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2007年7月 1日 (日)

File.94 事故報告書

本日は映写スタッフにとって怖い対象、映写事故報告書についてご紹介します。

映写係のお仕事とは、お客様に対し快適で高品質な映画鑑賞環境を提供すること。そのために映写係は普段から劇場機材をメンテナンスして設備維持を行い、非常時のための対応シミュレーションで緊急事態に備えるなどの対策をとっています。こうした日々のメンテナンス、訓練の積み重ねが高品質・安全な映写業務の根幹となるのです。

映写事故は発生しないほうが良いと誰もが願っています。しかし予期せぬ映写機材トラブルや天変地異、緊急警報の鳴動、電力供給の寸断など不可避のアクシデントに見舞われることも実は珍しくありません。通常お客様が映写事故に遭遇する確率は非常に低いですが、映写係を務めていると1度や2度はこのような人的ミスに因らない映写事故を経験するものです(なぜかトラブルが多い劇場もありますけど)。
人的ミスは事故原因がその場で判明するので対応・復旧策をすぐに取れるのですが、突然の機械トラブルや天変地異などは原因の特定・復旧に時間がかかることが多いようです。

天変地異、いたずらによる非常警報鳴動等映画館に非がない原因による映写事故でもお客様にとってそれは関知することではなく、正常な映写が行えなかった時点でサービス提供に瑕疵があるので、原因はどうあれど映写担当には胸の痛む状況です。
このような不可避原因のトラブルでも説明すればご理解いただけるほど世の中甘くはありません…。映画館として映画をきちんと提供できなかった点は事実なので丁重に謝罪するしかありません。スタッフにとってはやり切れない思いでいっぱいとなります。

映写事故の定義については担当者によって見解が異なり決まっていません。確実に映写事故の範疇に入るのは映像や音響の明らかな不具合、上映開始時間の極端な遅延や一時中断と中止、本編中の窓違い(こまずれ)その他上映に支障のある不具合や状況が発生したときが該当します。その他の内容については現場で判断しているようです。

映写事故が発生したら理由の如何に関わらず映写事故報告書を作成するのが通例。いつ事故が発生し、どのような対応を行ったかを記録しておけば以後の運営の資料となり、後進の指導にも役立ちます。事故内容を精査すれば再発生を抑止することも可能です。

事故報告書の記入で重要なことは、映写スタッフが読んで事故当時の状況と時間経過、それによって発生した損失と対応方法を理解できるようにすること。事故発生直後に書くと気が動転していて正確な記述ができないことも考えられるので、気持ちが落ち着いてから作成したほうが良いでしょう。映写事故が発生すると映写係に相当な心身圧迫が生じるために記憶や時間感覚が曖昧になりがちなのです。

記述の基本は6W1Hです。
When(いつ)
事故発生時間と発生状況
Who(だれが)
事故発生時の人員配置と映写担当者
Where(どこで)
事故発生スクリーンナンバーと、機材・事故概要
What(なにを)
事故発生による影響
How(どのように)
対処と復旧方法
Why(なぜ)
事故原因
Whom(だれに)
今後のスタッフへの周知と今後の対応方針

小論文のTipsみたいになってきました(笑)。映写事故対応の間、お客様は状況が分からず困惑していることが多いので、映写係は迅速に処理することが大切です。そしてその時間経過を漏れなく記録しておけば対応の段取りも後々まで分かるので都合が良いです。また報告書とは別にレポートを作成して補足記述を行うこともあります。

時間経過が分かり対応の内容を事細かに記述していくのが基本となりますが、事故の渦中は復旧作業に専念して状況の記憶が曖昧になることもあります。そのため出来るだけ事故の際は映写室に複数の人員(他スクリーンの上映に必要な人員を除いて)を配置して状況記録を取っていくと事故報告書が作成しやすくなります。

映写事故報告書例
※この報告書はあくまで例です。劇場名、作品名、号数、内容等すべて架空のものです。記述内容も乱雑ですので参考例としてご覧ください。

複数のサイトを保有する映画館では事故の発生報告と事後事故報告書を本社に提出し、サイトの安全管理の指導資料に活用しています。そして系列サイトに事故報告書を配布して情報の共有を行い、今後の運営の参考として利用するなど映写教育用途に使用されています。
他サイトの事故は対岸の火事ではなく、明日はわが身として受け止めなければいけません。直後に同様の人的事故を起こしてしまうと情報共有の意味がありませんからね。

オープン直後のサイトだと不名誉にも事故報告書が量産されることもあるようです。最初は映写係も慣れていないので、経験があれば未然に防げたはずの事故が起こることもあって責任者の苦労が絶えない例もしばしば見受けられます。

