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2007年12月 1日 (土)

File.102 予告と音響

管理人多忙のため記事更新が滞っております。楽しみにしていただいている方にはご迷惑をおかけいたしますが何卒ご容赦ください。気長にお待ちいただきますようお願い申し上げます。


さて、今日は久しぶりに音響のお話をしようと思います。以前にご紹介した映画館設備マニアの記事の続きです。


ドルビー・デジタルの登場

映画館の音響設備の拡充に伴って、映画の音響にこだわる方が増えているのは前の記事でお話した通り。その火付け役となったのは劇場用デジタル音響システムのドルビー・デジタル(SRD)の登場に他なりません。
それまでもドルビー・ステレオ(Dolby A-Type)ドルビー・スペクトラル・レコーディング(Dolby SR)などの音響システムで定評のあったドルビー・ラボラトリーズが開発したこの方式によって、映画の音は従来のアナログ光学録音と比較して、音楽CD相当まで向上したと言われています。


映画館ではおなじみ、ドルビーのダブルDマーク

ドルビー・デジタルの発表は1992年。翌年に最初の国内シネコンであるワーナー・マイカル・シネマズ海老名が映画館では日本初となるTHXシアターにドルビー・デジタル、デジタル・シアター・システム(dts)、ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド(SDDS)を引っさげて華々しくデビューしました。

WMC海老名7番THXスクリーンでデジタル音響システムを体感し映画音響の世界に引きずり込まれていった人は数知れず・・・、管理人もその一人です。『プライベート・ライアン』の凄絶なサウンド、『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』のポッドレースシークエンスの360度サラウンドは、マニアの間では語り草になっていますね。その後はデジタル音響システムを標準装備したシネコンが当たり前となり、多くの人が気軽に高音質を楽しめるようになりました。

ドルビー・デジタルの音声方式、特性、性能など小難しい話はまたの機会とさせていただき、今日は関連して予告編の音声と映画館の音響性能について簡単に触れてみようと思います。


マニアと映画館の音響

映画館設備マニアは映画本編のサウンドを聴いて作品と映画館の音質・音響を判断するのが通常です。デジタル音響が当たり前になった現在ではアナログ方式(ドルビーSR、dtsステレオ等)には興味のない方も多いようで、デジタル録音の作品のほうが一般的には音響評価の対象となりやすい印象を受けます。

しかし本編での評価には落とし穴があります。映画の本編でサウンドを評価する場合、複数回同じ作品を鑑賞しないと比較評価ができないので、音響の優劣が作品の録音品質によるものなのか、劇場性能によるものなのかが判別しにくいのです。
例で言うなら
上質の音響性能の映画館で録音品質の良くない映画を鑑賞した際に、音の悪い原因が映画館にあると誤った評価をしてしまうことがあるんですね。当然、この逆のパターンもあり得ます。

初めて訪れた映画館で初めて見る作品だと、音響が悪いなと感じた場合に作品と劇場のどちらに原因が多くあるのかを分析するのは至難の業です。現在の映画館の多くは映画館の基本的な音響設計に則って建築されていますが、実際に再生される音は内装材の種類や劇場の形状のほか音響設備のチューニング等の影響で実に様々です。つまりは同じ映画でも映画館によって音響や聴こえ方が異なってくるのです。

音響の専門家でもない限りは、これらの微妙な差を本編の鑑賞のみで評価分析することは大変難しいように思います。マニアが各個人の嗜好を物差しとして評価するぶんにはあまり影響はありませんが、純粋に映画館の音響性能を客観的に推し量りたい場合には厄介な問題です。


予告は音響性能の物差し

では作品の録音の影響をなるべく受けずに映画館の音を判断する簡便な方法はあるのでしょうか。おすすめなのが敢えて本編は音響評価の参考にとどめておいて、予告編で映画館を評価する方法です。

以前はアナログ録音が多かった予告編も現在はデジタル録音が主流となり、シネコンで上映される予告編のほとんどがドルビー・デジタルで記録されています。デジタル音声はアナログ音声で再生することもでき、予告編をアナログとデジタルのどちらで上映するかは映画館の判断によりますが、デジタル録音のものはデジタル再生されることが多いです(予告はアナログで上映する方針の映画館もあるようです)。
予告編のデジタル音響化によって、本編に勝るとも劣らない高音質のものも珍しくなくなりました。最近だと『トランスフォーマー』の予告編が重低音を効かせた迫力あるものになっていましたね。

予告編での音響評価をおすすめする理由は、初めて訪れた映画館でもその場で比較評価ができるからです。予告は作品のジャンルや観客のメインターゲット層に合わせて映画館がチョイスして上映します。本編前の予告編は様々な配給会社の作品がランダムに組み合わされているのです。

予告編といえども作品が異なれば当然音作りも録音も全く違うのは本編と同じ。そのような違う条件のものが立て続けに上映されるので、作品による録音品質のばらつきをなかば排除して映画館の特性判断に集中することができるのです。
今までの経験では予告編で映画館音響を評価しているマニアの方はあまりいらっしゃいませんが、初めて訪れた映画館でも客観的に判断しやすい方法なので個人的におすすめしています。


チェックポイントは?

