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2008年3月20日 (木)

File.107 WMC東岸和田メモリアル 3

ワーナー・マイカル・シネマズ東岸和田閉館特集の三回目です。
東京と大阪間の日帰り遠征行程のため、1作品だけ見てとんぼ返りすることになりました。WMC東岸和田のメインスクリーンである5番THXスクリーン(定員476名)の様子をご紹介しようと思います。




WMC東岸和田メモリアル Vol.3




5番スクリーンの入口
コリドールの最奥部にある5番スクリーンはWMC東岸和田で最大の定員数476名を有するメインスクリーンです。出入口はこの後方扉のみ(非常口除く)で4枚扉の広い間口を有しています。
二重扉や回折導線構造にしない代わりに出入口付近にスペースを設け、側壁開口で場内への光の侵入を防いでいる細かな配慮に感心します。これはミニシアターや古い映画館で見かける形態でシネコンでは珍しいです。前方からスロープ形式で入退場するシネコンでは考えらない構造です。




THX認定を表すサインパネル
ここは日本で3番目に認定を受けた歴史あるスクリーンです。入口の電光タイプのシネマプラークがTHX認定劇場であることを誇らしげに主張しています。

WMC東岸和田が認定された当時のTHXが、ルーカス・フィルムの一部門「LUCASFILM LTD,THX Division」であったことが読み取れますね。現在のTHXはルーカス・フィルムからは分離して資本関係を解消しているために、現行のシネマプラークにはLUCASFILMの文言は入りません。残念なことにこれが国内興行会社のTHX離れの決定打となったのです。

上側にある音響フォーマット表示はWMCオリジナルのサービスです。作品ごとの上映フォーマットを入口で明示してあり音響マニアには嬉しいですね。この表示はドルビー・デジタル(SRD)を表しています。





最後列から見た劇場内
最初にこの劇場を訪れたときの驚きは今も忘れられません。完全なスタジアム形式を用いて大きな劇場でも見やすい視野を確保できることを見事に証明し、欧米サイズのゆったりとしたシートに腰を沈めてTHXを体感できたのです。
設計技術の進歩した現在見ると特徴のある場内ではありませんが、陳腐さを感じるところがないのは素晴らしいと思います。15年前にこれほどの劇場を造り上げた設計・施工各位の努力に敬意を表したいと思います。1993年当時はこんな高規格の劇場は他にはなかったのです。映画館に新時代の到来を告げた名箱と言えるでしょう。





スクリーン前からの眺め
476席の定員のわりにはコンパクトな印象を受けます。天井高や左右梁の構造など視覚的にそう見えるようです。構造はWMC海老名7番スクリーンを一回り小さくした印象で、さすがに同時期オープンだけあってよく似ています。海老名は劇場中央に通路がありド真ん中には座れないのですが、こちらは左右に通路を4本通して中央通路を排しています。映写窓は小さな窓が2ヶ所開口し天井高の限界の位置にありますね。





劇場中間部から後方を望む
フィゲラス社製のシートがブロックごとに角度をつけて配置されています。座席は遠くスペインから輸入されました。大きめな欧米サイズでドリンクホルダーを装備した座席は今では当たり前となっていますが、当時は驚きをもって迎えられました。
画像では分かりにくいかもしれませんが、客席に急角度の段差が設けられています。天井高とスクリーン位置を勘案したうえでの角度と思われますが、スクリーンの位置が低めなためこれでもやや足りないくらいです。そのため映写窓の設置位置もぎりぎりまで高い位置に設計されています。縦方向を圧縮したような形状なので少し窮屈にも見えますね。





当時は観客の度肝を抜くサイズでした
湾曲スクリーンを採用し、大画面の魅力を余すところなく伝えてきてくれました。スクリーンサイズは6.40m×14.94m。開館当時は定員700~1,000人超の大劇場で導入される常識外れの超特大幕でした。実寸は定員574名の海老名7番よりは多少小さめですが、定員数で考えれば東岸和田のほうが割合として大きなサイズを入れていることになります。
スクリーン周りのカーテンはくたびれた様子で近くで見ると痛々しかったです。とくに下部一文字幕のほころびは激しいものでした。

