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2008年5月13日 (火)

File.110 爆音映画祭

「映画は映画館で見るのが好き。それも大音響で」という方が増えています。そんな方のために今日は吉祥寺バウスシアター(東京都武蔵野市)で開催される爆音映画祭についてお話しようと思います。


音響技術の向上と大音量


録音技術と上映音響設備の向上により映画館の上映音量はこの数年で確実に大きくなりました。大きな要因として音響機材(スピーカーやパワーアンプ等)の高能率化と、音声フォーマットのデジタル化が挙げられます。1992年に劇場用音響システムとして発表されたドルビー・デジタルの登場で映画の音は録音から再生までをデジタル信号で扱えるようになりました。従来のアナログ音声より幅広いダイナミックレンジ(最小信号から最大信号のふり幅のこと)とCD並みの音声品質を活かし、迫力のある音量での上映を多くの映画館で行えるようになったのです。

大きな音量と言っても通常興行においては当然ながら常識的な範囲があります。映画館は老若男女問わず様々なお客様が来場される公共施設ですから映写担当の独断で「爆音にしてやる!」なんてことはできません。音量の感じ方は個人差が大きいために上映の際は音量に注意を払って決定する必要があるんですね。映写係も業務試写では音声に意識を集中させて最適な音量を常に意識する必要があります。作品の客層や性質にもよりますがお客様から苦情を頂戴するような大音量と、表現意図を無視した設定は基本的にNGというわけです。

映画の音は映画館において規定のレベルで再生されることを前提として制作されていて、作品や劇場の特性に合わせた適正音量が存在します。この規定レベルに沿った音量が最適な音量となり、誤差が大きいほど音の再現性が損なわれていきます。適正音量がどのくらいのレベルかと言うのは音響設備を調整する際の試験音を聞くことなどで養うことが可能ですが、ほとんどの映画館は映写係の感じ方に委ねられていることが多いようです。映画の規定音量については別の機会に言及しようと思います。


爆音問題


お話しを元に戻します。
では規定レベルをはるかに上回る、いわゆる爆音で上映を行うとどのようなことが起きるでしょうか…?

ええ、様々な問題が発生すると思います。
まずお客様から苦情を頂きます。規定レベルでも音が大きいと感じられるお客様はいらっしゃるので爆音になれば結果は目に見えています。設備面でもスピーカーの破損につながったり、隣接スクリーンや近隣への騒音を招く恐れがあります。作品も普通の台詞が怒鳴り声のように大きくなって不自然に聴こえるでしょう。音が歪んだり割れたりして適正な再生が難しくなり、音の正確性も損なわれてしまいます。基本的に爆音での上映はそれに耐えられるだけの音響設備・構造設計と観客の許容がなければ難しいですね。

こういった様々な理由により映画館で爆音を体験する機会はありません。大音量が好きな方には物足りないと思うこともあるかもしれませんが、映画の音作りが爆音を想定していない以上は仕方がありません。


そこで爆音映画祭!


そこで注目したいのが吉祥寺バウスシアターで2008年5月17(土)~24日(土)にわたって開催される爆音映画祭です。2004年に『クンドゥン』(1997年)上映で初披露されて以来コアなファンを持つ爆音上映がついに爆音映画祭として終日プログラムで登場します。このような企画上映として枠を設けることができれば思う存分に爆音を体感することができますね。

吉祥寺バウスシアターは芝居小屋やライブ会場として使用されてきた名残で音響調整ミキサー機材を保有しており、上映スピーカーもシネマ用とは異なるCOMMUNITY社製PA用スピーカーが使われます(ライトおよびレフトスピーカー)。
爆音というのは単に音量を上げれば実現できるものではなく、熟練者による調整と音作りを経てはじめて実現できるもの。吉祥寺バウスシアターの爆音上映では毎回音響調整作業を行い、手間をかけて音を作っているそうです。前述の通り爆音上映を行うための環境を整えているからこそできる芸当と言えるでしょう。

