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2006年8月24日 (木)

File.67 予告編と未公開シーン

映画本編の前に上映されるおなじみの予告編。映画館によっては予告編を上映しないこともありますが、たいてい数本の新作予告編が本編の前に上映されるのが一般的です。以前にご紹介したFile.25 予告編と特報File.26 予告編のスコアに引き続き、本日は再び予告編に関連する話題を映画の撮影・編集作業と軽くリンクさせながら取り上げようと思います。

映画の制作過程に編集と呼ばれる作業があります。ひとくちに編集といっても非常に幅広い種類の作業を指しますが、一般的に編集というときは撮影フィルムを切り貼りして一本のまとまった形の作品へ仕上げていく映像編集を意味します。

撮影のほうはストーリーの進行順に撮影するわけではなく、役者・スタッフのスケジュール、美術セット・衣装の準備やスタジオ/ロケの日程や天候、そして予算といった様々な要因に影響されるので、ストーリー展開とは全く異なる順序で進んでいくことが一般的。極端な例ではラストシークエンスからクランク・インすることもあり、役者も様々なシークエンスを個別に撮影していくので役作りや演技力といった役者としての能力が重要なのは言うまでもありません。脚本通りに撮影を進めていく順撮りをされる監督もいらっしゃいますが、予算とキャスティングディレクターらスタッフへの負担がかかる撮影方法ですね。

撮影されたフィルムは映画フィルム現像所へと送られて現像処理され、マスターネガ(原版)と呼ばれる世界にひとつのオリジナルネガとなります。撮影の際はひとつのカットに対してテイク(撮影回数)を重ねたり、別のキャメラから撮影するなどして複数のバージョンを撮影しておき、そのなかから完成意図に最も近いものが本編に使われます。
ネガの映像をコンピュータに取り込んだりラッシュと呼ばれる粗焼きを素材として、膨大な時間をかけて編集作業を行っていきます。
編集次第で作品の表現や意図は180度変わるほど緻密で難しい作業で、編集者のなかには「10年続けてやっと一人前」と言う方もいらっしゃいます。写真家アンセル・アダムスの言葉を借りるなら脚本・撮影ネガは楽譜、編集は演奏とも言えそうです。

さて、ここから予告編のお話に入ります。

予告編を制作するのに本編の完成を待っている時間的余裕は当然ながらないので、完成よりも以前に準備しておく必要があります。本編が完成するころには公開日も迫っているため、宣伝媒体である予告編の存在意義が無くなってしまうからです。
そこで
本編の編集と平行して予告編も同時進行で制作してしまうわけですが、このときに本編が完成していないと次のようなことが起こりえます。

予告編では観客の好奇心・関心を引くためネタバレにならない程度に作中の映像を組み合わせて表現していきますが、まだ本編が完成していない状態で作ると最終的に本編では使われずにお蔵入りになったシーンが予告に登場することがあるのです。つまり本来は本編で使う予定だったシーンが、編集の都合であえなくカット(ボツ)されてしまったのですね。
また先述のテイクに関連するものでは
本編とは違うテイクが予告編で使われていたり、映像は同じでもアフレコ(台詞音声の再録音)のバージョンが違っていたりと様々なパターンがあり注目してみているとおもしろいですよ。

このような例は頻繁にあるので注意深く観察しているとお目にかかることができます。予告編をしっかり観てから公開本編を観ると微妙に違うバージョンのシーンが登場したりてなぜか落ち着かない気分になったり…。
大作・話題作でも同様なことはよくあります。参考例では
『スター・ウォーズ エピソード1』(1999)の予告編で本編と微妙に違う場面があったり、『タイタニック』(1997)ではレオナルド・ディカプリオ演じるジャックがボディ・ガードを殴るシーンや、船内の上流階級旅客の姿など本編では観られないシーンを目にすることができます。

予告編は映画本編と同じように綿密なプランのもとに編集され、予告編制作会社が存在するほど専門性の高い仕事です。映画予告編はいわば映画のCM、公開時期の前後のみ観られる貴重な映像作品とも言え、本末転倒ですが本編よりも楽しめる予告も時々見受けられる気が…。
予告編は本編が公開されると目にする機会が激減してしまうだけに何度も鑑賞することは難しかったのですが、最近だとDVDの特典映像として収録されることも多くなりました。お手持ちのDVDソフトに予告編が収録されていたら、試しにご覧になってみてはいかがでしょうか。もしかしたらお気に入りの作品の見たことがない場面があるかもしれませんよ。

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コメント

予告編にのみ使われてる音楽もありますよね。その曲が気に入って観ても、本編では流れなかったり。

投稿: 足柄 | 2006年9月 3日 (日) 15時10分

足柄さんこんにちは。

ありますね、本編に登場しない音楽。以前の記事にも紹介した『シティ・オブ・エンジェル』などがそうでした。
音楽に騙されたような気分になる…かも?

