カテゴリー「映画の知識」の記事

2012年3月 5日 (月)

File.120 STAR WARS 3D公開へ

壮大なスペース・オペラが3Dで劇場に帰ってきます!
映画『スター・ウォーズ』全6部作が今年から2018年にかけて毎年3Dで劇場公開です。
最初を飾るのは3月16日(金)公開の『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 3D』です。

 

スター・ウォーズの「エピソード○~」ってナニ?

 

ここで『スター・ウォーズ』(以下SW)の基本をおさらいしておきましょう。
SWが最初に公開されたのは1977年の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』。その後にエピソード5とエピソード6が制作されました。
第一作はSWという長いお話しのなかのちょうど真ん中から作られたんですね。ジョージ・ルーカス監督はSWのVFX(特殊視覚効果)を担当するILM(Industrial Light & Magic)を立ち上げ、当時としては画期的な映像技術を作り上げました。しかしジョージはその技術レベルに満足できず、続編の制作は長らくストップしてしまいます。

エピソード6の公開から10年後の1993年、映像革命をもたらす映画が誕生します。ジョージの盟友、スティーブン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』です。恐竜がコンピュータグラフィックスと人形の組合せで見事に表現されているのを見たジョージはSW続編制作への決意を固めていったと言われています。1999年、ジョージは22年ぶりにメガホンを取り『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』を完成、大ヒットへと導きました。

つまり物語は全6話構成でありながら、公開順は4話→5話→6話→1話→2話→3話なのです。今回3Dでお目見えするのはタイトルの通り第一話。ファンの間では「公開順で見るかエピソード順で見るか」がよく話題になります。未見の方は4話から公開順に予習しておくか1話からスタートするかの楽しみもありますね。ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。
エピソード1はSWに慣れているつもりの自分も初見では新しい設定に戸惑ったり理解しづらい部分もありました。第一作のエピソード4は非常にシンプルなストーリー構成なので、エピソード4,5,6をビデオで復習してから劇場に足を運ばれるのを個人的にはおすすめします。

 

ジャパンプレミア

 

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2012年3月4日に都内の劇場で特別試写会が行われ多くのファンでにぎわいました。ゲストにジョージの愛娘アマンダ・ルーカスが登場、彼女はDEEP女子無差別級王者でもあり場内は割れんばかりの拍手に包まれました。彼女の護衛にシスの暗黒卿ダース・ベイダーや銀河帝国軍兵士のストーム・トルーパー軍団が場内を占拠。ボビー・オロゴンさんとデーブ・スペクターさんも応援に駆けつけました。ボビーはメイス・ウィンドゥ、デーブは帝国軍将校のコスチュームを身にまとい場を盛り上げる…はずがお約束通りデーブのネタがスベるスベる。背後で怒りに震えるベイダー卿が恐ろしい! また特別にジョージから日本人ファンへのビデオレターも上映され、映画を楽しんでくださいと嬉しいメッセージを送ってくれました。
同時に日本マイクロソフトが4月5日から発売するXbox 360 Kinect用ゲーム『Kinect スター・ウォーズ』のプレイ実演をアマンダが披露。コントローラーを使わずにバトルが楽しめるとあって来場者の目をひいていました。

 

試写スタート

 

キャストスタッフや報道陣が撤収した後に場内は暗転、漆黒のなか銀幕に20世紀FOXロゴが3Dで登場、つづくLUCAS FILM Ltd.ロゴも初お披露目の3D。『STAR WARS』のタイトルが映し出されるやいなや、場内のボルテージは最高潮に! 観客は初めて見るSW3Dの世界を存分に楽しみ会場を後にしました。
SWはお祭りムービーでもあるので、人気キャラクターが登場すると拍手や掛け声が出るのがお約束ですが、今回のお客様はそういったことは一切なく終始落ち着いた雰囲気の上映となりました。それだけ映画に集中していたという証ですね!

映画は2012年3月16日(金)より3D字幕版と2D日本語吹き替え版が全国拡大ロードショーです。新しく生まれ変わったSWをどうぞ劇場でご体感くださいね。

※ここよりネタバレが入ります。ご注意ください。※

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2010年6月18日 (金)

File.119 CINEMA・TWO音響調整レポート

2010年6月13日、CINEMA・TWO(東京都立川市)で行われた映画『THIS IS IT』の音響調整現場を見学してきました。その様子と、CINEMA・TWOの音響設備を簡単にレポートしようと思います。当作品のサウンドをより良くするために、シネマシティが企画した参加型イベントで、音響技術者の微細な音響調整をじかに聴くことができる貴重な機会でした。

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CINEMA・TWOの外観。ガラス張りの瀟洒な建築です。


1994年に東京都内で初めて劇場構造規格THXの認定を受け(CITY2)華々しくオープンした立川シネマシティ。特に音響へのこだわりは定評があり、そのシネマシティが独自のアプローチで2004年に造り上げた二つ目の映画館がこのCINEMA・TWOで、先般までメモリアル特集記事で紹介したシネマデプト友楽と同じく独立系デザイナーズシネコンです。ここは従来の映画館の音響構造とは全く性格が異なるオリジナルの音響システム「Kicリアルサウンド」を全5スクリーンに採用しています。

映画館の音響システムというのは世界的な基準でセオリーが決められていて、映画館が独自で音響効果を変えるということは通常は行いません。普通の映画館で変えるのは音量くらいです。CINEMA・TWOでは独自に開発された劇場構造とデジタルサウンドプロセッサーを駆使することにより、映画に合わせた調音が可能となっています。言いかえれば普通の映画館は固定された音響設定に則った上映になるのに対し(だからこそ最初の設計・性能や調整の良しあしが重要)、ここでは映画ごとに音質を調整できるシステムを用いて運用されているのです。

このようなスタイルの映画館は類例が少ないですね。通常の映画館でも物理的に行うことは可能ですが音響や映画の音に対して、造詣の深い人物がいないと逆に映画の魅力をスポイルしかねません。Kicリアルサウンドは有限会社エル・プロデュース代表取締役でありサウンド・スペース・コンポーザーの肩書きで知られる井出 祐昭氏と音響コンサルタントの増 旭氏によって開発されたからこそ実現したプロジェクトと言えるでしょう。KicのネーミングはCINEMA・TWOのアートディレクターを務めた海藤 春樹氏、井出氏、CINEMACITYの頭文字を取って名付けられています。

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右が増 旭氏、そのすぐ左が井出 祐昭氏です。




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海藤氏によってデザインされた幻想的な照明。まるで教会のキャンドルのようです。



Kicリアルサウンドって?



