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2010年6月18日 (金)

File.118 シネマデプト友楽メモリアルVol.5

シネマデプト友楽メモリアルの最終回です。今日は最大劇場のCINEMA5の場内を見てみましょう。場内も独創性のある内装に仕上がっているんですよ。



File.118 シネマデプト友楽メモリアルVol.5



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90年代の映画館の趣を残しつつ、落ち着いた照明とカラーリングで統一された場内。縦長の形状をしているため後ろの席に座るとややスクリーンが小さく感じられるかもしれませんが、緩やかなスロープと絶妙なスクリーンの設置高のおかげでどの席からでも見やすさを確保しています。




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もう少しスクリーンに近づいてみました。キャパシティに対してサイズが小さいわけではありません。むしろ最近の映画館のスクリーンは大きすぎるきらいがあるのでこのくらいがちょうど良い大きさなのかもしれませんね。個人的には最後列中央から水平視野角30度もあれば十分だと考えていますが新しい映画館のスクリーンは40度近くになることもあり、設置位置も高くて後ろのほうに座らないと画面が見づらい映画館が増えているように思います。




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この劇場の特長は壁面のカーテンウォール。サラウンドスピーカーも見えないようにカーテンのなかに隠れています。このカーテンは素材や色彩にもこだわったそうで古都奈良らしさを、侘びさびを感じさせるものになっています。もちろん吸音効果も考慮されているうえ、光の反射率が低いので上映中も照り返しが少ないメリットがあります。このようなカーテン式の壁面の映画館は珍しいですね。見た目の印象も優しくて好ましいと思います。




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映写窓を見てしまうのが拙サイト管理人のクセ(笑)。メンテナンス照明のようなスポットライトが装備されています。映写窓の周囲にあたる高所は白っぽいカーテンがかけられていて休憩中は良いアクセントとなっています。映写設備の詳細は知らないのですがシネコンでは珍しいイタリア製の映写機が2台式で用いられているようすで、スピーカーはエレクトロボイス社製を使用しています。




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こうして側面から見ると壁がカーテンに覆われている様子がよく分かります。実際に見ると照明もシックで素敵なんですよ。今回撮影できなかったのですがCINEMA3の出入口付近に使われている金属製レースカーテンはとても美しく素敵でした。劇場ごとに微妙に個性が違うのもこの映画館の特徴です。




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こうして見ると劇場の雰囲気がよく分かりますね。カーテンと同じくシートも特注色が使われたハイバックシートです。座り心地が良く画面に対する背もたれの角度も適正なのが特筆すべきところです。音響面はどちらかといえばキレや重低音よりも柔らかさや耳当たりの良さが印象に残るサウンドです。『フラガール』と『ローマの休日』を見ましたがどちらもソフトに聴きやすく鳴っている印象でした。フロントの分離感もしっかりとしています。おそらくエレクトロボイスの2Wayスピーカーではないでしょうか。重低音やサラウンド感が注目されやすい昨今において珍しく落ち着いた音響と言えるでしょう。壁面よりも厚みのあるシートによる吸音割合が大きいようでした。




シネマデプト友楽が標榜していた「第一級のホスピタリティ」。その精神は現場のスタッフの様子や清潔感あふれる館内によく表れていました。自分としても、この映画館ほどお客様目線でスタッフが接客をしている映画館はあまり記憶にありません。1階のちらし・ポスター放出市でスタッフが来場者の子どもと親しげに接している様子を見たとき、無くなってしまうのが本当に不憫でなりませんでした。

1942年に開館し、68年もの長きにわたって奈良市に映画の明りを灯し続けてきたシネマデプト友楽。次々とオープンする郊外型大型シネコンの乱立により来場者が減少、社長の健康不良も重なりこのたび閉館することとなりました。営業部長の「本当に残念ですが先は見えている」との言葉に、一観客の私もそれを受け止めるしかありません。

またスタッフの方々の言葉も印象に残りました。「週刊文春で全国トップ10入りしたことで自分たちの映画館が評価されていることを知った」、「閉館するのは本当に寂しい」、「たとえ経営が変わっても友楽で働きたい」、「この大好きな映画館で働けたことはずっと思い出として忘れない」などスタッフ全員が閉館を惜しんでいるようでした。結局1月末で閉館し、スタッフも友楽を巣立って新たな生活を送っているそうです。