具体的にはL・RチャンネルにPAスピーカーを4発×2とスクリーン裏のCチャンネル4発をバイアンプ接続でドライブ。映画再生と言うよりはロックコンサートに対応できるパワフルな布陣です。音声信号は映写機から後のBチェーンにミキサーとブースターをかまして細部まで音作りを行い観客席まで届けられます。単純に音量を上げるだけの爆音騒音上映とは違い、上映者の解釈・意図を交えた音響設計にも注目です。

一方で映画館の音響設計や調整は、様々な映画を無難に正確に再生することを目的にチューニングされ変更することはありません。映画の音を録音するダビングステージと映画館の音環境を整合させることで正確な再生が行えるように設計されるため、映画に合わせて調整することはあまりないのです。
映画館で多様な再生に対応する例としてはユナイテッド・シネマ豊洲のAFC、CINEMA TWOのKicリアルサウンド、ベッセルおおちのDCS、MOVIXの一部サイトにある音響調整システムなどが挙げられます。日比谷みゆき座でイベント的に行われたオペラシアター・リアルサウンドもイコライザー調整で音場を創成する試みとして良い例です。CINEMA TWOは映画館としては異色のPA寄りなセッティングが見受けられます。

映画館で普段上映されている音量はやや大きめな場合で平均85dB程度。生活環境で例えると走行中の電車・バス車内に相当します。爆音映画祭ではこのレベルのおよそ4倍相当、自動車の警笛や鉄道のガード直下並かそれ以上の大音量で上映が行われます。このような大音量を映画館で体験することはできません。前述の通り映画館の音響機材は世界的な統一基準でセッティングされていることが多く、音の調整をしたりチャンネルごとの音量を変えることは基本的に行いません。THXの映画館では設定を変えて上映するのはNGとなります。

爆音映画祭は通常の映画鑑賞とはまったく違う鑑賞方法を提示する意欲的な試みだと思います。映画制作者が作った音に爆音という新たなエレメントを吹き込み、スタッフの解釈を通した爆音に身を委ねるという鑑賞方法はひとつの上映スタイルとして画期的な形態ではないでしょうか。溢れ出す大音量とスクリーンから今まで見えてこなかったもの、聞こえなかった音が発見できるような気がします。

注目の作品は22日(木)13:30~『ロスト・ハイウェイ』と16:10~『プライベート・ライアン』。『ロスト・ハイウェイ』は鬼才デヴィッド・リンチ監督が誘う不可解で不条理なストーリーが秀逸で冒頭からデヴィッド・ボウイの楽曲で疾走する怪作。リンチ監督の作品は録音・ミキシング共に素晴らしく、5・1chをこれだけ効果的に使いこなせる監督は少ないと思います。電話のベルやフレッド家の低音ノイズがどう再現されるか聴きどころ。フレッドの変身シーンの多重ミックス音とマリリン・マンソンのヴォーカルにも注目でしょうか。
『プライベート・ライアン』は説明不要でしょう。アカデミー賞音響賞と音響編集賞をダブル受賞したマルチチャンネルの見本市のような派手音響が味わえます。爆音でオマハビーチの狂気が再現されると思うとゾクゾクします。
戦闘シーンの壮絶なサウンドばかり注目される映画ですが、爆音上映で戦場の静寂や夜間シーンとエディット・ピアフがどのように表現されるか楽しみですね。この2作品は私もぜひ鑑賞したいと思っております。

爆音映画祭は映画の新たな楽しみ方を提示してくれるきっかけになるかもしれません。今後も映画祭が定着して開催されるように、成功をお祈りしたいと思います。

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コメント

月夜野さんこんばんわ。

爆音上映も遂に映画祭になるまでになったんですね。
私は2005年に「エスケープ・フロム・LA」で爆音体験しました。
冒頭のLA大地震のシーンから大興奮したのを今でもハッキリと覚えています。
昔懐かしい「センサラウンド方式」を疑似体験出来るのではないでしょうか。
私も22日のプライベートライアンを何とか見に行こうと画策しております。
あの戦車のキャタピラ音の戦慄を再び味わうことが出来るのか・・・とても楽しみです。

