File.66 本当に満席?
お盆に入り、帰省ラッシュが始まりました。長い梅雨が明けて行楽地は大賑わいです。映画館も夏休みは繁忙期なので、多くの劇場にお客様が押しかけていることでしょう。混雑した映画館はなかなかゆったりとは映画を楽しみにくいですが、多くの観客と映画体験を共有できるのは大入りの時期ならではです。まとまった休暇が確保できるこの時期に、お目当ての映画館まで“遠征”する熱心な映画ファン(映画館ファン)も多いようで、熱意には頭が下がります。
現在は立ち見なし・定員制の映画館が主流になり、その場合は座席定員を越えると入場できなくなります(参照 File.6 全席指定制のメリット)。つまり定員分の座席が売りつくされると満席で、その回の映画を鑑賞できないのです。最近ではインターネット予約や上映日の前週からチケット販売を行う映画館も増えてチケット購入は以前にも増して早い者勝ちの傾向となっています。
そのため話題作が多い今のような混雑する大型連休期間やお盆、正月などのいわゆる繁忙期は集客力のある映画館ではチケットが取りにくい状態が続くうえ、売り切れ直前だと席が残っていても端席やスクリーン前など観易いとは言えない場所ばかりです。
それでも我慢してチケットを購入していざ映画が始まってみると…
全席完売したはずなのに空いている席がいくつかある…なぜ!?
そんな経験のある方もいらっしゃると思います。今日はこの「満席」の実際についてご紹介します。
チケット窓口で案内される「満席」のアナウンスは、あくまで管理上のもので座席実数とリンクはしていません。どういうことかと言いますと実際はまだわずかな残席があり、全席完売していなくても満席扱いにして販売を終了しているのです。
たとえば定員400席の劇場があったと仮定すると、チケットが売れるに従って残席数が400席から徐々に少なくなっていくわけですが、それが完売する前の残りわずかになったところで販売を停止するのです。
ここまでお読みになった方はもう理由にお気づきかもしれませんね。理由は座席に関するトラブルを極力軽減するためにわざと少数の席を残しているのです。
例えば上映中に席にドリンクをこぼしてしまい、席を換えてほしいというお客様がいらっしゃったときに全席を販売していたら換わりのお席をご用意できず、映画の続きをご覧いただけなくなってしまいます。
また映画館では上映幕間の短時間に場内清掃を行いますが、前の上映中にお席が汚れた(お客様の申告がない)のが清掃中に判明した場合、次の回までにそのお席の清掃が間に合わないこともあり、お座りいただくことができません。この対策としては判明した時点にその座席を販売しなければ良いのですが、先に書いたように前週からチケットを販売しているような劇場で全席指定制であれば、既に販売済になっていることもあるわけで即応することができないのです。代替席が用意できなければ知らずにご来場されたお客様に多大なご迷惑をおかけすることになります。
他にも様々な要因で席変更が必要になることがあるので、これら緊急時の備えとして若干数の座席を販売せずに取ってあります。これをハウスシート、デッドシートなどと言います。客席数に対して何席をハウスシートにするかは劇場によって様々ですが、小さい劇場でも最低2席程度は用意することが多いようですね。
ハウスシートが常時一定の席に決められている全席指定制の映画館では、観察しているとハウスシートの位置を見つけることも可能です。混雑しているのにいつも空いている席があるならほぼ間違いなくそこがハウスシートです。本来は販売しない席ですからこの席のチケットを持たずに座ってしまうと、係員からチケットの改札を求められることもあり得るので座らないでくださいね。

予備の座席を明示しているユナイテッド・シネマ(グレーの座席)
なお劇場によっては全席分のチケットを販売しているところもあるようです。トラブルがあった場合に席替えを求められても「満席ですから」という理由でお断りはできますが、お客様の立場に立てば若干販売数が減ったとしてもやはり代替席は用意しておいたほうが良いでしょうね。チケットを購入されているお客様に安心して鑑賞していただくための保険のようなものです。
満席時の空席全てがハウスシートというわけではなく、購入しているのに来場されなかった、または来場に遅れているお客様の席ということも多いので、いずれにせよ指定席ならその席には移動しないほうが良いでしょう。トラブルの原因になるかもしれません…。いずれにせよお客様、劇場双方にとってハウスシートが使われないことが一番ですね。
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