音響の判断基準は個人差があるのでいわゆる「正解」はないと思いますが、この方法ならではの判断基準として「予告編ごとの録音品質・個性・特性を正確に再生できる再現力」のチェックが挙げられます。
モニター力の優れた映画館(映画の録音品質をデフォルメせずにさらけ出せる、座席位置による音質の差が少ない、音の情報量や解像力が高い、微小な音も埋もれずに描き分け聴き取れるなど)だとそれぞれの予告編が全く違う音に聴こえ、予告編が変わるごとにその違いが新鮮に感じられるのです。

映画館の設備が向上した現在でもこのような聴こえ方をする映画館は非常に少なく、ごく限られた映画館でのみ体感できるように感じます。多くの映画館では予告ごとの音響の差異はあまり感じられないように思いますし、これを意識せずに漠然と聴いている方が多いと思うのですがいかがでしょうか?


予告を描き分ける映画館は数少ない

予告編の音を描き分けることは、ソース(音信号)の個性を自然に引き出しているとも言えます。音響設備のメンテナンスと調整、基本となる音響性能や機材性能が良くなければ実現できません。一部の試写室などはこの性能が非常に優れており、ちょっとしたノイズやアラまではっきりと再生されてしまいます。これが実感できる箱は予告編の音を聴いただけでもひとあじ違いますから本編の音も有意義にチェックできますね。

残念なことに予告編の音質差がはっきりと分かるような映画館は多くありません。世界的な劇場規格のTHX認定館でも少数です。なので予告編からひとあじ違うと感じられる映画館は注目する価値はあるでしょう。
ひとあじというのは重低音が凄いとかサラウンド感があるとかでは決してなく、前述のようにソースの再現力と正確性に優れていることを指しています。迫力ある重低音や強いサラウンド感など特定の特性が際立っている映画館は、経験上概して正確性は高くないことが多いと個人的に思います。

いずれにしても映画館は映画を見るところなので音を楽しみつつも、やはり映画を心から楽しみたいもの。音ばかりに集中して作品は上の空にならないように気をつけたいですね。

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コメント

月夜野さん こんにちわ。 お邪魔致します。
 
私もWMC海老名でSW・EP1を鑑賞しました。 セブルバのエンジン音が強烈だったのを覚えています。

予告のフィルムは作品によって記録されている音量レベルに違いがあるのでしょうか? 
DVDやテープなんかはソフトによって音量レベルに差がありますよね。
初歩的な質問ですみません(苦笑)

>いずれにしても映画館は映画を見るところなので音を楽しみつつも、やはり映画を心から楽しみたいもの。

同感です。 一部のマニアさんのお話を聞いていると何をしに映画館に行っているのか疑問に思うことが多々あります。 
純粋に映画を楽しむ気持ちを忘れてはダメだと私も思います。


投稿: ひらりん | 2007年12月16日 (日) 13時03分

ひらりんさん、こんにちは。
お返事が遅くなって申し訳ございません。

WMC海老名7番のポッドレースは本当に大迫力でしたね。私はハットとビブ・フォーチュナの登場にときめいていましたけど^^;

>予告のフィルムは作品によって記録されて
>いる音量レベルに違いがあるのでしょうか? 

全ての予告編というわけではありませんが
メジャーなものは予告編等音量適正化委員会によって指針が定められています。これによって予告編のアタマからケツまでの音量を平均化して、バランスを保つようになっています。ダイナミックレンジは映画にとって重要なので最大音量を制限するわけではありません。それでも本編より予告編はいまなお音は大きいです。詳しいことは委員会のサイトをご覧ください。
http://www.mpte.jp/html/trailer/

マニアの方には映画よりも映画館が楽しみという方もいらっしゃるので、それはそれで楽しみ方としては有りかもしれませんね。自分はなるべく映画も楽しみたいと思っています。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年12月27日 (木) 18時40分

月夜野さん こんばんわ
お返事ありがとうございます。

そういった指針があったんですね。
しかも委員会まであるとは・・・。
私の頭の中に豆知識としてインプットさせて頂きます

これからも色々と質問をさせて頂きますが宜しくお願い致します。

投稿: ひらりん | 2007年12月28日 (金) 22時03分

やっぱり年々大きくなる音量は業界でも問題になっていたということなんでしょう。デジタル音響によってさらなるS/N比とダイナミックレンジの向上で容易に大音量が出せるようになりました。あまりに予告編の音量が大きいと本編よりも目立ってしまうのでそこをうまく帳尻合わせをしたという印象です。

投稿: 管理人:月夜野 | 2007年12月28日 (金) 23時34分

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