Kicが目指したのは映画の音を作るダビングスタジオと同等以上の環境を持つ映画館とすることです。そのために敢えて映画館の設計セオリーから離れた設計となっています。その自信の表れは各劇場の名称をa STUDIO、b STUDIOというようにスタジオと銘打っていることからもよく分かりますし、実際に映画の音を場内で作ることも可能なだけの建築音響を構築しています。

まず最新のシネコンなどと大きく異なる点は、場内環境をより生活環境に近い自然な音空間にしてあるある点です。シネコンなどでは映画に収録された音を反響させないように壁面や天井に吸音材を設置し、過多な残響を防いでいます。クラッシックホールが残響時間を長くとり豊かな響きを聴かせるのに対し、映画館では明瞭な台詞、音声を客席に届けるために強く吸音をしてあります。そのため場内に入ると耳が少しツーンとした感覚を覚えるはずです(参照File.60 場内音楽)
CINEMA・TWOでは吸音をできるだけ抑え、自然な聴感となるような音空間としています。そのほうが聴感上の居心地が良いですし、それで映画館が造れるならやってみようというチャレンジ精神があったものと推測されます。ただし、全く吸音しなければお風呂場のような反響だらけの聞き取りづらい音になってしまうので、音響シミュレーションを重ねて映画再生に適した環境になるように設計されています。

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写真のように壁面がわずかに斜めに立っています。そのかわりに通常の映画館のような吸音材を使用せず、天井に向けて音を反射させる構造を用いています。こうすることにより他の映画館に比べて圧倒的に吸音面積を減らすと同時に定在派(壁の平行面で向き合う音による波長の乱れ。音響に悪影響をもたらす)の問題も処理しています。反響がある分、シネマ用スピーカーよりもより音が遠くへ飛び微妙な音の調整も可能なMeyer Sound社のPA用パワードスピーカーを使用しています。これで反響に打ち勝ち、より繊細かつ力強い音が再生できるのです。Meyerのスピーカーは性能が非常に優れていますが高価で元来は映画用ではないため使用している映画館は国内では少数です。




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天井の拡大写真。吸音板がぎっしりと設置されています。通常の映画館はここに岩綿吸音板パネルを使います。映画館によっては薄手のグラスウールを用いているところも見受けられます。天井に音を集めて吸収しているのがミソですね。グラスウールでは高音域の吸収が強く低音域を残してしまう特性があり、中高音をきれいに出す音環境を作るのが難しく低音過多になりがちです。そのためスクリーンから離れるほど高音がこもりがちになりますが、CINEMA・TWOはセンタースピーカーを除くライトとレフトのスピーカーとサブウーファーをむきだしにしていることもあり後方まで高域減衰が少なく、観賞位置による音のバランスの崩れが少ない造りとなっています。ご存知のように通常の映画館はスクリーンの後ろ側の見えない位置にスピーカーが設置されています。

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傾いた壁、センタースピーカー以外がむきだしになっているのが分かりますね。


さて、今日はKicの解説はこのへんにしておいて音響調整現場の様子をご紹介しましょう。機会があればもう少し掘り下げてこの映画館の音響について記事を書いてみたいと思います。私が以前にCINEMA・TWOのオープン前に招待された「スニークプレビュー」の際の『リディック』の音響は衝撃的で、今までに聞いたことがないタイプの音響空間に圧倒されたものです。そのときのチューンは派手目にしてあったので通常上映とは違うデモンストレーションサウンドでしたが、今回の音響調整ではそれ以来の素晴らしい音とマイケルの魂が息づくサウンドを聴くことができました。



音響調整レポート



CINEMA・TWOにおける最初の『THIS IS IT』興行は2009年10月28日~。再上映が2009年12月19日~(再調整版で名付けてINVINCIBLE SOUND)そしてスタンディング上映。このときの上映も井出氏による調整が行われ各界から絶賛を浴びました。「THIS IS ITなら立川」という評判は瞬く間に広がり以前より映画館ファンの間でおなじみだった「音響の良さなら立川」の名を一般観客層まで知らしめたのです。以前のサウンドでも十分な音響を聴かせていただけに実に楽しみです。

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参加者の多くが女性!偶然にも友人が来ていてびっくりしました。仙台からいらっしゃった方も…。


本来は十数人の参加枠のはずが意外なほどの参加者。反響があったのでしょうね。
まず、井出氏による今回の調整の説明と、CINEMA・TWOの設計構造などについて簡便な解説がありました。井出氏によると
今回は「今まで以上にマイケルの声と愛のエネルギーを忠実に引き出す」とのこと。
これは楽しみです。もともとこの映画はそれほど音質が良いわけではなく、低音域が目立ち台詞が少し引っこんで聞こえるという映画音響的にはバランスの悪い難のある作品です。井出氏も「作品の音を元から直したいくらい」と仰っていましたが同感です。このような素材からいかにしてさらにマイケルのエネルギーを引き出すと言うのでしょう。どのような調整になるのか実に楽しみです。

解説の後は模範上映(冒頭約10分)。1回目は無調整版。2回目がインヴィンシブル・サウンドです。3回目がスタンディングバージョン(大音量)。2回目のほうが明らかに全体がフラットな音声となりノイズ感が低減、全体の各チャンネルのバランスも揃い、より聴きやすい音になっているのが分かります。また声の透明感とノイジーな帯域が抑えられよりシャープでクリアな肉声感ある音声に変化しています。まるでノイズリダクションをかけたうえで全体のバランスを理想的に合わせたような印象でした。上映をストップした後はフィルムを巻き返す時間が必要なのでその間は質疑応答時間となりました。


いよいよ調整開始


デモが終わった後、本格的に調整に入ります。今回はスタンディングライブスタイルで猛烈な音量での上映に向けての音響調整です。聴いていると1曲1曲ごとの平均値を出すような感じでわずかな調整が加わっていることが分かります。決して大きなイコライザー調整ではなく注意深く聴いて帯域が出たり引っ込んだりするのが分かる程度。その繰り返しが続きます。それは主に台詞を担当するセンタースピーカーだけではなくサラウンドスピーカーにも及んでいました。
でもやはり「声」を最重要視しているのは明白で、この声をどのように出すか腐心している様子が見受けられました。
聴いているうちに声が自然と聴こえるようになり、カドが取れてより自然な再生へと変化していきます。調整の間も我々レポーターは歌っても踊ってもOKという非常に自由な時間が与えられ、多くのファンがスタンディングで歌に合わせてノリにノっていましたね(笑)。井出氏もその様子を愉しまれていたようです。