注目なのはオレンジ色の幕。これ、電動式スクリーンカーテンです。シネコンでスクリーンカーテンを備えているところは非常に数少ないので貴重な存在でした。残念ながら今回は開閉することもなくスクリーンにはカラースライドが投影されています。デジタルサウンド黎明期にdtsを備えた最先端の映画館でした。メインスクリーンでありながらステージはありません。





中央通路付近
劇場の中央部に通路があり、2つのブロックに分断されるような構造になっています。大劇場でよく見る造りです。





側壁構造
WMC東岸和田の劇場は側壁仕上をグラスウール充填+ドレープカーテン包みで全スクリーンを施工しています。最近のシネコンはWMCも含めて、グラスウール化粧板ですっきりと覆うことが多いです。東岸和田で使われているようなドレープカーテンは吸音面積を増加させるのと同時に壁面に視覚的変化を付けられるのが利点です。海外のシネコンでよく見かけますね。

腰壁は青色の壁紙が使われ吸音設備はありません。ここに吸音構造を設けないのは汚れや破損に対する耐性を持たせると同時に、
あえて客席側にアコースティック(残響)を反射させて音響効果を高める目的があります。映画館の設計セオリーで重要な役割を持つ吸音設計、しかし良い音響のためには吸音するだけではダメなんです。





特徴的な構造を備えた映写室外壁
ドレープカーテン側壁と共に特徴的だったのがこのリア壁。かまぼこ状の吸音拡散体をずらりと並べて、その間にサラウンドスピーカーJBL8330が10台も設置されていて壮観です。
映写室外壁は劇場の音響性能を左右する非常に重要な場所。シネプレックスのHDCSや東宝関西興行のTHASなどでリア壁面に特殊吸音材を採用したり、新宿バルト9のメインスクリーンが東岸和田と同様な造りになっているなど、さまざまな工夫を凝らすことで品質が変化する部分です。

THX認定をクリアするにはリア壁面を確実に吸音・遮音することが条件で、設計が悪いと台詞にエコーがかかったりフロントの音声に濁りが生じるといった悪影響が顕著に出てきます。認定基準のひとつである暗騒音NC-30をクリアするために遮音設計も重要ですね。

梁の部分は空調機構のようで株式会社IMAGICAの試写室、立川シネマシティのCITY2 THXを連想させます。梁は吸音処理をしておらず音声を反響させる役割を持っているように感じられました。実際にこれら壁面の効果を鑑賞の際に感じることができたので、連載最終回で少し触れてみようと思います。





劇場最後列からの俯瞰
当サイトを愛読してくださっている方には見覚えのある雰囲気かもしれません。そう、品川と軽井沢のIMAXシアターによく似ていますよね。 それだけ客席が急角度で設計されていることがこの画像だとよく分かります。スクリーンを限界まで高く設置して客席の段差を多めにとることにより前の人の頭部が画面に被らないように配慮されているのですが、それでもなお角度不足は否めません。この劇場最大の欠点と言えます。

また幕間の場内照度がたいへん暗いのが気になりました。画像を見ていただくと分かる通り後方のライトしか点灯していないのです。実際の場内の明るさはこれら全ての画像よりも格段に暗くてスクリーン前などは真っ暗でピントを合わせることができず、レンズの距離目盛を使用したほどです。
WMC東岸和田場内は画像ほど明るくなく、撮影時に露出補正をかけて+3EV相当明るめに撮影していることをご承知おきください。





再び入口前
最後列の後ろ側にはこのようなスペースが用意されています。上部のテラス部分が映写室です。冒頭でも触れましたがこのスペースのおかげで途中入場の際も光が差し込むことがなく、回折構造やスロープも不要で合理的です。スロープ構造でありながら光漏れのある劇場が多いなかで評価できる設計です。ミニシアターや古い劇場の一部にこのようなスペースが散見されますがシネコンでは珍しく、またこれだけの広さは他では見たことがありません。
天井の高さをさらに取れて映写室を後方にセットバックできていれば、ここも客席が設置されていたことでしょう。フリースペースにしたのは正解だと思います。