投稿: ひらりん | 2008年5月14日 (水) 22時29分

ひらりんさん、こんにちは。

センサラウンド方式ですか(笑)。もう映画館では使われなくなってしまいましたね。あれは可聴域を下回る再生で擬似的な振動を起こす装置だったので通常の映画では動作しませんが爆音映画祭だと揺れは体感できるかもしれませんね。『スター・ウォーズ エピソード4』なら体感できるかも。

『プライベート・ライアン』は箱の性能ありきのサウンド、しかも規定音量を厳守することが前提の映画なのでどうなるか分かりませんが楽しみですよね。個人的にはTHXトレーラーの爆音上映を見てみたいです…。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年5月15日 (木) 09時15分

不特定多数を相手にするサービス業にはつきものの悩みですが 全てのお客様を平等に満足させることは難しいですよね。
こちらはこの音響で素晴らしい映画を提供したいのに 人によっては迫力不足、人によってはうるさく感じる。
本当にいい環境で綿密に調整された爆音は どんなに大音量でもうるさくは感じないはずなのですが 
「子供が怖がるので音を落としてください」
なんてクレームもあったりして ここは映画館なのになぁ・・・と不服に思いながらも仕方なしに音量を下げたり。

とりあえず私がいた所は シネコンバブル全盛期の見てくれシネコンだったために 大音響設定してしまうと別の箱に響いてしまったり・・・と なんとも駄目なところでした。
そのせいもあって 耳の肥えているお客さんからのアンケート用紙を見るとガクブルものでしたね(笑

クンドゥン、見たいと思ってそのままの映画です。
個人的には爆音の印象は全くなかったので意外!
東京はイベントが多くて羨ましい限りです。

投稿: けた | 2008年5月27日 (火) 16時37分

けたさん、こんにちは。さっそくのご来訪ありがとうございます。

音量なんてものは個人差が大きいものですから万人が満足するような設定はできませんよね。自分も最適な音量の感覚をつかむまでは結構時間がかかりました。

自分は作品を最も効果的に再生できる音量で上映することを旨としているので音を大きくしてほしいとか小さくしてほしいという要望に対しては基準音量ラインにある限りは基本的にそのことを説明してご理解いただくようにしています。
お客様の年齢層や作品の性質のほかに箱・音響機器の特性などで多少の加減は行いますが、映画の本領をもっとも発揮できる音量で再生するのが映写としての役割だと思っています。適切な再生音量を決定するのも映写の大切な技術ですから。

最近は音量がやたら大きい映画館もありますし、重低音が出すぎとかアンバランスな小屋が増えているような印象があるので、人によっては様々な要因でうるさく聞こえる可能性も大いにあると思います。やっぱり個人差なんですよね。困るのがテレビの音量と同じ感覚で音が大きいという方…、たまーにいらっしゃいますね。

制作者の意図したクオリティで提供したいと思うだけに妥協をせず日々精進していきたいです。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年5月27日 (火) 22時24分

月夜野さんご無沙汰しております。

先月、TVニュースで「爆音映画祭」をみました、個人的には音量を大きくしただけのものは嫌いなのですが、はっきりと台詞が聞こえるのには感心しました。
これを参考にもっと音をチューニングしてもらうといいのですが。
「バルト11」でJBLスピーカを左右前面に増設した劇場があり、最初のころはうるさいだけでしたが最近はかなり心地よくなりました。うまくチューニングをしているのでしょうか。

補足ですが、来年春近くに新しくシネコン(109シネマズ)がオープンします。
何か特色のある劇場なのでしょうか。

投稿: 迷画マニア | 2008年6月 6日 (金) 23時09分

迷画マニアさんこんにちは。

ニュースで爆音映画祭を報道していたんですか!?今後も定着するかもしれませんね。

鑑賞した結果で言うと台詞に関しては…厳しかったですよ。英語台詞でしたが聞き取りにくく定位とか音質以前の再生でした。音質とか音響の質ではなくあくまで爆音に特化した鑑賞であれば問題ないです。楽しめると思います。