私は遠路のため友楽を頻繁に訪れることはできませんでしたが、週刊文春で推したのは間違いではなかったことを今回の最後の来訪で再確認することができました。一流ホテル並みの接客とシックな劇場デザインコンセプトは最後まで変わることなく、国内でも類例の少ないデザイナーズシネコンだけに閉館は寂しく思います。また同日、神戸市にあるMOVIX六甲も閉館しました。シネコンチェーンMOVIXの第一号サイトでこちらも集客に苦戦したうえでの閉館だったようです。

これからはシネコン同士の生き残りをかけた熾烈な戦いがさらに激しさを増していくことでしょう。シネマデプト友楽は閉館しましたがまたいつの日か復活する日を願っています。「まだここで働いていたい…」というスタッフの言葉が胸を締め付けます。
私は寂しさのあまり思うように撮影・取材が進まなかったのですが、閉館間際でお忙しいなか取材協力に快く応じてくださったスタッフの皆様に厚く御礼を申し上げます。

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68年間お疲れさまでした。
そしてありがとう。シネマデプト友楽。

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コメント

シネマデプトメモリアルお疲れ様でした。
デザイナーズシアターとのことですが、ゴマも見てきたシネマツーよりも洗練されてて綺麗なシアターと思いました。劇場ロゴの入ったシャンデリアや光の按排、色彩や形など今のシネコンには見られないすごいものですね!シアターもカーテンでスピーカーを隠していて柔らかで落ち着きがありいいですね。
シネコン乱立の荒波に飲まれてしまったのは非常に残念です。行ってみたかったですね・・・

投稿: ゴマ | 2010年6月19日 (土) 01時10分

ゴマさん、こんにちは。

CINEMA・TWOとコンセプトが全く違うのでどちらが洗練されているかは分かりませんが仰る通り友楽のデザインは洗練されていて細部の照明や金具までしっかりと作り込んであります。かなりお金がかかってますよ。場内も圧迫感のないカーテン形式の壁面など特徴的ですよね。

建物自体はまだあるのでいつの日か復活するかも…。その際はぜひ訪れてあげてください。ちなみにここ、上映終了後のプリント返却が早いと言うことは知る人ぞ知る(笑)。

投稿: 管理人:月夜野 | 2010年6月19日 (土) 20時12分

取材、ご苦労様でした。

訪れるには少々遠くて
一度も足を運べませんでしたが、
とても好感の持てる映画館であったことが
文面から伝わってきました。

シネコンも過剰気味になって
淘汰されるところが出て来てしまうのは、
資本主義社会ですから
仕方のないことだとは思っていますが、
世の中全体のスピードが速くなり
私はときどき眩暈を感じてしまいます。

でも働く人々の熱意や誠実さ
店舗に対する愛着が生まれるのは
素晴らしいことで、
スタッフの方々の心には
いつまでもこの映画館は
存在し続けるのでしょうね。

投稿: むぎわら帽子のジミー | 2010年6月20日 (日) 21時37分

むぎわら帽子のジミーさん、こんにちは。

映画館の雰囲気が伝わったようで嬉しいです。このような素敵な映画館が淘汰されていく現実、奈良市中心部にあるがゆえのハンデ・・・。皮肉なもので郊外の劇場や大阪市内などの映画館に人が流出してしまったのは資本主義社会とは言え惜しまれます・

でもスタッフの心のなかにはずっと友楽の記憶は残っていくことでしょう。そして私も決して忘れません。週刊誌の映画館ランキングに挙げたことを誇りにすら思っています。

何かの機会があれば営業譲渡などでぜひ復活してほしいと願います。

投稿: 管理人:月夜野 | 2010年6月21日 (月) 03時01分

月夜野様

はじめまして!
本日、
はじめて記事を拝見させていただきました。

シネマデプト友楽のことをここまで詳細にご紹介くださり、大変うれしく思います。

私はかつてこの映画館で経営に参画していたもので、本館のリニューアルは私の最後の大きな仕事でした。

構想から2年の歳月をかけ、
どれだけのお客様にこのデザインをご理解して喜んでいただけるか?
大変心配でしたが、こちらの記事を読ませていただき、閉館しましたが救われた気持ちになりました。

全てのデザイン、制服、オペレーションまで情熱を注ぎましたが、シートは開発まで1年かかりました。

東京青山のインテリアショップ ワイス・ワイス(WISE・WISE)さんのご協力により
2層ウレタンとサンゲツ製の生地使用のシートは3時間の鑑賞にも耐えうる秀逸ものと自負しておりました。

このシートを製作いただきワイスワイスさんまで足を運んで下さったホットシネシートの社長様には大変感謝しております。
イス屋さんに家具屋さんにイスを見に行かせるという失礼を快諾いただきました。
http://www.hot-cineseats.com/cinema.html