行程としてはまず映画の前半部分で大まかな調整、休憩後の後半部分ではセンタースピーカーのみからの再生やサラウンド無し再生などでより深層部の調整をかけていきました。1回目の上映が終わった後は休憩後、作品を休みなしで上映し最終調整となりました。相当な大音量のなかで的確に音を拾って絶妙にバランスを取っていく様子はまさに「音作り」であり、計測数値上の調整ではなく井出氏ら技術者の聴感で仕上がっていく様は職人技と言えるものでした。



6時間に及ぶ調整の後


そして最終的に仕上がった音。言葉ではうまく表現できませんが凄まじい表現力であることは確かです。まずこの作品の特徴である押し出しの強い低音を出しながらも他のパートやヴォーカルを潰さない圧倒的な肉声感があって、スクリーンから飛び出してくるようなセンターチャンネル。まるで現場にいるような空気感のリアリティとマイケルの生っぽく艶のある美声が感動的です!
普通はただ音量だけを上げてしまうと高音域が目立ってくると同時に重低音域の主張が強くなってバランスが崩れ、他の音声成分をスポイルしてしまうものなのですが、調整によりこんなに多くの音が各チャンネルに割り振られていたのかと唸らされました。

パーカッションのパンチある音声も特筆です。特にこれは前のほうのシート、G列より前あたりで実感できるでしょう。弾けるパーカッションの鋭い音は胸の奥まで突き刺さるような再生です。そこにマイケルのヴォーカルと各パートの演奏が調和しているのだからたまりません。私は後方のM列(個人的に好きな観賞列)で聴いていましたがパーカッションのキレとベース音の量感あふれる再現はまさにコンサート会場にいるような臨場感です。

また今まで映画館では聞いたこともないほどの大音量のため身体の内側まで音が叩きこまれてきます。それにも関わらず場内全体を充満する重低音にビクともしない床や壁面の剛性の強さは、さすがはスタジオクオリティを標榜するだけの建築構造になっていることを再確認させてくれました。サラウンドもフロントスピーカーに使えるほどのパワーがあるモデルなのでしっかりと音が客席まで届いてきて、5.1chをフルに使って音を割り振った制作者の苦労がしのばれました(リハーサル音源なので雑ではありますが)。リアサラウンドにもギターの音、バックコーラスなどがしっかり入っているんですよね。大音量でもそれが確実に伝わってくる、凄いことです。

とにもかくにも激烈な音量ながらサラウンドも含めて各パートがしっかりと自己主張し、本当にロンドン公演に参加したかのようなリアリティあるサウンドで降参です(笑)。あれほどの大音量でありながらソースの情報量を超えるかのようなマイケルのはっきりと明確でパワフルな声の再生には驚きを隠せません。ちょっと私には音が大きすぎるかなという感じはありましたので観賞される方は大音量を覚悟の上で行かれることをお勧めします。元々のミックスではスクリーンより遠く聴こえ、いまひとつパワーのなかったマイケルのヴォーカルが、その場に本人がいるようなサウンドで体感できたことはまさに「リアルサウンド」の名に恥じぬものであったと思います。



その他所感



逆に気になったこともあえてここに。まず前半映写機にシャッター流れが見受けられた点です、普通のお客様ではまず気づかないレベルではありますが映写機のシャッターとフィルムの給装タイミングのズレにより映像がわずかに下方向に流れて映写されていました。ただこれは微細なもので大きな問題はないと思います。映写技師でもない限り気にならないでしょう。あとライブスタイル上映だから仕方ないのですがもう少しLFE(重低音)のレスポンスが下がったほうが個人的には好きですね。下げてあるのは分かるのですが本当の公演よりも重低音は強いのではないか?と感じるほどでした。それでもマイケルの声が演奏が胸に届いてくるのが今回の調整の素晴らしい点であると思います。

この映画を見た誰もが思う感想である「実際の公演を見てみたかった」。
それは永遠に叶いませんが、少なくともこの
CINEMA・TWOのライブスタイル上映は世界で最もその世界観を忠実に再現している上映環境の1つであると確信します。サウンドをくのではなく、“体験する映画”となって生まれ変わっています。爆音や重低音の映画再生が一部の映画ファンの間で支持されている昨今、CINEMA・TWOの今回のサウンドを聴いてしまうとこれまで爆音や重低音と言われていたものがいったい何だったのか…と思わずはいられません。

独創的な建築音響構造と音響設備はもちろんのこと、スタッフの熱意だけでなく井出氏と増氏のゴールデンコンビだけが生み出せる世界観と言えるでしょう。元々Kicはそのライブ感ある音場のため音楽映画、とくにロック映画などには相性が良い傾向があるだけにまさにピタっとはまったと思います。最初に見たとき自分が「音の悪い映画だな」と感じていた『THIS IS IT』にこれだけのエネルギーが込められていてそれを映画館で引き出した事実を思うと、THX(世界基準の映画館構造規格、パラメータの変更はできない)を支持している自分も「映画ごとの音響調整」というものに大変興味を持ちました。

井出氏と言えば個人的には場の空気や世界観を重視しつつ繊細で自然な音空間を生み出す印象がある方だけに、今回ほどの大音量(繰り返しになりますがそれほど凄いボリュームなのです。途中で大音量がさらに上がりましたから!)になったのは意外でした。劇場がビクともしない剛性なので音圧だけで身体が揺れ、鼓動が速まる未体験の音になっています。参加者の熱気や熱意に井出氏自身が突き動かされたのではないか、そういう印象を持ちました。参加者全員の一体感によって作り出された音と言って良いでしょう。最後は拍手喝さいで調整会は終了しました。井出氏の「マイケルはここに来ていると思う」という言葉が鮮烈に思い出されます。

CINEMA・TWOでの再々興行は6月19日より。名付けて「THE EXPERIENCE」。上記のライブスタイル上映の日程は以下。

2010年6月19日(土) 20:00~ 予約/窓口販売 6月17日(木)
2010年6月25日(金) 20:00~ 予約/窓口販売 6月22日(火)
2010年6月26日(土) 20:00~ 予約/窓口販売 6月24日(木)

「爆音はちょっと…」という向きの方は通常上映でも大変なクオリティです。ファンならずともぜひ足を運んでみてください。そして体感してください。志半ばで世を去ったマイケルが目指していたものが少なからず感じ取れると思います。マイケルがこの上映を見たらきっと“I LOVE YOU”と言うのではないでしょうか…。ここまでCINEMA・TWOが本気の音を出すことは滅多にないのでそういう意味でも貴重な体験でした。

そして劇場のスタッフが自分たちの劇場を誇りに思い、好きなことに一生懸命になっている姿に感銘を受けました。好きだからこそ、誇れるからこそこのような挑戦と音響調整レポートというチャンスを与えてくださったのだと思います。最後になりましたが今回このような機会を与えてくださったシネマシティのスタッフの皆様と関係各位に心から感謝の意を表します。ありがとうございます。

For the fans...