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年9月 4日 (月) 22時57分

『シティ・オブ・エンジェル』
あの、トゥルッ トゥ~ル~ル~♪という感じのハミングみたいな歌声で始まる曲でしょうか。なんか覚えてる気がします。

投稿: 足柄 | 2006年9月 8日 (金) 22時44分

そうそう、それです!
レコード店ではサントラに「予告編の曲は収録されておりません」という注意書きが出ていたことを思い出します(*^。^*)

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年9月11日 (月) 20時18分

ボツになったシーンや、別バージョンのシーンが使われていることがあるというご説明を拝見して、やっぱりそうだったんだー!と納得しました。

こんにちは。たまたまこちらのサイトを発見して、たいへん興味深く読ませていただいております。

最近だと「パイレーツ・オブ・カリビアン」②と③にも本編とセリフが違うシーンがあって、首を捻っていたのですが、あれくらい超大作になると宣伝期間も公開のかなり前からになろうし、制作会社がお金持ちだから、別テイクをいっぱい撮って後で良いのを選ぶというのもありなんだろうなあと思いました。
でも、確かに予告編の方がよかったというシーンもあるので、ちょっと悲しい。

むか~し、「角川映画で一番面白いのは、予告編」というジョークがあったようですが、ジョークじゃなかったなあ…。
今見直すと、それなりに頑張ってるなと思うこともありますが、単に懐かしいだけかも知れません。

私も、シネコンに行くようになってから、映画ってこんなにいい状態で見ることも出来るんだと映画館を見直した口ですが、よろしければいつか、音響設備の違いについて、大雑把でいいですので(というより詳しい数値とか書かれても理解できないと思うので)、教えていただければ幸いです。

たとえば、THX、SDDS、SRD-EX等ですが、映画館でその音響設備を備えていても、上映される映画がその手法で撮影(?)されていなければ、意味がないとかそういうことはあるのでしょうか。

どうぞ宜しくお願い申し上げます。

投稿: かわうそ | 2007年6月24日 (日) 18時46分

補足です。
こちらの記事を読み進めたところ、もしかして私は、撮影方式と再生方式、映画館の内装設計に関わる音響設備と再生機械の性能、どれがデジタルでアナログなのか、とかをごっちゃにしているようです。(言葉がこれで合っているかも分りません。)

もし説明をしていただけるのであれば、りっぱなシロートに、初歩的な説明をお願いします。

私の住んでいる市では、最近駅前で複数の映画館を経営していた興業会社が、複合ビルを建てて、そこのワンフロアにシネコンを入れました。
駅前という立地条件のためか、平日昼間でもけっこう客が入っています。

「全スクリーンにより鮮明なミニパーフォレーションスクリーン
クリスティ・デジタル・システム社のDLPTMプロジェクター「CP-2000」を導入」
とあるのですが、これって、最近の動向からするとどの程度のレベルになるのでしょうか。
DLPは全館かどうかは分りません。

ビルに入っているテナントが、ファッション、レストラン共に高級ブランドばかりだし、駅前という立地上、デート・スポットという売りを押し出しているようです。
ということは、設備はある程度評価の定まった上級レベルのものを使い、最新方式を導入するといった冒険はしてないように思うのです。

元々この会社の映画館群は、地元サイトによると、画面が暗いとか映写の焦点が甘いとかで、映画ファンにはあまり評判がよくなかったようです。
今度の新装オープンでどうなったんだろうと、何回か観に行ったのですが、悪くはないと思う。思うんですが、立地条件が良いので、混み合うんですよね。
それで、前からよく行く郊外型シネコンに足を運んでしまうのです。THX認定館です。
音に関してはこちらの方が良いように思うんですが、映像は駅前の新館の方がくっきりしているかも知れない…。

長い書込みですみません。

投稿: かわうそ | 2007年6月24日 (日) 20時10分

かわうそさん、ご来訪ありがとうございます。ご質問はメールでお送りいただければ分かる範囲で個別回答させていただいておりますので、そちらもご利用ください。

>音響設備の違いについて、大雑把でいいで
>すので(というより詳しい数値とか書かれ
>ても理解できないと思うので)、教えてい
>ただければ幸いです。

同様のご要望を頂戴しております。いつになるかは分かりませんが音響設備についても記事にしようと思っています。音響方式、劇場規格、劇場構造、機材の仕組み、映写方式などご紹介できたら良いなと思っております。その際はなるべく平易な記述を心がけたいと思います。
当ブログは基本的にFile.1から順に読み進んでいただくことを前提にしていますので、新しい記事ほど用語説明を省いています。もし不明な点や分かりにくいところがありましたら遠慮なくご指摘ください。

>THX、SDDS、SRD-EX等ですが、
>映画館でその音響設備を備えていても、
>上映される映画がその手法で撮影(?)
>されていなければ、意味がないとかそうい
>うことはあるのでしょうか。

その通りです。SDDSやSRD-EXとは映画の音の記録方式(デジタル方式)なんです。作品によってこの方式はまちまちで、映画館にある機材もこれまたまちまちです。作品の録音方式と映画館の音響方式が一致する方法でしか再生できません。
たとえばSDDSとSRD-EXで音が記録されている映画があるとします。両方の再生機器を持っている映画館ならどちらの音響方式でも再生できます(どちらを選ぶかは映画館が決めます)が、どちらもなければこの方式では再生できません(アナログ音響での再生になります)。

>私の住んでいる市では、最近駅前で複数の
>映画館を経営していた興業会社が、
>複合ビルを建てて、そこのワンフロアに
>シネコンを入れました。

ミッドランドスクエアシネマでしょうか…?