また、この劇場をデザインいただいた道下浩樹氏は東京西麻布本店の「わだ家」を全店手がけている著名デザイナーです。
道下様自ら名古屋のホットシネシート様の本社工場まで同行いただき開発に情熱を注いでいただきました。

和田アキ子さんが依頼されるほど、情熱のあるすばらしいデザイナーさんです。
http://www.michishita-d.com/

お二人に、
そして寝ないでハードな工事に関わってくださった職人の皆様と全ての工事関係者様に
この場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。

私は、閉館より1年半早くに経営の責務を負い退任いたしましたが、
こちらの記事を読ませていただき、
最後まで頑張って働いていただいたスタッフの心情が察しられて良かったと同時に、内情を話せないまま別れたスタッフへ申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

ただ、スタッフを最後まで働きたいと思わせ続けていただいたのも、
情熱をもったスタッフたちであり、
最後まで私の代わりに幕を下ろしてくれました。

女性スタッフが80%の会社であり、
映写チームはほぼ女性スタッフにより構成された全国でも珍しい優秀なチームでありました。
フロアスタッフと同じ制服に身をまといレジ、接客、事務処理、電話案内全てをこなせるマルチなエキスパート集団でした。

フロアースタッフの高い接客能力もまた、
社員を凌ぐものが多く、
社員数5人という少人数を彼女たちがカバーしてくれました。

駐車場スタッフは平均年齢は60歳をはるかにこえた人生の大先輩たちのチームであり、

若い社員、スタッフが多い中で
年配チームはいつも、
仕事と人生の指針を示していただきました。

手前みそながら、
ハードよりむしろソフトの充実したすばらしいチームだったと感じております。

またまた、
この場をお借りして、
お詫びとお礼を申し上げたいと思います。

地域の皆様にも大変、お世話になり何もお返しが出来ないままの閉館となり申し訳ありません。
いつか必ず、
地域へお返しできるよう頑張ります。

今は、シネマデプト友楽のHPは閉館の内容のみのですが・・・
月夜野様のお力をお借りして、
シネマデプト友楽のHPを思い出に残るデザインに出来れば幸いと思います。

あらためてご連絡させていただきます。

長くなりましたが、
素敵な記事を掲載いただきまして
月夜野様にも大変感謝いたしております。

私の思いの100分の1ほどですが、
話せる場所を作っていただいたことにも
深謝いたします。
月夜野様にもいつか直接の拝顔にてご挨拶できれば幸いです。

ありがとうございました。

投稿: EnjoyFriend | 2010年7月26日 (月) 03時37分

はじめまして。
友楽、閉館してたんですね....。

母に連れられて小さいころから通っていた思い出深い映画館でした。友楽での一番古い記憶はジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』を鑑賞したことです。年々、見心地(?)が良くなっていくなぁ...と思っていたのは私の記憶違いではなかったんですね。友楽の雰囲気は素晴らしく心地よくて、鑑賞後も結構ジッーとしていることが多かったように思います。お気に入りの席は一番後ろの真ん中でした。

(ρ_;)

でも確かに記事でも書かれているように、友楽は立地が良くなかったですね.....。奈良市に住んでいる人は「高の原」の方へ流れて行ったのかな。行きやすいんですよあそこ(;・∀・)私もそのうちの一人ですが..。

でもまた友楽で映画見たいです.....。

復活のために何かできることがあれば協力させていただきたいです!

大和西大寺駅近辺に移動させて再建というのはどうでしょうか(笑
あそこは近くにデパートもありますし、「行きやすい」映画館にもなると思うんです。
すんごく小さくても、3-Dとかなくても、ポップコーンとかなくても良いので、最高の環境で質の良い最高の映画が見たいです!!


関係者の方が見ていらっしゃればご検討の程をお願いします......。

お金もどれぐらいかかるか見当もつきませんが...。(お高いんでしょう?(゚ー゚;笑)

でも今から少しづつ寄付金集めて10年後とか長いスパンで考えて実行っていうのはこの業界ではありえないことなんですかね...。

奈良にも大阪や京都にあるような単館系の映画館作れないんでしょうか。

なんか書いてるうちに主旨どんどん違ってきました。すいません(;;;´Д`)

なんか結構誰にも言えなくて積もり積もってたこと、ここで全部ぶちまけてしまいました。

投稿: もっさん | 2012年2月 3日 (金) 01時24分

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