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2009年11月15日 (日)

File.113 試写流出

先日発行された業界紙で、映画館の業務テスト試写における「情報流出」についての記事が掲載されました。業務テスト試写については過去記事も合わせてご覧ください。

映画館では上映用プリントに不具合や問題がないかをチェックするために、作品の公開日に先立って映写スタッフの手でテスト試写を行います。テスト試写はプリントの品質チェックのほかに上映機材の動作チェック、編集作業(プリントを上映できる状態にする作業のこと)に問題がないかなどを念入りに確認するのが目的で、この業務は基本的に映写スタッフが行うことが前提ですが映画館によっては映写以外のスタッフにも参加を許しているところもあります。自館で映画を見ることも勉強のひとつであり、私自身もこれについては問題はないと考えています。

先述の記事にある「情報流出」というのは、このテスト試写で見た作品の内容をインターネットで公開している者がいて、劇場スタッフの特権だとなかば自慢するように書かれていると指摘しています。

個人的な結論は、テスト試写はあくまで品質管理のために行っている業務であり、作品の内容を他言することを推奨しているわけでは決してありません。よって公開前に職務上の権限でもって観賞した作品の内容を不特定多数に公表することは好ましいとは思いません。

テスト試写における作品内容流出の是非については賛否両論あると思います。自館の映画=商品を宣伝する行為であればOKと考える方もいらっしゃるかもしれません。一般試写会やプレス・映画評論家向けの試写会については宣伝することを目的に開催されるので、観賞者が内容に言及するのは問題ないでしょう。しかし映画館におけるテスト試写はあくまで「業務試写」であって、内容を見るのが目的ではないのです。すでに一般試写会が大々的に行われている作品ならばいざしらず試写会が行われていない作品でも同様な事例が起きていると記事には書かれています。それを特権と称して公表するのはモラル面で歓迎されることとは思えません。

映画が完成して映画館にプリントが納品されるまでに、数多くのスタッフや企業が関わっています。映画館はそのなかで最後に作品にタッチするところです。作品の規模や話題性にもよりますが、制作スタッフや関係者は作品の内容については公開前に外部には公表しないのが常識です。制作スタッフではない、たとえば洋画の字幕翻訳家や宣伝会社、映画現像所のスタッフであっても内容や作業内容について他言することはありません。彼らは映画館のスタッフとは比較にならないほど早い時期に作品を見ていますが、それは業務上で必要なためで他言する理由にはならないのです。話題作を担当するときは内容に関する一切の情報に関しての守秘義務が受託条件になる作品もあります。

もし公開前の作品内容が流出した場合は会社にとっての信用問題に直結します。映画制作スタッフや関連企業の契約は互いの信頼関係によって成り立っているところが大きく、ひとたび信頼を損なうと回復させるのは容易ではありません。作業中の作品の情報を第三者に漏らすことはたとえスタッフ個人の出来心であっても結果的に会社全体の信用力低下として打撃を与えます。映画界に限らず社会とはこのような信頼でつながっていることは言うまでもないことです。
映画館のアルバイトといえども映画業界に関わっており、数多くのスタッフが心血を注いできた作品をお客様にお届けする大切なお仕事です。業務試写で見た作品を特権と称して語ることに良い印象は持てません。

ひどい場合になるとテスト試写から映像や音声までもが流出した事例も過去にあります。違法行為であって許されることではありません。公開前の情報流出はこのような行動へエスカレートしていく原因になることも危惧されます。悪気がない行為でも信用低下はもちろんのこと権利者の権利を侵害する恐れがあることを念頭に置いて業務に当たる必要はあると思います。

近年は配給会社も劇場内での映画の撮影・録音を警戒して様々な手段を講じるようになりました。日本でも大ヒットしたハリウッドの某話題作は最後巻(映画のプリントはいくつかの巻に分かれている)だけ公開日間際に別納する方法が取られました。言うまでもなくテスト試写からの内容流出を懸念しての処置です。この場合はすべての編集を終えてからでないと正確な試写ができないためにある程度の抑止効果はある半面で、公開直前の編集や試写業務は映写スタッフへの負担を強います。一部の心ないスタッフの行いによって現場に負担がかかるのは決して望ましい状況とは言えませんし、本編前に盗撮抑止キャンペーンフィルムを上映しなければならないなどお客さまに対しても心苦しい結果を生み出しています。

そのためポジティブな内容であっても、テスト試写に参加したスタッフは業界関係者として未公開新作の中身に大々的に触れることは避けるべきだと考えます。本当に集中して品質チェックをしていると、内容まであまり気が回らないものです。テスト試写が本来あるべき役割を果たせるように、参加するスタッフも真剣に作品に向き合ってほしいと願います。

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2007年12月 1日 (土)

File.102 予告と音響

管理人多忙のため記事更新が滞っております。楽しみにしていただいている方にはご迷惑をおかけいたしますが何卒ご容赦ください。気長にお待ちいただきますようお願い申し上げます。


さて、今日は久しぶりに音響のお話をしようと思います。以前にご紹介した映画館設備マニアの記事の続きです。


ドルビー・デジタルの登場

映画館の音響設備の拡充に伴って、映画の音響にこだわる方が増えているのは前の記事でお話した通り。その火付け役となったのは劇場用デジタル音響システムのドルビー・デジタル(SRD)の登場に他なりません。
それまでもドルビー・ステレオ(Dolby A-Type)ドルビー・スペクトラル・レコーディング(Dolby SR)などの音響システムで定評のあったドルビー・ラボラトリーズが開発したこの方式によって、映画の音は従来のアナログ光学録音と比較して、音楽CD相当まで向上したと言われています。


