« File.62 梅雨対策in映画館 | トップページ | File.64 映画と怪談 »

2006年7月18日 (火)

File.63 劇場の格付け…?

最近、何かに付けて「格差社会」の話題が多いと感じるようになりました。「勝ち組と負け組」などと人々の生活水準や社会構造を無理にレベル分けして騒ぐ一部マスコミの風潮はいかがなものかと思ったりもする昨今です。娯楽・営利商業媒体の性格がマスコミからさらに強く感じられるようになってきているとも思います。
現在では様々なものに対してレベル分けが行われるようになっていますね。おなじみの映画興行ランキングや音楽ヒットチャートランキングはもちろんのこと、保険や病院、債権に企業成績…etc。格付けやランキングという名の元もとにその範囲は拡がる一方です。

格付けといえばレストランやホテルは昔から星を使った表現で“三ツ星”等といったかたちで広く行われてきました。厳しい眼を持つ利用者からの評価は参考になるものが多く、書籍やTV番組で高評価を得ると非常に大きな宣伝効果を持ち、とくに高名な店やホテルとなれば国内外を問わずVIPも訪れるわけで、その名声はさらに高まることとなります。
一方で
映画館ではこれまで表立って格付けが行われたことはあまりありません。書店では人気ホテルやレストランをランキングや格付けで紹介した本が多数販売されて人気を博していますが、映画館においては皆無といえる状況で同じサービス業でも大きな違いがありますね。これは映画館がレストランなどと違って取り扱う商品(映画)が同じということと、劇場ごとの売りやブランド性・話題性に乏しくランク付けをするメリットがあまりないことが大きな原因だと思います。

シネコンが普及するまで日本の大半の映画館はお世辞にも褒められた状況ではありませんでした。設備は古くてサービスも悪く、快適に映画を鑑賞できる映画館が少なかったことはまだまだ記憶に新しいところです。シネコンだから必ずしも快適というわけではありませんが、上映設備や各種割引サービスの充実はシネコンによってもたらされた恩恵のひとつでもあります。

次に格付けとは別に、映画館の質とコスト(料金)のお話をしたいと思います。

映画館では料金がほぼ全国一律で設定されています。すなわち大人料金でいうなら約1,800円ですが、ここに大きな矛盾が生じてきます。映画料金設定の現状はFile.45 定価1,800円ですでにご紹介していますが、同じ作品を上映している映画館でも上映設備やサービスは千差万別ですよね。
これはどういうことを意味するかというと、高度な上映設備を導入して映画のクオリティを観客が最大限に体感できる
最新映画館と、貧弱な環境の映画館のどちらで鑑賞しても同じ料金が必要ということです。レストランで例えれば雰囲気が良くて食器や用度は高品質、サービスも申し分なく高級食材を使い料理人の腕と経験が抜群な店と、それとは正反対なチープな店とでも同じ料理であれば料金も同じといった感じでしょうか?これはちょっと解せないですし、同じ料理と料金なら雰囲気もサービスもよくて美味しく食べられる店を選びたいと思うはずです。乱暴な例えですが…。

映画館でも上記と同じことが言えます。
最近の映画館では上映設備にコストをかける傾向があって、録音スタジオに匹敵する設備を有する映画館も散見されるようになりました
(参照 File.61 東西最新シネコン)映写設備の優劣は映画の持つ映像と音響を再現するうえで重要な要素で、作品に対する印象をも大きく左右することがあるほどです。実際に映像品質の高い映画館では、そうではない映画館では見えなかった映像ディティールがはっきりと確認できたり、音響でも識別できる音の種類や数のほかサウンドデザインの表現が異なってくることがあります。この差は非常に大きいもので、制作者の意向や表現を理解するうえでも重要なポイントです。

こういった映写設備対してこだわりのあるお客様も増えてきています。つまり同じ料金で映画を見るなら劇場まで多少距離が遠くても優れた映写環境の映画館を選ぶわけです。これはシネコン登場以前では考えられなかったことで、映画館側もそれを意識して独自音響設備(東宝のTHAS、シネプレックスのHDCS、ワーナー・マイカルのWMSS等)やTHXといった劇場規格に注力する傾向がより顕著になっています。
またWeb予約サービスや割引サービスの充実などサービス合戦は過熱する一方で、映画館の内容は飛躍的にレベルアップしました。

このように興行会社の努力で映画館のクオリティは年々向上し、快適に映画を鑑賞することができるようになりました。一方で古くからの映画館は厳しい経営を迫られることになり、シネコンの間ですらこれからは淘汰の時代に入ると言われています。設備やサービスを基準に映画館が選ばれるように、質が重視されるようになってきたということです。映画館の品質向上と共にお客様の要求も高まり、今後もこの流れは加速していくでしょう。まさに映画館が勝ち組と負け組に二極化していくことになるのですね…。
しかしながら一方で映写設備などにはこだわらない(関心がない)お客様も大勢いらっしゃいます。昔から行き慣れた近所の映画館が大好きという方も多く、設備のいい映画館ばかりが優れているというわけではなくそれぞれにニーズがあると言えます。

格付けやランキング、口コミ評判もおもしろくて参考になりますが喧伝に振り回されず、TPOに合わせて自分のお気に入りの劇場をチョイスするのが大切だと思います。どちらにしても同じ料金が必要なら、気に入った劇場でゆっくりと映画を楽しみたいもの。そう考えれば格安の二番館なども捨てがたいものですね。
乱立する最新のシネコンも、古くからある街の映画館もどちらにもそれぞれに良さがあるもの。行きつけの映画館を見つけるのもお洒落かな?と思ったりする今日この頃です。

|

« File.62 梅雨対策in映画館 | トップページ | File.64 映画と怪談 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

映画業界のお話」カテゴリの記事

映画館のお話」カテゴリの記事

コメント

月夜野さん、いつもコメントありがとうございます。

1800円という鑑賞料金、僕はほとんどレイトショーかナイトショー(1200円)しか利用しないので、すごく高値な感じがしますね。

1000円以下になれば、もっと足を運びやすくなると思うんですけどね。(^^;

投稿: ひろろ | 2006年7月22日 (土) 17時17分

以前にも映画料金の記事を書きましたが、これがなかなかに難しい問題でして…。現状では1,000円以下で興行すれば映画の未来は絶たれるかもしれません^^;
たしかに高い印象は否めないのですが、かといって値下げも難しいと言うのはジレンマです。

その代わり(?)に映画館の設備環境が向上しているのは歓迎したいです。
映画館を選ぶ基準が変わってきたようにすら思います。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年7月24日 (月) 07時09分

>同じ料金で映画を見るなら劇場まで多少距離が遠くても優れた映写環境の映画館を選ぶ

私もこのタイプです。時間や交通費が余計にかかっても、良い環境で観たいです。イスの心地よさや、前列の頭が気にならない、などが大事です。東京のどこかで、シャンデリアが降りてくる所があったと思いますが、ああいう個性的なのも面白いですよね。

投稿: 足柄 | 2006年7月26日 (水) 16時11分

足柄さんこんにちは。
最近の映画館はシートも良くなって、座り心地も申し分ないですね。前の人の頭がきになることもほとんどないですし。
シートも堅め、柔らかめと様々で劇場ごとで好き嫌いが分かれそうです。

シャンデリアの映画館はサロンパスルーブル丸の内と渋谷TOEI1ですね。まあ、凄い個性だと思います(笑)。地震がきたら怖いですね。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年7月27日 (木) 04時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/30969/2660672

この記事へのトラックバック一覧です: File.63 劇場の格付け…?:

« File.62 梅雨対策in映画館 | トップページ | File.64 映画と怪談 »