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2011年3月14日 (月)

東北地方太平洋沖地震によせて

2011年3月11日、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の大地震が発生しました。岩手、宮城、福島の沿岸部を中心に未曽有の大被害をもたらしたこの地震。被災された方々にお見舞い申し上げますとともに、犠牲者のご冥福を心よりお祈り申し上げます。発生から3日目、1名でも多くの方が救助されますことをお祈りいたします。

今回の地震はおだやかな天気の日中に発生しました。当然のことながら映画館も通常通り営業していた状況です。『塔の上のラプンツェル』、『SP 革命篇』、『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち』などの話題作の封切りで、映画館にも多くの方が訪れていたことでしょう。映画館においても多くの苦難があったと想像できます。非日常の時間を提供する映画館が奇しくも災害の現場となる。映画館の特殊環境のなか自らも被災者の立場で避難誘導にあたられた係員の方々の御心労をお察しいたします。

同地域は2008年の岩手・宮城内陸地震でも多く映画館が被害を受け営業を取りやめました。このたびの地震被害はそれをはるかに上回るものであり改めて地震の恐ろしさを実感するとともに、映画業界としても復興への力になることはないかと考えている次第です。




映画館における防災事情などは改めてお話しするとして、今回は今後の映画館の営業状況の見通しについて簡便に述べさせていただきます。

被災地をはじめ東北各県沿岸部の映画館は甚大な被害を被っているとの情報が入っています。また地震による破壊で都市機能そのものが奪われた所も多く、映画館の営業再開には長い時間を必要とするでしょう。
一方で比較的揺れの少なかった首都圏でも埼玉県と千葉県の一部で震度6弱、東京都で震度5強を記録しました。ほとんどの映画館がその回で上映を中断し、閉館体制に入りました。幸いにも首都圏の映画館で死傷者が出たという情報はありませんが施設が損壊した映画館が多数あります。また本日14日より政府の要請に基づく東京電力の地区別計画停電の影響を受けて、営業体制は整えたものの休館・または営業時間の短縮を余儀なくされている映画館もあるようです。

ここでは特に今回の地震による主に首都圏で見られた映画館の被害状況の例を挙げてみようと思います。強固に造られている映画館ですら易々と破壊する地震。本当に恐ろしいです。

・チケット売場や売店の損壊
地震によってチケット販売端末が破壊され発券不能になったり、売店の商品が棚から雪崩をうって落下しました。特に高い棚から落ちてくる商品などは危険です。

・ロビーの損壊
映画館によってはロビーの内装材や装飾が落下しました。幸い怪我人は出なかったそうですが映画館の広いロビーも決して安全ではないことが分かります。

・スクリーンの破損
映画館の顔、スクリーンが被害を受けた映画館もあります。

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・スピーカーの破損
スピーカーは強固に壁に設置されていますが、想定外の力が加わった場合には固定力の限界を超えて移動、落下することがあります。スクリーン裏のメインシステムがそうなると即時の営業再開は絶望的です。

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・映写機の破損
映写機が転倒したとの報告があります。映写機は非常に重量のある機材ですが大きな横揺れに耐えるには限界があります。設置位置が数cmでもずれれば再設置の必要があり、転倒すれば内部機構の破損は確実で復旧までに多くの時間がかかります。

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・映写窓の損壊
映写窓は客席側と映写室側を板ガラスで絶縁しています。映写室の雑音を場内に入れないために使われているガラスが、地震の強大な力によって粉々に砕かれてしまいます。映写ガラスは遮音性の高い厚みのある製品が使用されますが上下方向に圧力が加わったときは簡単に割れてしまいます。

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・場内の損壊
安全を考えて強固に造られている映画館でも天井が落下してくることがあります。天井には吸音板、照明、空調ガラリ、左右や後壁にはサラウンドスピーカーなどがありいずれも落下してくると非常に危険です。

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以上のような事例が多数報告されています。

「帰宅難民のために映画館を開放してはどうか。避難所として使えないか」とのお声もあります。しかし上記のように映画館には地震に対する危険も多くあり、密室という特殊条件下のため余震で二次災害を引き起こす可能性も十分に考えられます。また自社ビルとして営業していない映画館は大家(商業施設など)との兼ね合いで開放できないことが普通です。先に挙げたようにロビーにおいても内装材の落下などが報告されており映画館を避難所として活用するのは危険が伴います。

現在は地震発生から間もないため今後も余震に対して警戒が必要です。営業している映画館もありますが首都圏をはじめ大きな揺れを観測した地域の方々はできる限り映画館に出かけるのはお控えになるのをおすすめします。基本的に映画館は安全です。しかし想定外の事態が起こりうるのは否定できません。今回の地震そのものが想定外の規模だったのですから…。

また映画の上映には多大な電力を消費します。シネコンの平均的な座席数を200席と仮定した場合、それの上映に必要な消費電力は概算でおよそ13,000wにもなります。大スクリーンに映像を映し出す映写機や音響機器はもちろん、空調なども含めていくと非常に大きな電力を消費をしていることが分かります。シネコンのメインスクリーンである400席クラスから600席クラスともなると雪だるま式に増えていきます。余震の危険性があるうえに電力不足が確実視されているいま、該当地域での映画の上映・興行を行うことは妥当とは思えません。

いま、日本は緊急事態を迎え多くの人が悲しみにくれています。そのなかで必死になって活路を見出そうとしている人、職務を遂行している人がいます。首都圏は電力不足により地域別停電という事態になっています。映画は逃げません。今わたしたちは被災地のためにできることを考え、静かにそれを実行に移すときではないでしょうか。

当方も1995年に阪神淡路大震災を経験しました。忘れ得ぬ記憶です。記憶が薄れ風化している方々もいらっしゃると思います。東北地方太平洋沖地震であのときの記憶が鮮烈に蘇りました。ちょっとした気遣いや少額の募金でも被災地の助けになります。一人ひとりがいま、何をするべきか考えて行動するときがきています。

被災地はもちろん首都圏の映画館も営業は先行きが不透明ですが、また再び映画館に明かりが灯るよう努力していきたいと思います。改めて被災地の今後の救援・復興が進むことをお祈りいたします。

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