映画館ではおなじみ、ドルビーのダブルDマーク

ドルビー・デジタルの発表は1992年。翌年に最初の国内シネコンであるワーナー・マイカル・シネマズ海老名が映画館では日本初となるTHXシアターにドルビー・デジタル、デジタル・シアター・システム(dts)、ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド(SDDS)を引っさげて華々しくデビューしました。

WMC海老名7番THXスクリーンでデジタル音響システムを体感し映画音響の世界に引きずり込まれていった人は数知れず・・・、管理人もその一人です。『プライベート・ライアン』の凄絶なサウンド、『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』のポッドレースシークエンスの360度サラウンドは、マニアの間では語り草になっていますね。その後はデジタル音響システムを標準装備したシネコンが当たり前となり、多くの人が気軽に高音質を楽しめるようになりました。

ドルビー・デジタルの音声方式、特性、性能など小難しい話はまたの機会とさせていただき、今日は関連して予告編の音声と映画館の音響性能について簡単に触れてみようと思います。


マニアと映画館の音響

映画館設備マニアは映画本編のサウンドを聴いて作品と映画館の音質・音響を判断するのが通常です。デジタル音響が当たり前になった現在ではアナログ方式(ドルビーSR、dtsステレオ等)には興味のない方も多いようで、デジタル録音の作品のほうが一般的には音響評価の対象となりやすい印象を受けます。

しかし本編での評価には落とし穴があります。映画の本編でサウンドを評価する場合、複数回同じ作品を鑑賞しないと比較評価ができないので、音響の優劣が作品の録音品質によるものなのか、劇場性能によるものなのかが判別しにくいのです。
例で言うなら
上質の音響性能の映画館で録音品質の良くない映画を鑑賞した際に、音の悪い原因が映画館にあると誤った評価をしてしまうことがあるんですね。当然、この逆のパターンもあり得ます。

初めて訪れた映画館で初めて見る作品だと、音響が悪いなと感じた場合に作品と劇場のどちらに原因が多くあるのかを分析するのは至難の業です。現在の映画館の多くは映画館の基本的な音響設計に則って建築されていますが、実際に再生される音は内装材の種類や劇場の形状のほか音響設備のチューニング等の影響で実に様々です。つまりは同じ映画でも映画館によって音響や聴こえ方が異なってくるのです。

音響の専門家でもない限りは、これらの微妙な差を本編の鑑賞のみで評価分析することは大変難しいように思います。マニアが各個人の嗜好を物差しとして評価するぶんにはあまり影響はありませんが、純粋に映画館の音響性能を客観的に推し量りたい場合には厄介な問題です。


予告は音響性能の物差し

では作品の録音の影響をなるべく受けずに映画館の音を判断する簡便な方法はあるのでしょうか。おすすめなのが敢えて本編は音響評価の参考にとどめておいて、予告編で映画館を評価する方法です。

以前はアナログ録音が多かった予告編も現在はデジタル録音が主流となり、シネコンで上映される予告編のほとんどがドルビー・デジタルで記録されています。デジタル音声はアナログ音声で再生することもでき、予告編をアナログとデジタルのどちらで上映するかは映画館の判断によりますが、デジタル録音のものはデジタル再生されることが多いです(予告はアナログで上映する方針の映画館もあるようです)。
予告編のデジタル音響化によって、本編に勝るとも劣らない高音質のものも珍しくなくなりました。最近だと『トランスフォーマー』の予告編が重低音を効かせた迫力あるものになっていましたね。

予告編での音響評価をおすすめする理由は、初めて訪れた映画館でもその場で比較評価ができるからです。予告は作品のジャンルや観客のメインターゲット層に合わせて映画館がチョイスして上映します。本編前の予告編は様々な配給会社の作品がランダムに組み合わされているのです。

予告編といえども作品が異なれば当然音作りも録音も全く違うのは本編と同じ。そのような違う条件のものが立て続けに上映されるので、作品による録音品質のばらつきをなかば排除して映画館の特性判断に集中することができるのです。
今までの経験では予告編で映画館音響を評価しているマニアの方はあまりいらっしゃいませんが、初めて訪れた映画館でも客観的に判断しやすい方法なので個人的におすすめしています。


チェックポイントは?

音響の判断基準は個人差があるのでいわゆる「正解」はないと思いますが、この方法ならではの判断基準として「予告編ごとの録音品質・個性・特性を正確に再生できる再現力」のチェックが挙げられます。
モニター力の優れた映画館(映画の録音品質をデフォルメせずにさらけ出せる、座席位置による音質の差が少ない、音の情報量や解像力が高い、微小な音も埋もれずに描き分け聴き取れるなど)だとそれぞれの予告編が全く違う音に聴こえ、予告編が変わるごとにその違いが新鮮に感じられるのです。

映画館の設備が向上した現在でもこのような聴こえ方をする映画館は非常に少なく、ごく限られた映画館でのみ体感できるように感じます。多くの映画館では予告ごとの音響の差異はあまり感じられないように思いますし、これを意識せずに漠然と聴いている方が多いと思うのですがいかがでしょうか?


予告を描き分ける映画館は数少ない

予告編の音を描き分けることは、ソース(音信号)の個性を自然に引き出しているとも言えます。音響設備のメンテナンスと調整、基本となる音響性能や機材性能が良くなければ実現できません。一部の試写室などはこの性能が非常に優れており、ちょっとしたノイズやアラまではっきりと再生されてしまいます。これが実感できる箱は予告編の音を聴いただけでもひとあじ違いますから本編の音も有意義にチェックできますね。

残念なことに予告編の音質差がはっきりと分かるような映画館は多くありません。世界的な劇場規格のTHX認定館でも少数です。なので予告編からひとあじ違うと感じられる映画館は注目する価値はあるでしょう。
ひとあじというのは重低音が凄いとかサラウンド感があるとかでは決してなく、前述のようにソースの再現力と正確性に優れていることを指しています。迫力ある重低音や強いサラウンド感など特定の特性が際立っている映画館は、経験上概して正確性は高くないことが多いと個人的に思います。

いずれにしても映画館は映画を見るところなので音を楽しみつつも、やはり映画を心から楽しみたいもの。音ばかりに集中して作品は上の空にならないように気をつけたいですね。