広島市に出店する109シネマズのことでしょうか?
109シネマズはとりわけ特色があるチェーンではないと思います。最近の出店サイトは大人びた落ち着いた内装が多いです。支払いもEdyやiDなどの電子マネーに対応(クレジットカードはVISAとMASTER)しています。
劇場設備はエグゼクティブシートと言ってゆったりとしたサイドテーブル付シートやパーフォレーションの小さなスクリーンの導入、劇場によっては珍しいスピーカーブランドを採用していたりします。
中四国地域初進出となる広島は9スクリーン1,500席規模での進出なので各スクリーンはこじんまりとしたものになると思います。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年6月 7日 (土) 20時14分

爆突然、お邪魔します!ちょっと、聞きたい事があって、書き込みさせてください。爆音映画祭の事、今、知りました。。。知っていれば見に行ったのに。私は、たまたまロサンゼルスの映画館で、何本も映画を見る機会がありました。音が大きく、(騒音には感じず)そして音が美しかったのです。古い映画館で、どう考えても音響設備が整っているわけでは無い劇場ですら、日本のシネコンの劇場より、音は整ってました。ホラー映画の予告篇が流れたら、とってもっ怖いし、アクション映画を見ていたら、本当に映画の世界にのめり込むほどの迫力でした。正直、ショックでした。同じ映画が日本で上映されても、それは、ショボい音でしか上映されていない。それも音の規定値は、アメリカと同じだから、同じ音が再生されて当然なのに。なぜ、日本の劇場では同じ音質で音が流れないのでしょうか?とっても、生意気な事を言いますが、映写さん、劇場関係者の方々、、是非、ロサンゼルスで劇場で、映画鑑賞をしてください。そして同じ映画を日本の劇場でも見てください。音質の違いにショックを受けてください。そして、同じ映画がどうして、日本で上映されるときは音がショボくなってしまうのか、教えてください。
LAの中でも音が良いと思った映画館は、下記2館(アークライトのドームシアターとブリッジシネマ)
https://www.arclightcinemas.com/ArcLight/faces/Home.jsp

http://www.thebridgecinema.com/home/home.asp?l=7801

音の善し悪しは、個人差の問題があると、ブログにも書いてあります。しかし、それ以外の何かのような気がします。聞こえるはずの音が聞こえないで上映されているのは、何か違う様な気がします。(劇中で、木々が揺らいでいる音や、風の音など)。スピーカーの問題なのでしょうか。。。せめて、シネコンだけでも、映画を作った人たちが仕上げた「正規の音」で、流してほしいなぁーーと思いました。

スミマセン、随分、長い間、音の疑問があるのですが、どこにも答えが見つけられず、たまたま、このブログを見て、思わず質問してしまいました!よろしくお願いします。


投稿: 映画好き | 2008年6月16日 (月) 12時06分

映画好きさん、ご来訪ありがとうございます。

日本とアメリカの映画館の音の差についてですね。音質は何を定義に良い音とするかで結論の着地点が変わります。正確無比の音が良いとすれば迫力の増大した音響はダメな音で、逆もまたしかりです。これは鑑賞者の感性や好みで変化し統一された基準があるわけではありません。
管理人の概念での良い音とは、音響制作者が聞いて満足に足る音であることです。どのような音質であれ制作者が意図した音を再現できていると許容できる範囲にあれば良しとする考えで、このふり幅は制作者によって違います。鑑賞者が決められることではないのです。つまり管理人は鑑賞者の考える良い音よりも制作者の考える良い音こそ本当の映画の音だと考えています。このことを前提に管理人なりの回答をさせていただきます。

>古い映画館で、どう考えても音響設備が
>整っているわけでは無い劇場ですら、
>日本のシネコンの劇場より、音は整ってました。

箱が古くても良い音響は再現できます。見えない点で設備更新をしている可能性はありますし、映写技師がこだわって調整を繰り返しているかもしれません。古い=悪いの図式になりやすいのですが、古い劇場にも良い映画館は多くあると思います。古いほど音響品質の維持をするのが難しいのは事実です。きちんと時代に合わせて調整・改修すれば新しい映画館と同様に再生できる可能性はあります。

