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2006年10月24日 (火)

File.71 映画祭とフィルムの山

第19回東京国際映画祭が10月21日に開幕しました。ハリウッドを模したレッドカーペットを歩くゲストの姿が新聞やテレビで報道され、ご覧になられた方も多いことでしょう。今年は10月29日までの9日間に約300作品が上映される予定で、会場となる東急Bunkamura(東京都渋谷区)と六本木ヒルズ(東京都港区)は映画祭一色に染まります。

東京国際映画祭など映画祭に関する紹介記事というと、通常は出品作品の内容や上映スケジュールの紹介、現地レポートといった内容が大多数。
今回当サイトではそれらとは異なる方向、映画館の心臓部である「映写」の視点からご紹介したいと思います。華やかな映画祭の、縁の下の力持ち・映写の様子です。

映画祭が近づくと、上映会場となる映画館やホールに続々と上映プリントが配送されてきます。映画はデジタル映写やビデオ上映でもない限り、昔と変わらずフィルム映写なので配給会社から上映用プリントフィルムが劇場まで配送されてくるわけですね。

上映プリントは複数の巻(ロール)に分かれてコンテナに詰められて到着します。上映時間が2時間前後の映画の場合はだいたい6巻~8巻くらいに分かれていて、全部で何巻になるかは作品ごとに違います。上映時間の長い作品ほど巻の数も多くなります。
巻が分かれている状態では上映できないので、映写スタッフは上映ができる状態にするためプリントに手を入れます。このことを劇場では
「編集」と呼びます。編集作業の詳細については日を改めてご紹介しようと思います。


巻に分かれコンテナに入った状態のプリント

編集が終わると試写を行い、プリントの品質状態や編集作業にミスがないか念入りにチェックを行います参照 File.21 テスト試写これらの過程を経て上映に問題がないと判断されたプリントは映画祭当日まで出番待ちとなるわけです。
ここまでは通常の映画館業務と何ら変わりありません。新作公開前はどこの映画館も同様な作業を行っており、映写スタッフにとっては日常的業務です。

しかし、映画祭ともなれば通常業務とは決定的に異なることが1つあるのです。それは作品本数。

たとえば今回の東京国際映画祭では9日間で約300作品をわずか2会場(渋谷、六本木)で上映します。この期間中は編集済みの上映プリントと配送時のコンテナ(上記画像)を保管しておく場所が必要なわけですが、さすがにこれだけの数となると保管場所の確保は一苦労。セキュリティはもちろん作品を傷めないような環境を確保しなければいけません。場合によっては間に合わせで駐車場スペースを使うなんてことも…。

それと同時に大量の本数を編集作業するだけのスペースと人員も必須です。作品の編集は決まった手順と方法があって、映写機のモデルや設定によっても作業内容が変わるため誰でも最初からスムーズに行えるものではなく、ある程度の経験を要します。
編集作業には会場となる映画館の映写スタッフを総動員しますが、それでも
人手が足りないことがほとんど。近隣の映画館にスタッフの応援を依頼したり、チェーン展開のシネコンなどは他サイトから応援を呼び寄せるなどして対応することになります。しかし、人員はカバーできても編集作業に使う用具や編集架台が不足するので、複数の映画館にプリントを運び込んで編集後、再び会場に転送するなどテンヤワンヤな事態になります。

もちろん、先に述べたように編集後はチェックのために試写を行います。300本あれば最低でも300回試写をするということですね。映画祭の日が迫ると、映画館が営業を終了した深夜に映写スタッフは寝る時間を割いて試写業務に徹することになります。映写の仕事は地味そのものですが、映画祭など大きなイベントのときはこのように休む間もない毎日が続きます。

こうして苦労して準備を行い、映画祭の当日を迎えます。関係各位が奔走して開催に至る映画祭。映写スタッフは裏方なのでお客様の前には登場しませんが、おもてなしの心で業務にあたる、そうすることで他の大勢のスタッフと協力して観客の皆様に、よりお祭を楽しんでいただけるように思えます。そしてプリントの山に囲まれながら、映写スタッフの映画祭は始まります。

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コメント

月夜野さん、こんばんは。
いつも楽しく拝見させていただいてます。

映画祭、短期間にとてもたくさんの作品の上映があるので映写は
大変だろうなとは思っていましたが、想像以上のようですね。

ある意味、お祭りの裏方らしいといえばらしいのかもしれませんけど(笑)

投稿: マモラ | 2006年10月25日 (水) 20時23分

マモラさんこんにちは。

映画祭は通常興行と違って関係者は皆大忙しです。映写は案外ノンビリ♪というイメージをもたれがちですけど、映画祭の前後期間は戦場と化しますね(笑)。

フィルム受取→編集→置場所確保→試写→上映→バラシ→返送…。作品数が多いともう手に負えません!

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年10月25日 (水) 22時12分

月夜野さんの記事はいつも驚きの連続ですが、今回はことさらびっくりです。
でも考えてみると300本をこんな短期間で一気に上映するわけですから、試写だけでも凄いことになるんですねえ。
関東に住んでいた頃は東京国際映画祭の参加作品は必ず2、3本は見ていましたが、最近はすっかりご無沙汰になってしまいました。

投稿: TARO | 2006年10月26日 (木) 22時26分

TAROさんこんにちは。

映画祭の映写下準備はとにかく物量との戦いです。次から次とある作品の準備をしないといけません。
こういうイベントのときは六本木のように一台仕様(ノンリワインド)の映写機では大変なように思います…。

映画祭関連の映写記事は連載にしようかと思っていましたが、また日を改めてご紹介したいと思います。本番は本番でまた大変だったりするんですね、これが(笑)。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年10月27日 (金) 20時22分

こんにちわ。
いきなりごめんなさい。
実は、エディタっていうブログを登録して
自分の好きなジャンルのメディアをつくることができるツールがあって
僕は「映画」についてのメディアを作ろうと思うのですが、
ぜひ登録させていただけないでしょうか。
http://www.edita.jp/shimizu/
このサイトです。
まだ、ぜんぜんできてません。。。

もしOKでしたら、shimizu@aainc.co.jp
までご連絡していただけるとうれしいです。

よろしくお願いします!!
いきなりすみませんでした。

投稿: 清水 | 2006年10月29日 (日) 23時27分

清水さんご来訪ありがとうございます。

「エディタ」というブログのシステムが当方はよく分からないのですが、当サイトはリンクや内容の転載はご自由に行っていただいて結構ですので、お役に立てるものがございましたらどうぞお使いください。

サイトポリシーはhttp://eisha.cocolog-nifty.com/about.htmlに記載しておりますので一読いただけると幸いです。
なお掲載画像の転載は使用前にご面倒でもご一報ください。

その他ご不明な点はメールにてご連絡いただけたら幸いです。
ブログの充実をお祈りいたします。

投稿: 管理人:月夜野 | 2006年10月30日 (月) 20時09分

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