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2010年3月11日 (木)

File.114 シネマデプト友楽メモリアルVol.1

古都奈良市から映画館のともしびが静かに消えた。1942年に奈良ニュース映画館としてオープンし、90年には全国に先駆けてシネコンスタイルを採用したシネマデプト友楽だ。デザイナーズシネコンとして飽きのこないシックでおしゃれなデザインや考え抜かれた導線構造など随所に至るまで独立系映画館らしいこだわりが感じられる素敵な映画館でした。

近隣地域への大手シネコンの進出による競争激化と奈良市中心部の空洞化によりシネマデプト友楽の動員数は年々低下。年間来館者数も25万人を割り今後の動員回復の見込みが見込めないという判断で急きょ68年の歴史に幕を下ろすことになりました。

何度も紹介してきた日本で最初のシネコンであるワーナー・マイカル・シネマズ海老名が1993年オープンなのに対してシネマデプト友楽はいち早くシネコンスタイルを採用したまったく新しいタイプの映画館。計8スクリーン、1,142席を有する中規模シネコンではありますが2005年の改装により国内でも類例の少ないデザイナーズシネコンとして生まれ変わった矢先のことで当方もショックを受けました。先年には『週刊文春』誌に「おすすめのくつろげる映画館」として推薦した身としては寂しい限りです(参照:File.112 くつろぎの映画館)

このときの推薦文をご紹介します。
「“平城京を現代風に再現”
奈良市の中心部に立地するデザイナーズシネコン。名前の由来は「映画のデパート」で90年のオープン当時、まだシネマコンプレックスという言葉が存在しなかった頃に名づけられたものだ。
古都の中心に位置していることと、幅広い年齢層を迎えるために派手な色使いや導線を大胆に排除しモノトーンの落ち着いたロビー環境を構築している。平城京の格子街路をモチーフにデザインしつつ、格調高い雰囲気を醸し出すことに成功している。そのこだわりは劇場内にも及び、スピーカーを壁面に埋め込みカーテンを吊ってスマートな壁面を実現したほか、色彩も抑えて高年齢層の来場にも配慮されている。
座席は国内メーカーの特注品で長時間座っても疲れない特殊構造のうえスーパーハイバックタイプ(背もたれが頭部まである)。そのため上映時間の長い映画でもリラックスして映画を見ることが可能だ。座席配列は段差の大きいスタジアム形式ではなくスロープ式だがスクリーンの位置と座席の角度を計算して設計しているためどこからでも見やすい視野を提供している。
映写機が1スクリーンにつき1台が通例のシネコンでは非常に珍しい、1スクリーンに2台の映写機を配置して昔ながらの切り替え映写を行っている。万が一にも映写機にトラブルが発生した場合はもう1台の映写機でバックアップができるなど観客にとっても安心な利点の多い映写方式である。高年齢層まで支持される落ち着きあるデザインプランはもちろんだが、映写に対して安心できるというのはくつろぎの条件と考えたのでベスト10にランクインした。」(抜粋)

シネマコンプレックスと言う和製英語がまだ無かった頃に時代を先取りした先進の映画館。閉館は潔い決断とは言え、唯一無二の個性を持つ素敵な映画館だっただけにショックは大きいです。今回はシネマデプト友楽の魅力が少しでも広く伝われば…と思い記事を上梓します。
これまで撮影の多くをフィルムカメラで行ってきましたが、このたびパソコンの買い替えによりフィルムのスキャンが不可能となりました。よって写真店が行っている150万画素相当の低画質でのスキャン画像掲載となります。またHPの更新にも不具合が発生しています。拙サイトを楽しみにされている方にはまことに不本意ではありますが更新頻度の少ないことと画像の低画素化をご了承ください。



シネマデプト友楽メモリアルVol.1



シネマデプト友楽DATA
所在地:奈良県奈良市角振町6
開館:1990年
総劇場数:8スクリーン
総座席数:1,142席
CINEMA1(120席)SRD、dts
CINEMA2(119席)SRD、dts
CINEMA3(115席)SRD、dts
CINEMA4(118席)SRD、dts
CINEMA5(244席)SRD、dts
CINEMA6(118席)SRD、dts
CINEMA7(200席)SRD、dts
CINEMA8(108席)SRD、dts


1
徹夜明けのまま新幹線に乗り込み京都駅経由で、単身奈良へとやってきました。今回は東大寺も興福寺にも行かず、シネマデプト友楽のみ行ってきました。神鹿すら見ていません。




2
近鉄奈良駅の改札上ではせんとくんが出迎えてくれました。この奇怪なデザインに慣れてしまった自分が心配…。


3
奈良に到着!駅から歩いて数分の好立地に映画館はあります。


4
手作り感あふれるスケジュール表。シネマデプト友楽は本館とイースト館に分かれています。デザイナーズシネコンと言う点でも立川シネマシティ/CINEMA・TWOを彷彿とさせます。


5
ポスターケースの下には駐車場の案内が。大型ショッピングセンターと併設していないので専用の駐車場を設けて利用者の便宜をはかっています。


6
別館の外壁のレタリング。今となっては味のあるこの書体。私は好きです。


7
別館に隣接する建築群。かつてはゲームセンターなどが入居していた記憶があります。すでに閉鎖され、内部には『のだめカンタービレ最終楽章 前編』の巨大なスタンディーが飾られています。


8
劇場裏手から見た新館。この地区のランドマーク的な建築でありながら街路にすっかり溶け込んでいます。とくに低層部のテクスチャを和風にアレンジしている芸の細かさには思わず目を見張りました。こういったこだわりがこの映画館のおもしろいところであり魅力なのです。


9
でも側面からみると結構キッチュなデザインも兼ね備えている(笑)。内装のシックさとは大きく異なるポイントです。


10
平城京の街路をモチーフにした洗練されたファサードに比べて裏側はごく普通のビルと言った趣です。自己主張が少なく奈良の町に溶け込んでいますね。


11
右手に見えるのは奈良のシンボル興福寺五重塔(国宝)。奥に若草山が見えています。シネマデプト友楽は奈良旧市街の中心に位置していて、文化施設として欠かせない都市機能でありました。

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コメント

ミクシィでお世話になってますゴマです(・ω・)
ワーナー海老名を大きく上回る歴史を持つ映画館ですね!!茨城の水戸駅周辺の映画館達はTOHOとシネプレの参入により3館全てが閉館してしまっています・・・思い出のある映画館だったので淋しいです・・・
更新楽しみにしてます!

投稿: ゴマ | 2010年3月13日 (土) 23時22分

ゴマさんご来訪ありがとうございます。

シネコンの普及で昔からある映画館が消えていきますね。そのためシネコンを悪者扱いする人もいますが市場主義とはそういうものです。顧客がそれを選んだのですから…。私も多くの閉館に立ち会ってきましたがシネマデプト友楽ほど自館に誇りを持っているスタッフが多いシネコンはないと思いました。
閉館は残念なことです。

投稿: 管理人:月夜野 | 2010年3月14日 (日) 00時25分

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