂けて嬉しいです。

映画館まるごと映画の世界といえばVC六本木ヒルズが『マトリックス』(2作目か3作目か忘れちゃいましたが)のときにディスプレイが作品一色に染まっていましたね。いかにもお金がかかっているようでア然としました^^;

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年7月 2日 (日) 01時02分

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