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2007年8月16日 (木)

File.96 はじめての映写

映画館の仕事でいちばん地味な仕事の映写。今日は映写のお仕事について触れようと思います。

映写の基本的な仕事は映画上映機器の操作や上映準備をして映画を上映することです。設備機器の自動化が進んだおかげで現代は誰でも比較的容易に上映操作が行えるようになりました。

自動化が進んだとは言っても上映業務をコントロールするために人間の存在は不可欠です。上映機器の機能が高度化するのに伴って、映写作業の多くを機械に任せられるようになったとはいえ、細かな操作や準備作業は今も人間の手作業が生きています。

ベテランと呼ばれる映写技師にも入門者の頃がありました。皆、上司や先輩の指導を受けて経験を積み、一人前の映写技師へと成長していきます。映画『ニュー・シネマ・パラダイス』では主人公トトが映写の仕事を覚えていく場面があり、映写畑の者には感慨深いですね。
はじめて映写の仕事に就く方の多くが映写機の操作は未経験。懐かしい8mm映写機の経験がある方は大勢いらっしゃると思いますが、35mm映写機はほとんどの方がはじめてですね。多くの人が同じスタートラインから仕事を覚えます。

ビデオデッキやDVDプレーヤーと違い、フィルム映写機は扱いの習熟に時間を要すため映画館は映写研修要領に沿って新人研修を実施して一人前へと指導していきます。研修要領の内容は各映画館によって様々ですが、いずれも最終的な目標は“安全確実に高品質な映写業務を遂行できる”ことにあります。

・研修内容について

研修の際は最初に映写室と劇場内を見学してもらいます。映写室は一般に公開されることは稀ですから、映写を志望して入社した人ならば感動と興奮の連続かもしれないですね。シネコンでは広い映写室に映写機器がずらっと並んでいて壮観です。映写機と同様に映写室も近代化が進んだので『ニュー・シネマ・パラダイス』のような昔の味のある映写室はシネコンにはありませんが、室内が薄暗い他はいたって快適な環境が整備されています。

次に基本的な映写研修内容のガイドラインをご説明します。

映写研修は運転免許教習に似ていて、いわゆる「実技」「学科」の組み合わせで構成されています。
実技は映写機の取り扱いや音響機器の操作、トラブル対応などの身体で覚えていく内容が中心。学科は上映の仕組みや理論、サウンドシステムや機械知識など机上で覚える事柄となっており、研修の進め方は指導者によって個性や違いがあるのがおもしろいところです。なかにはロクに研修をせずに実務を任せてしまう映画館もあるらしいですが、作業内容に不安が残りますね。

・実技

映写機が自動化されているとは言っても、研修をせずに誰でもすぐ扱えるほど単純な構造ではありません。


映写機ってこんなふうになってるんです

画像の映写機は、フィルムのセット手順が比較的単純なモデルです。単純とは言ってもはじめて見る方には構造や機構はよく分からないと思います。映画を上映するには多数ある歯車やローラーの順序や方向を間違えないようにフィルムをセッティングしなくてはなりません。間違えると事故の原因になってしまいます。

映写機へのフィルムのセットは最重要項目。映写の基本なので繰り返し練習を行います。最初のうちはフィルムの経路が覚えられずにとても時間がかかってしまったり、誤ったセットを行ってしまうこともよくあります。
研修中に間違えることはとても良いことで、同じミスを繰り返さないためのステップアップにつながります。反復して練習をしているうちに身体が自然にセッティングを覚え、スムーズに作業が行えるようになり、同時に手順や作法に個人の多少の癖や個性が出てきます。

映写機のフィルムセットをマスターしたらオートメーション(映写機、音響システム、劇場内設備等の動作管理をするコンピュータ)の扱い方を学び、上映の開始から終了までの一連の流れをコントロールする方法を学びます。手動操作がメインだった昔は実技で覚えることが多かったのに対して、自動化された現在の映写機ではコンピュータの操作が多少なりとも求められます。

・学科

実技と平行して学科も学びます。覚えることや専門用語が多いので興味がない人には少し酷かもしれませんが映写に興味のある人は知識の吸収が速いように感じられます。興味のない人には関心を持ってもらうように工夫して研修を進めるのは指導者にとって大切な仕事ですね。仕事に対する興味を持ち合わせていないスタッフによる映写の運用はリスクを伴い品質管理面等で不安材料となるのです。

学科は実技をサポートする理論武装がメイン。その中心となるのは映写技師としての心構えや責任の重要性などのマインド面の教授と、映写機の機構や全体システムの構成把握、上映作業の順序やサウンドシステムおよびフォーマット等の実技に付随する知識の習得です。

お客様から映写の質問を受けたときに回答できるだけの知識は研修中にマスターしておくことが望ましいといえます。たとえばサウンドフォーマットの種類、スクリーンのサイズと客席からの視野、客席数などは日常的に問い合わせがある事柄なので映写以外のセクションも簡単な研修で学ぶことが多いです。詳しいお客様でない限りはこれ以上の難解な質問はないので基本的な知識だけで最初は充分です。覚えることが多い研修期間は、全てをマスターしようとするのではなく、習得内容を厳選して覚えていくことが上達への近道だと思います。

・実務

そしていよいよ実務デビューの日。
映写機の点検とセッティングを済ませて入場開始のシグナルをフロアスタッフに送ればお客様が続々と入場してきます。緊張のあまり心臓はバクバク…心拍数が極端に上がります。
上映時間直前に最後の点検を済ませるといよいよ上映スタートで緊張の一瞬!ファーストカットが銀幕に映写された瞬間の達成感は言葉では言い表せないものがあります。上映が無事に終了すると大変な疲労感はありますが同時に心地よい満足感で充足され、長い研修の疲れも吹き飛ぶことでしょう。

苦労してセットした映写機ではじめてスクリーンに映像が映し出されたときに「感動した」という話をよく耳にします。フィルムに焼き付けられている1コマ1コマの連続画像が映写機を使うことによって映画としてスクリーンに生命を吹き込む、その不思議な感覚を味わうのは映写ならではの醍醐味のひとつです。

映写の仕事を続けていくうちにこのような「はじめての映写」で味わった緊張感と達成感は慣れによって薄れていき、ベテランへと成長します。映写に携わる者はいつも緊張感を持って仕事をしたいものだと常々思います。そのほうが完成度の高い仕事になると考えています。