客席はまばら…
サンクスキャンペーン1,000興行でしたが動員は多くなく空席が目立っていました。
こうして振り返ってみると現行WMCの緑色×黄色の内装よりもシックで大人っぽい色彩設計になっていますね。壁面の橙色の間接照明も消灯していて残念な限りです。
このような構造はフラットな壁面に変化をつけ音響へ効果的に作用します。設計時にそこまで考えてあったかは分かりませんが、この劇場はTHXとしては豊かな残響成分を持つ箱で独特の心地よさがあったことは事実です。目立った個性がない半面で豊かな響きが空間を満たすところがこの5番THXの持ち味だったと思います。

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コメント

月夜野さん、お久しぶりです。
東岸和田メモリアルも3回目ですね。楽しく拝見させていただいてます。
姉妹館であるWMC海老名は自宅の近所にあります。東岸和田へはシネコン黎明期を代表する映画館としていつかは行ってみいと思いつつ結局訪れることはありませんでした。記事が進むにつれ閉館前に無理してでも行っておけば良かったと後悔の念が大きくなるばかりです。
5番スクリーンの後方入口やフリースペースは非常に珍しいですね。座席も急傾斜ですし海老名7番スクリーンに似ていると聞いていましたが予想外に異なる部分が多くとても驚きです。

投稿: マモラ | 2008年3月21日 (金) 00時45分

マモラさん、こんにちは。お久しぶりです。

海老名7番と同時建設でありながら結構違うところがありますね。デザインはよく似ていますが細かい設計はだいぶ印象を異にします。

自分は最後に東岸和田5番を訪れることができて幸せでした。映像も音響もまだまだ通用するだけの品質と思えたので。

願わくば姉妹劇場の海老名に末永く頑張っていただきたいです。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年3月22日 (土) 06時17分

こんにちは、はじめまして。
いつも楽しく拝見させて頂いています。
私は現在38歳の無職です。
早速ですが質問があります。
TOHOのシネコンで映写のバイトしてみようかなと考えているところです。
前職では機械のメンテナンスの仕事をしていたので機械いじりは好きなのですが、
映写機なんて初めてなので映写スタッフとしてやっていけるか不安を感じています。
映写スタッフは若い人ばかりなのでしょうか?
それと全くの素人でも大丈夫でしょうか?

もうひとつ質問です。
今映画館の設備のホームページを作成中なのですが
ネットで映写機のことを色々調べてレンズ前でシャッターが開いたときはフィルムは止まってシャッターが閉じてフィルムは動くといった仕組み等はわかったのですが
映写されている写真の音声は数コマ前に記録されているということですが、
正確には何コマ前に記録されているのでしょうか?

勝手な質問ばかりで申し訳ありませんが良きアドバイスと回答をお願いします。

投稿: タマゴン | 2008年3月26日 (水) 16時11分

タマゴンさん、ご来訪ありがとうございます。
熱心に勉強されているようなので業務に就かれたら活躍されることと思います。

TOHOシネマズさんで勤務されたいということですね。結論から言って若いひと、とくに学生が多いです。無職・フリーターは勤務できる時間や日数が多いので重宝されますが、年齢的には30歳前後がボーダーとなるでしょう。支配人でも40歳前の人が大勢いるので年齢的には厳しいものはあると思います。TOHOシネマズになる前の大都市ブロック(有楽町とか梅田とか)は学生までしか採用しないという決まりもあったんです。

お近くにTOHOシネマズさん以外の映画館があればそちらも考慮されてみてはいかがでしょうか。シネコン・単館問わずに受験するくらいでいないと難しいかもしれません。

業務そのものは未経験でも大丈夫です。誰でもはじめは素人ですから心配はいりません。自分で考え創意工夫をし、お客様の身になって向上できる人はすぐに良い仕事ができるようになりますよ。

音は映像よりも20コマ先に記録されています。プリントでは基準としてこうなっていますが実際の映写ではディレイ調整をするのであまり意識する必要はありません。ただしフィルムを編集する際に必ず頭に入れておかないと音の出だしを犠牲にしてしまうので覚えておいてください。いままでこれを知らずに切られて泣いている作品を何度も見てきました。

当サイトでは記事とは関連のないコメントはお断りしておりますので質問はメールフォームからお願いいたします。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年3月26日 (水) 19時14分

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