>同じ映画が日本で上映されても、それは、
>ショボい音でしか上映されていない。
>それも音の規定値は、アメリカと同じだから、
>同じ音が再生されて当然なのに。

この点は厳然たる相違があります。映画の音響は85dB/SPLが基本であると本文に書きました。この値を日本人に当てはめると音量が大きく聞こえる可能性が高いのです。日本の映画館の多くはアメリカの映画館より音量が小さめに上映されている事実の理由のひとつです。おもしろいもので民族や生活環境によって音に対する感受性は大きく変わるらしくアメリカ人は日本人と比べて大きな音量で映画を見る環境が多いようですね。
映画によっては制作者が再生レベルを指定することもあり、アメリカの制作者であればアメリカ人の鑑賞に即した音量が指示されます。この値で上映すると日本では苦情が出ることすらあります。音量で音響の印象は大きく変わりますから日本の映画館の迫力不足は音量がやや控えめなことによる可能性があります。
ただ、重低音を再生する設備に関しては日本がトップクラスです。音量さえ上げれば向かうところ敵なしの映画館が多いのもまた事実です。サブウーファー(重低音を再生するスピーカー)を通常より多く設置している映画館が日本には多くあるんですよ。

>LAの中でも音が良いと思った映画館は、
>下記2館(アークライトのドームシアターとブリッジシネマ)

アークライトのArcLight Hollywoodは良い音だろうと思います。実際に行く予定があったんですが未だ訪問できていません…。STAR WARS新三部作でルーカス・フィルムがここで見ることを推奨した文字通りのオフィシャルシアターでTHXの認定を受けています。それでも日本の映画館と比較して特別に違う構造はないはずです。

>聞こえるはずの音が聞こえないで
>上映されているのは、何か違う様な気がします。

サウンドトラックの音声を余すところなく再生するのは非常に難しいことです。映画館を造る際にエンジニアと検討を繰り返し、数年に一度は全体メンテナンスを繰り返さないと無理だと思います。一般映画館でこの作業はかなりの負担となるので難しいと思いますね。映画館の音響も品質上限には限界があり、究極的な音を目指すことはよほど館主がマニアでもない限り例がないと思います。

>シネコンだけでも、映画を作った人たちが仕上げた
>「正規の音」で、流してほしいなぁーーと思いました。

大手経営のシネコンは充分及第点の音響を提供していると思います。うえを目指せば際限がないですからね…。コストと手間をかければそれだけ良い映画館も造れますが1スクリーン1億円が相場のシネコンでそこまで投資はできないのも確かです。
そのためにTHXはあるわけで、認定劇場なら性能の良し悪しは大きくあるにせよある水準以上の音響は実現されているはずです。

音についての意見交換は主観的なものになりやすいので文章で客観的にお話しするのは難しいですね。爆音映画祭は迫力はありましたが「良い音」とは私は思いませんでした。この点からも良い音とは何か、そしてそれを実現するバックボーンは何かを見極める必要は大いにあると思います。
映画好きさんが絶賛されているロサンゼルスの2館は行ったことありませんが、どんなにたくさんの音が聞こえたとしても日本の最高レベルの試写室には及ばないと想像します。映画館と試写室は比較できるものではありませんが設計や目的で音はがらりと変わるものです。これに加えて好みもあるわけですから難しい問題だと思います。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年6月16日 (月) 14時50分

月夜野さま

私なんかの質問に、答えていただき、本当にありがとうございます!それも、とっても丁寧に!感謝です。
確かに音の感覚は人それぞれ違うので、客観的に表現するのが難しいと思います。だから、私、個人が感じた事を是非、映画館で実際に携わっている人にも感じてもらうしかないなぁと思ったりもします。。。

ロサンゼルスで映画を見たときに、「映画はやっぱり映画館じゃなきゃダメなんだ」ってひさしぶりに実感したのです。その時に、一番に違いを感じたのが「音質」だったのです。

もし、邦画がロサンゼルの映画館で上映されたら、やっぱり、しょぼい音になるのかな?
それとも、迫力のある音に変わるのか?