いかがでしたか?映写の仕事は覚えることが大変多く、慣れるまでは辛いこともあるかもしれませんが、興味のある方はぜひ映画館の求人募集に応募していただきたいですね。現在の映写の仕事は基本的に誰でもできるように簡略化されているので、研修を受ければすぐに上映業務は行えるようになります。

ただし、研修からの一人立ちはスタートラインに過ぎません。そこから“高みに上る=付加価値の高い映写”をお客様に提供できるかどうかはその後の個人の貪欲さと熱意にかかっています。映写の良し悪しが分かるお客様が増えて、映像・音響共に優れた映画館が意図的にチョイスされるのも珍しくなくなったことは、映写のレベルが映画館全体の評価に直結する時代になったことを意味しています。

高品質な映写による映像と音響は映画に生命を吹き込む重要な要素で映写技師としての大切な仕事。はっきり言って大変で、緊張する仕事だと思います。お客様に対して自負のある映写を行うには相応の緊張感が必要ですが、この繰り返しによって成熟した品質を誇る映画館が生まれてくるのではないかと思います。
我こそは!という方はぜひ映写の仕事に興味を持ってください。映写の仕事に必要なのはその熱意と興味なのですから。

制作者から映画を預かってお客様にお届けする。映写の仕事は映画の画竜点睛をつかどる夢のあるものだと個人的に感じています。映写が情熱と誇りを持って仕事に徹することで映画は完成し、日の目を見るのです。この責任ある仕事に力を注げる人こそ、“映画館の心臓・映写”に必要な人材と言えるのではないでしょうか。

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2007年2月28日 (水)

File.84 フィルムと検査機

先日興味深いニュースを目にしました。

「LOST」撮影フィルムが、空港の手荷物検査機で消去される!
人気ドラマ「LOST」の撮影済みフィルムが、空港のX線検査装置で消去されるというアクシデントが発生した。事件が起きたのは「LOST」のロケが行われているハワイのホノルル空港。フィルムの缶には、X線検査装置に通さないようにとの注意書きが貼られていたのにも関わらず、係員が機械に通してしまったため、すべての収録映像が台無しになったという。消去されてしまった場面を撮り直すためには、30万ドル(約3600万円)の経費がかかるようだ。
2月20日21時33分配信 eiga.com

何とも不運な事故です。未現像フィルムを移送する際にはX線検査機に対して十分な注意と配慮が必要なのですが、それが何らかの理由で機能していなかったようですね。

今回はこのニュースに関連して、撮影フィルムと検査機との関係についてご紹介いたします。

映画の撮影媒体の大部分には映画用35mmフィルムが使われています。ご存知のようにフィルムは感光材が光を受けることで化学変化(感光反応)を起こす性質を利用しており、撮影時にキャメラレンズを通してフィルム感材面に当てられた光線によって像が形成されています。
フィルムは照明光や太陽光はもちろんのこと、放射線にも感光します。一例としてはチェルノブイリ原発事故直後に撮影されたニュースフィルムに大量の白いノイズが映し出されるのですが、これは原子炉から大気中に放出された放射線物質によってフィルム全体が感光していることを如実に表しています。

そのため放射線を利用する荷物検査機へ不用意に未現像フィルムを通すと同様に感光してしまう危険があり、感光すれば被害の程度にもよりますがカブリと呼ばれる濁りや縞模様が写って使い物にならなくなってしまいます。

・検査機について

空港の荷物検査機は主に2つの種別に分けられ、機内預け(受託)荷物用検査機と手荷物用検査機がありますが特に注意を要するのが機内預け荷物用検査機です。手荷物検査機は基本的にはフィルムセーフで運用されています。

現在フィルムにとって脅威となるのがこの数年の間に世界の主要空港に導入されている通称「InVision」と呼ばれる検査機です。主に機内預け荷物検査機として運用されており、特徴として危険物の被疑ある物品があったときに自動的にビーム出力を上げて探知する機能を備えています。この高出力(幅1cm/出力100-300 mR)は従来型検査機の数百倍にも達するX線エネルギーとなってフィルム画像を破壊してしまいます。


InVision検査機 CTX 2500

皮肉にも航空の安全を確保するために開発された機能がフィルムにとっては致命的なものとなりました。探査方法にも特徴があり、分かりやすく例えるなら従来型の検査機は被写体を平面状に捉える医療用レントゲン写真で、InVisionは立体的なCTスキャンのような構造になっています。

このInVisonに撮影用フィルムを通した際の感光率は100%と言われており、撮影者にとって最も注意を要する検査機器のひとつです。奇しくも映画フィルムが収められた金属缶や写真用35mmフィルムの金属ケース(パトローネ)はInVisionの出力を上げさせるだけのガード力があるため、容赦なく強力なX線を照射されてしまう原因となっています。
以前から撮影者の間では「フィルムは機内預け荷物にはしない」が常識となっていましたがInVisionの登場でこれは疑う余地がありません。InVisionは撮影者にとってまさに悪魔のような恐るべき存在なのです。

今回『LOST』のフィルムをLOSTさせてしまったのはほぼ間違いなくInVision検査機。ホノルル空港では実際にInVisionが運用されているからです。恐らくは別検査となるはずだった撮影済フィルムを係員が誤ってInVisionに流してしまったのでしょうね。
なお記事には「消去」とありますがInVisionにフィルムを通しても完全に画像が消滅してしまうことはありません。つまりは使い物にならないほど被曝感光してしまったということでしょう。なじみの薄い「感光」よりも分かりやすさを重視して「消去」の表現を用いたと推測しますがいささか誤解を招く恐れがあるように感じます。

現在InVisionは米国内主要空港と世界の主要空港を中心に50ヶ所以上で稼動しているといわれ、実際にどこの空港で運用されているかは保安上の観点から公表されていません。ホノルル(HNL)、ロサンゼルス(LAX)、ニューヨーク(JFK)等の他、国内空港では関西国際空港国際線ターミナルと成田空港第1旅客ターミナル南ウイング(国内線・国際線)・第2旅客ターミナル国内線で運用されているようです。将来的には手荷物検査機にも導入されると言われているので、撮影者は空港利用前に事前調査・準備をしておくことが大切ですね。