>「全スクリーンにより鮮明なミニパ
>ーフォレーションスクリーン
>クリスティ・デジタル・システム社の
>DLPTMプロジェクター「CP-2000」を導入」
>とあるのですが、これって、最近の動向
>からするとどの程度のレベルになるのでしょうか。

このコピーは松竹系の劇場のものですね。最近のシネコンはどこも設備は似たようなものですよ。ミニパーフォレーションスクリーンとCP2000は機材的に立派なものですので心配いりません。

>設備はある程度評価の定まった上級レベル
>のものを使い、最新方式を導入すると
>いった冒険はしてないように思うのです。

繰り返しになりますが映画館の映写設備はどこも大して変わりません。ある程度のお決まりのセッティングがあるんです。ちょっと込み入ったお話になるので詳細は省きますが、新しいシネコンであればどこも最新方式と考えていただいて差し支えありません。
それ以上を目指すなら独自規格を構築するしかないです。実際に松竹系のシネコンは独自の素晴らしい劇場規格を実現していますし、ミッドランドスクエアシネマ(だと思うんですが…)は最新の設備に違いありません。

>前からよく行く郊外型シネコンに足を運んでしまうのです。THX認定館です。

ベイシティでしょうか…?

>音に関してはこちらの方が良いように思う
>んですが、映像は駅前の新館の方がくっき
>りしているかも知れない…。

音響と映像の再現性能はとてもデリケートです。最新最高の設備を入れても必ずしも良質な映像と音響を提供できるとは限りません。ここが映画館設備のおもしろいところです。そしてTHX認定だから良いということもありません。
設備やスペックに惑わされずに自分が好きな映画館を見つけるのが楽しい映画館ライフの近道かもしれませんね。

長くなったわりにたいした解説が出来ず申し訳ございません。また何かありましたらご質問お待ちしております。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年6月25日 (月) 02時39分

早速のご回答をありがとうございます!
個々の疑問についても丁寧に答えて下さって、本当にありがとうございます。

>ミッドランドスクエアシネマでしょうか…?
>ベイシティでしょうか…?

その通りです。さすが、業界関係者には分ってしまうものなんですね。もしかして、全国の新規に開館する映画館の情報を、漏らさず押さえていらっしゃるのでしょうか。

ミッドランドスクエアシネマの設備は信頼して大丈夫とのことで、安心しました。
あそこは、スタッフが、トイレ掃除等の清掃スタッフを除いて、男女とも全員黒スーツ着用です。(初めて行ったときは、ちょっとかしこまってしまいました)
椅子は全席革張りというのも売りで(私は布張りの方が感触が好きなのですが)、ターミナル駅の駅前の、ブランドショップの入ったビルのテナントということ、コンセッションも、ビール、ワインがドリンクメニューに当たり前に載っている等、「大人のための」映画館を目指したようです。

こちらの記事によると、シネコンが都心回帰をする傾向にあるそうですが、都心ならではの差別化を図っているのだなあと思います。

また何か分らないことがあったら、お訊きするかも知れませんが、そのときはどうぞ宜しくお願い申し上げます。
音響設備等についても、いずれご紹介下さるそうで、楽しみにしております。

投稿: かわうそ | 2007年6月26日 (火) 01時49分

かわうそさん、こんにちは。

>全国の新規に開館する映画館の情報を、漏らさず押さえていらっしゃるのでしょうか。

まさか…^^;
駅前のビルを新築してシネコン、付近にTHXとあったので名古屋だと認識しただけです。まるっきり当てずっぽうですよ。

>ミッドランドスクエアシネマの設備は信頼して大丈夫とのことで、安心しました。

映画館の設備は20年前と比較して本当に良くなりました。シネコンに限らず単館でも素晴らしい設備を持つところも増えていますね。喜ばしいことです。
良い設備を入れても品質が良質がどうかはまったく別問題です。設計や施工はもちろんのこと運用方法や技術レベルで相当のばらつきがあります。設備がノーマルレベルでも素晴らしい品質のところもあると思います。

ミッドランドスクエアシネマは行ったことがないので推論ですが上等な設備を有していることは間違いないですけど高品質かどうかは分かりません。実際に鑑賞してみないことには。オープン早々に派手なトラブルがあったと聞いていますのでそれを教訓に良いオペレーションをしているはずですね。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年6月26日 (火) 02時22分

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