日本の映画館は重低音に力をそそいでいたのですね??知らなかったです。都内にあるのでしょうか?ご存知でしたら、是非教えてください!行ってみようと思います。

先日、上げたロサンゼルスの映画館ですが、
自信を持ってお答えします。「日本の最高レベルの試写室より、音は段違いに良かったです」音が大きいという事ではなく、「今まで、聞こえていなかったんだ」と実感しました。私は、それにも正直ショックでした。初めて、映画の「音」の大事さを体感しました。日本の試写室以上の音が、一般の映画館で再現されているアメリカ。。じゃぁ、アメリカの試写室は一体どんな音で上映されているのか、逆に興味を持ちました。

是非是非、ロサンゼルスへ行く事があれば、
音を聞いてください。「ただ大きいだけ」の音なのか、それとも、何か違いを見つけられるのか、とっても知りたいです。

特にこの「ブリッジシネマ」(http://www.thebridgecinema.com/home/home.asp?l=7801
では[Director's Hall]という部屋の音は、迫力ありました。。。

勝手な事ばかり、書いてすみません。今後もお邪魔します!

投稿: 映画好き | 2008年6月18日 (水) 14時43分

映画好きさん、こんにちは。

そうですね。実際に訪れて視聴しない限りは感じられないですよね。ロサンゼルスにはまた行く機会もあると思うのでそのときには時間があれば映画館訪問も考慮したいと思います。「映画は映画館で」こう思っていただけるのは嬉しいことですから。その音がどんなものなのか興味ありますよ。

重低音の良く出る映画館は都内でしたら丸の内ピカデリーの1階席が分かりやすいと思います。シネプレックスのHDCSもそうですね。これらの劇場は重低音の再生設備が充実しています。

ロサンゼルスの映画館が日本のハイレベルな試写室より段違いに良い音とは私は思えないんですよ。訪れたことがないので想像に過ぎないですけども…。

その根拠として試写室と映画館の役割が根本的に違うことを挙げます。映画館は映画を楽しむところですが試写室は映画をチェックするところで測定機器のような役割を持つ場所です。
また映画の再生は均一にサウンドトラックの情報を客席に伝えるために残響を抑えてフラットな特性を保つようになっています。定員数が最大級でも140席前後におさまる試写室に対して映画館の広い空間ではどうしても無理が出てきます。

管理人が素晴らしいと思う試写室ではセンターチャンネルが再生する台詞だけでも様々な音が出てきます。しかもハイとローレンジの帯域がしっかりと聞き分けることができます(良いか悪いかは別として)。またライトチャンネルとレフトチャンネルのセパレーションが明確で、まるでその中間からも仮想的に音源があるように聞こえます。重低音が唸ってもフロントスピーカーの低域は消されずに確実に客席に届くと同時に、ダンピングの効いた低音は過不足なく箱に放出され瞬時に消音されます。レスポンスの良さと同時に瞬間的な場面転換にも対応できる音環境があります。音の出所と消え所も明確です。

これらの性能は試写室の性格ゆえに必要なもので映画館ではここまでの品質は不要だと思います。この試写室で再生される音は最終試写として完成形のチェックとして機能します。音量も1dB単位でセットでき正確な再生が可能です。現に音響技術者ですらスタジオで聞こえなかった音が聞こえると言い古されているほどの性能を有しています。録音機材の違いまで分かるくらいです…。暗騒音もNC-15~20レベルを保っており、映画館ではまず実現できない環境と思います。最高レベルを実現したシネマメディアージュがNC-25でした。

「音質が良い≠音響が良い」
これも自分がかねてから考慮している点ですね。音質と音響は別の観点として捉えるべきだと考えています。

音質は大事ですが根本となる再生環境の性能が素晴らしく、これは映画館では非常に難しいことです。少なくとも一般の映画館設計では実現できません。映画館で瞬時に音を消せる箱はほとんどないでしょう。
ただし試写室なのでとても味気ない音です。試写室で聞くより映画館で聞いたほうが良い音だと言う人もいます。元来の役割が違うためしかたがありません。管理人には試写室の狂いのない音を聞くと音響制作者の仕事が如実に伝わってくるようで興味深くなります。

日本の映画館とアメリカの映画館では基本構造や機材や材料は同様で残響特性なども共通されているため大きな差が出ることはあまりないはずです。となると、Bチェーン調整の具合が変わってくることになります。アメリカ人の設定と日本人の設定は確実に違います。この差が音の差として表れているのではないでしょうか。

