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2006年8月 4日 (金)

File.65 博多駅争奪戦

2011年春に新装オープン予定の新博多駅ビル(JR九州)のテナントに、シネコンのT・ジョイ(T-JOY)の出店が明らかになりました。核テナントである阪急百貨店に引き続き2件目のテナント決定です。

T・ジョイと言われても馴染みがない方もいらっしゃるかもしれません。T・ジョイは映画会社の東映が核となって出資しているシネコンチェーン。会社の歴史は浅く2000年に設立、同年12月に第1号サイトのT・ジョイ東広島をオープンして現在は全国に11サイトを展開しています。T・ジョイの特徴としてはデジタル上映設備DLP機材の積極導入と、BOSE社と連携した音響設備が挙げられます。
大阪梅田の梅田ブルク7の他は地味な立地が多かったT・ジョイにとって、
博多駅ビル出店は会社始まって以来有数の大事業となりそうです。

新博多駅ビルについて
ご承知のように、博多駅は九州におけるJRの代表駅。九州新幹線全通に合わせた今回の新装は大規模で、建築規模は地上10階、地下3階、敷地面積約2万2千平方メートル、延床面積約20万平方メートル。福岡市は市街地に近接する福岡空港があるため都心部では高層ビルの建築は認められず建築高さこそ控えめですが、京都駅ビル(約23万7千平方メートル)や中部国際空港旅客ターミナル(約22万平方メートル)などと比較するとその規模をうかがい知ることができます。
T・ジョイは駅ビルの上層部9~10Fに12スクリーン(約2,000席)延床面積6千平方メートル規模での出店です。得意のデジタル上映設備を全館に導入して競合劇場との差別化を図っています。

さて、この新博多駅ビル計画に関して当サイトで気になったのは、博多駅ビルに40年間に渡って入居している井筒屋との契約を解消して新規に阪急百貨店が誘致され、核テナントの阪急百貨店に対して映画館がT・ジョイに決定したことです。

阪急百貨店が核テナントに決定したのはJR九州と阪急百貨店の思惑が大方一致したからでしょうが、地元百貨店の井筒屋にとっては気の毒な結果ですね。JR九州としては同じくテナント候補だった髙島屋のネームバリューも捨てがたかったようですが、賃料契約の折り合いが合わなかったようです。
阪急百貨店は「東の伊勢丹、西の梅阪」と呼ばれるように収益力は抜群、とくに大阪におけるブランド力は百貨店でもトップクラス。現在は拠点の梅田駅と梅田本店の再開発に着手し地上41F、高さ187メートルの超高層ビルを建設中。阪神電鉄との経営統合のニュースは記憶に新しいところです。ただ、馴染みの薄いであろう福岡の顧客に定着できるかどうかは未知数と言えそうです。

映画館の出店には8社前後が名乗りを上げたものの、最終的にT・ジョイに決定。ここでも注目なのは阪急百貨店で、言わずと知れた阪急東宝グループの一翼です。このことから当然ながら映画館テナントには東宝系で決定すると思われていたのですが、こちらも賃料交渉が決裂。東宝は天神地区に劇場を所有しているため新博多駅ビルでは割安な賃料を希望していたのに対し、福岡市で拠点となる劇場を持たない東映にとって博多駅進出は悲願、高額の家賃を払ってでも進出したい東映の希望と家賃収入に期待するJR九州の利害関係が一致したようです。

しかし、テナント競争に負けた他の興行会社にとってはおもしろくないでしょうし、ましてや阪急百貨店との連携で相乗効果が望めた東宝にとっては…。最悪のケースの場合、T・ジョイ博多(仮名称)への東宝系作品配給に支障が生じる可能性も噂されています。ただし実際には競合しても興収が増える分には配給会社の利益となるわけですから、神経質な対応をとることへの心配はさほどいらないと思います。過去には競合シネコンへの作品配給を停止したなどの事例はあるものの、シネコンが興収を支えている現在ではその心配も杞憂に終わるのではないかと…。

いっぽうで注目の再開発物件でありながら商業の中心地である天神から離れた博多駅の立地は多少、不安材料と言えそうです。天神にはすでに岩田屋、大丸、三越の各百貨店が大規模店舗を構えており、九州随一の商業集積と集客力を誇ります。また同地区には映画館が散在するうえ西鉄利用者には西鉄福岡駅から徒歩圏内にユナイテッド・シネマ キャナルシティ13が営業しています。
ユナイテッド・シネマは地行のホークスタウンにもサイトがあるうえ、
福岡は市外近郊にも多数のシネコンがしのぎを削る日本有数のシネコン激戦区。阪急百貨店もT・ジョイも、話題性は十分なだけに、その期待を上回る仕掛けや魅力を用意していく必要がありそうで、それを見越しての進出とはいえ営業努力の大変さを感じさせます。

T・ジョイは東京新宿の東映会館跡地にも丸井が核テナントの共同再開発・新宿バルト9(仮名称)を新築中で、こちらは皮肉にも東宝と共同運営です。
東映は近年『男たちの大和/YAMATO』や『明日の記憶』などヒット作に恵まれ戦隊シリーズが開始から30周年、鹿児島や東京新宿、博多と劇場出店にも積極的で明るいニュースが続いています。

異業種を交えた新博多駅テナント争奪戦。九州初出店となる阪急百貨店と、そのグループ企業である東宝を抑えて出店を果たすT・ジョイ。店を追われる運命となる井筒屋。悲喜こもごもの再開発計画の中でどのような未来が訪れるのか注目していきたいと思います。



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コメント

月夜野さん、こんばんは。

新博多駅ビル、DLP全館導入とは驚きです。
T・ジョイの本気を感じますね。

ただ5年後、12のDLP館を必要とするぐらいDLP作品が充実しているかどうか…。(^^;

投稿: ひろろ | 2006年8月11日 (金) 00時26分

ひろろさん、こんにちは。

T・ジョイにとっては梅田に続く大都心への進出なので力が入っていますね。DLPと4Kに陣営が分かれている現在T・ジョイはDLP側の中心的存在といえそうです。

それでも5年後もさほどDLP作品は増えていないような気はします…。DLPは技術力は向上して十分な品質になったのですが、作品がないことにはどうしようもないですしね。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年8月11日 (金) 23時21分

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