停電や自然災害的要因など突発的な原因による映写事故を撲滅することはできません。事故から学び、活かすことで対応をスムーズにすることはできるので、映写係は事故報告書の情報を共有し、自己の技術に取り込むことで精進を続けながら業務を行っています。もし鑑賞中に映写事故に遭遇してもどうか暖かい目で見てあげてください。焦らすとさらにドツボにはまって事態が悪化することもよくありますので…。

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コメント

どうやらこちらにも、もう一店舗支店ができる・・らしいので、オープニングスタッフに移動の可能性もでてきました。
そうなった場合、まだなにも知らない新人へしっかり教えないといけません。
過去の報告書を読んでもらって、対応を知っておいてもらわないとですね。
あの警報アラームは怖いです。
予告の音でさえ勘違いしてビクビクしてます
(笑)
中越地震のときは、もうどうしようもなかったです。フイルムがプラッターから落ちなかった&映写機がズレなかったのが幸い、またすぐ再開できましたけど・・・。

投稿: はと | 2007年7月 1日 (日) 11時19分

地震はどうしようもないですね~
能登の地震のときは、かるくドーン!てのがあってぐらぐら横揺れしました。映写機よりもプリントよりもなにより五階の客席にいる子供客(プリキュアやってた)が心配でした。うちの小屋は築30年。いつ大地震で崩れてもおかしくない。。。。
しかし、自動の映写機はとまることもなく、泣く子もだれもおらず、数人の親がロビーで電話しているだけでした。
映画の力ってすばらしいとおもいました。

投稿: ざらめ | 2007年7月 1日 (日) 17時48分

はとさん、こんにちは。
オープニングスタッフとなると開店準備は寝る暇も無いので大変だと思いますが、スタートダッシュが今後の運営の成功に大きく関わっています。そのぶん遣り甲斐も大きいのではないでしょうか。
過去の事故報告を精査して今後に活かす良い機会でもありますね。映写は特に最初の学習がとても大切です。「フィルム愛護は我等の使命」と「完全映写をこころがける」ことを教えてあげてください!

ざらめさん、こんにちは。
地震は映画館にとって最も怖いですね。お客様の安全確保という点で…。能登の地震は揺れも大きかったと思うんですが大きな混乱もなかったようで本当に良かったですね。阪神淡路大震災がもし営業中に発生していたら…と思うとぞっとします。神戸の映画館はその教訓がきっと活かされているのでしょうね。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年7月 2日 (月) 09時57分

私は,一度だけ映写事故に遭遇(?)したことがあります。
映画本編が始まって10分くらいで,突然音声が聞こえなくなりました。
最初は映画の演出かと思ったのですが,ずっと無音状態が続いたので,観ている人たちもざわつきはじめました。
その後アナウンスが入り,予告編なしで最初から上映しなおすことになりました。
事故原因の説明はありませんでしたが,次回の上映時間もずれたようでしたし,事故があると大変そうですね。

投稿: taki | 2007年7月 6日 (金) 16時59分

takiさん、こんにちは。

私は映画館に出かける回数は少ないほうではないのになぜか映写事故に遭遇することは滅多にありません。運が良いのでしょうか。

音声トラブルですか…。時々ありますね。映写室に誰かいないと気づけないトラブルです。

トラブルの対処するためにもタイムスケジュールの組み方は重要なポジションを占めています。原因究明できるか、遅れを取り戻せるかはスケジュールにかかっています。最近、危険なスケジュールで上映している映画館をチラホラ見かけます。事故が発生したらやばいでしょう…。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年7月 7日 (土) 07時18分

最近見ていなかったので、最新のところにコメントすればいいのですが、関係のあるところにコメントさせていただきます。
実は、今年になって東映系のシネコンでシステム障害に2回もあってしまいました、しかも日曜日の混んでるときに限って、
1回は朝一番にはチケットが指定で取れましたが、時間があるので他のを見ようとしたらシステム事故、もう一回は朝からシステム事故、前売り分先入れの自由席になりました。
両方ともですがチケットは手書き、県民性があるのかその日にチケットを購入される方が多くてチケット売り場は大行列、入場待ちも行列、シネコンの弱点がでていました。
従業員の方ご苦労様といいたいところです。
PCシステム関係者として修理をしたかったほどです。

投稿: 迷画まにあ | 2007年10月13日 (土) 15時03分

迷画まにあさん、こんにちは。

座席指定・定員入替制が主流となってからは発券管理や着券処理が非常に効率化されました。しかし相手は機械、時には不調になることもあります(人的・機器的含めて)。こうなると現場ではお手上げですからSEさんに委ねるしかないでしょう。やはりシステムの堅牢性は重視したいものです。

発券設備ならまだいいのですが、停電や雷の過電流などで映写機器がダメージを受けると大変な事態になります。電子機器は素人にはブラックボックスなので万が一の不良には弱るところです。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年10月13日 (土) 20時16分

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