それと迫力という点では重低音の量が大きな意味を持ちます。
例として同一のサウンドトラックを再生し、ひとつは重低音ありでもう一方を重低音なしで再生すると多くの人が重低音のあるほうを音質が良いと言います。このとき音質自体は何も変わっていません。0.1chあるかないかです。しかし重低音があるほど「音が良い」という認識が多いのです。そして量が増えるほどインパクトと臨場感が向上するように聞こえます。日本の映画館が重低音設備の充実に走りがちなのも分かる気がします。
サラウンドの音がしっかりと聞こえるほど音が多いようにも聞こえます。聞こえる音の多さと情報量の多さは違います。要は聞こえ方なんですね。ピンクノイズを聞くと解像感は映画館でだいぶ違うのが分かります。解像感≠情報量ですが参考にはなります。

映画好きさんもこれら試写室と多くの映画館を経験されているであろうことから異論も多々あるかと存じます。映画好きさんが仰るように本当に試写室以上の音があちらの映画館で再生されているのであれば、日本の映画館も負けていられないですよね。様々な点で興味深いお話です。

参考までにハリウッドの音を参考に構築されたのがMOVIXさいたま12番シアターです。JBLのカスタムメイドスピーカーを使い、JBLの技術者が来日して音作りを行いました。この劇場の音を聞くと何かヒントが見つかるかもしれませんよ。

自分は映画好きさんに「日本でここは良いほうだ」と思う映画館があればぜひご意見をうかがいたいです。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年6月19日 (木) 11時21分

ご無沙汰しておりました。アメリカの映画館を体験する前は、六本木のTOHOシネマズ(ヴァージン)が音が良いと思っておりました!

先日「インディアナ・ジョーンズ4」で、月夜野さんおすすめのMOVIXさいたまの12番シアターへ行ってきました!
さすが、音は大きかったです!!しかし、デジタル特有の地響き感が、無かった。。ドドドドッっと響いてくる感じが無かったです。それは、やっぱり、日本人には大きすぎるのでしょうか???んんん、でも、日本人の私がアメリカの映画館で音が大きい、ウルサいとは、感じなかったんですけど。。。

また、おすすめの映画館があったら、教えてください!

投稿: 映画好き | 2008年7月 8日 (火) 13時43分

映画好きさん、こんにちは。

TOHOシネマズ六本木ヒルズですね。何度となく訪れていますが個人的にはごく標準的なJBLの音だと思っています。大きなスクリーンになるほど大味になり、小さなスクリーンのほうが印象が良い映画館です。ART SCREENは音が程よくまとまっていて好きですね。私が推す試写室とは比べるべくもないですし、ここより良質の音が再生できる映画館も多いのではないでしょうか。

MOVIXさいたま12番について。
地響き感というのは言い換えればサブウーファーの音波振動です。要するにサブウーファーの出力が大きく、箱の剛性が弱ければ地鳴りのように響きます。12番シアターのサブウーファー出力は十二分にあります。現在以上の重低音はサウンドトラックに入っている音をデフォルメすることになり不要です。MOVIXの箱は施工が非常に良く、重低音でもあまり揺れません。揺れるのは音には良くないことなので…。
重低音を六本木と比較すればブーミーで膨らみがちの六本木と、タイトでキレのあるさいたま。客席の段床が若干弱い六本木と剛性のあるさいたまとかなり違いを感じます。重低音は必要なだけあればいいもので、個人的にはさいたま12番も重低音は強めかなと思いますね。

さいたま12番はグローマンズ・チャイニーズ・シアターの視察をきっかけに動き出したプロジェクトで、スピーカーはJBL特注品、これをアメリカのJBLスタッフがチューニングしています。よって日本の映画館でもハリウッドテイストを味わいやすい映画館と言えると思います。

映画好きさんは重低音が多い映画館がお好みと推察しますのでシネプレックス幕張の9番HDCSと10番THXなどはおもしろいかもしれませんね。どちらも個性的な音響を持つ映画館です。重低音だけではなく「重たい音」を出します。

投稿: 管理人:月夜野 | 2008年7月 9日 (水) 02時30分

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