ひとつの目安としては荷物預けカウンターの手前に検査機がある場合は多くが従来型で比較的安全、無い場合(コンベアの奥で利用客から見えないところにあるタイプで、インラインインスペクションと言います)は危険。また検査機の概観が医療用CTスキャナのようなものは危険です。素人目には確実な識別ができないので運用係員に尋ねるのが良いでしょう。安全なものには「FILM SAFE」との表示があるはずです。

・検査機への対策

では撮影者はどのように自衛したら良いのでしょうか。写真などがお好きでフィルムを航空機や国際航路に持ち込むことがある方の参考になれば幸いです。
抜本的な対策は以下の通りです。

 ・未現像フィルムは検査機に通さない(航空会社や運送会社に預けない)。
 ・空港では手検査を。
 ・空港利用前に滞在先のラボで現像処理をする(現地でフィルムを購入)。

検査機からフィルムを保護する最善の方法はいかなる場合も荷物検査機にフィルムは流さないこと、これに尽きます。しかしながら現在の世界情勢を鑑みれば必ずしも要求が通るとは限りませんし、海外の空港ともなれば外国語で意思表示することにためらうこともあるかと思います。

ちなみに米国では米国連邦航空局(FAA)規則によって旅客が感光性製品の非X線検査を要求できる権利を認めています。撮影者の財産と権利を保障する点で評価できると思います。

108.17(e)
No certificate holder may use an X-ray system to inspect carry-on or checked articles unless a sign is posted in a conspicuous place at the screening station and on the X-ray system which notifies passengers that such items are being inspected by an X-ray and advises them to remove all X-ray, scientific, and high-speed film from carry-on and checked articles before inspection. This sign shall also advise passengers that they may request that an inspection be made of their photographic equipment and film packages without exposure to an X-ray system. If the X-ray system exposes any carry-on or checked articles to more than 1 mill roentgen during the inspection, the certificate holder shall post a sign which advises passengers to remove film of all kinds from their articles before inspection. If requested by passengers, their photographic equipment and film packages shall be inspected without exposure to an X-ray system.

FAA規則108.17(第108部--航空機運用者の安全性)(e)
認可保持者は、検査所およびX線検査システムの目立つ位 置に、機内持ち込み荷物または預託荷物がX線によって検査されることを旅客に告知すると共に、検査前にX線フィルム、科学用フィルム、および高感度フィルムを機内持ち込み荷物や預託荷物から取り出すように旅客に助言する標識を掲示しない限り、X線を使用して機内持ち込み荷物または預託荷物を検査することはできない。この標識はまた、旅客がその写 真機器やフィルムパッケージの検査を、X線検査システムを通 さずに行なうように要求できることをも、旅客に助言するものとする。X線検査システムが機内持ち込み荷物または預託荷物に1ミリレントゲンを超える量 を照射する場合、認可保持者は、すべての種類のフィルムを検査の前に荷物から取り出すように、旅客に助言する標識を掲示するものとする。旅客から要求された場合、旅客の写真機器やフィルムパッケージは、X線検査システムを通すことなく検査されるものとする。
 

まず基本的対策としてはフィルムは手荷物とすることです。手荷物検査機では通常ISO400までは安全とされており、国内空港ではISO1600までの安全が保証されています。なおこの安全基準はあくまでガイドラインであり、検査機の運用は空港のセキュリティ状況によって日々変更されます。また検査機に幾度も流すことがある長期渡航や、増感現像処理を行うフィルムの場合はさらに注意を要します。最悪の事態を想定しあらかじめ露出過多で撮影し減感現像を行う荒技もあるようですがこれは本当に緊急手段で非現実的すぎますね。


手荷物検査場

運良く検査機の使用を拒否して認められれば手検査が行われます。これは文字通り係員が手にとって目視検査をする方法で、場合によっては硝煙検査が行われることもありますね。手検査は時間がかかるうえに係員への負担を強いるので時間に余裕を持って検査ゲートに向かうことが条件となります。
機材を手検査する場合はキャメラやレンズが問題なく動作するかチェックされます。イミテーションか本物かどうか調べるためなので、シャッターや絞りなどの基本動作を求められるのです。

・管理人の対策法

ここで参考として管理人が行っている検査機対策をご紹介します。
個人的な経験からのやり方ですのであくまでご参考までに…。

  1. 基本的にフィルムは検査機に通さない!
    しかし保安体制によっては聞き入れてもらえないので、検査機に通されることを前提として準備をしておきましょう。
  2. カメラやマガジンからはフィルムを抜いておく。少しでも係員の負担を減らすために感光問題のないフィルム以外の機材は検査機に通せるようにしておきます。
  3. フィルムは一目でそれと分かるように露光しない程度まで裸にしておき、透明なビニール袋やプラスチックケース、ネットなどに収めて係員にすぐフィルムと分かってもらえるように準備をします。管理人は軽くて丈夫な洗濯用ネットで代用しています。
  4. 絶対に預け荷物にはしない。最重要ポイントです。
  5. 検査ゲートには誰よりも早く向かう。手検査は時間がかかるうえに検査係員へ負担を強います。お願いする立場なのでその他のお客様や係員へ出来る限り迷惑をかけないことが大切。
  6. ゲートの前でフィルムを準備して出しておきます。余計な時間を取らないためと、係員には「フィルム手検査を要求する客が来た」とあらかじめ分かってもらうためです。
  7. 係員に手検査を要求。海外空港で英語に自信がない場合も大丈夫。
    「This is a film for cinematography(photography),Do not X-RAY.Hand inspection please.」程度で十分通じます。フィルム以外の機材や物品は率先して検査機にお願いすれば混雑時以外は承認されやすいです。
  8. 自身は素早く金属探知ゲートを通過し、邪魔にならない場所で待機。ここで不用意に警報が鳴らないように金属品は忘れずに身体から外しておきましょう。
  9. 手検査をしてもらったら必ず御礼の言葉と感謝の気持ちを伝える。

一目で分かるよう洗濯ネットに入れたフィルム缶。表面にはイーストマン・コダック社の「DO NOT X-RAY」ステッカーを貼付しX線に弱いフィルムであることアピール。係員にフィルムであることと、検査機検査を希望していないことを瞬時に分かってもらえることが大切。

今まではこれらの対策のおかげか派手に感光したことはありません。しかしながら従来機でも検査回数が多ければ少なからず影響はあるようでISO400の写真用フィルムがかすかにカブリを生じたことがあります。通常の使用では気づかない程度のカブリですが背景が淡色や単色のときはやはり目立つので注意が必要ですね。

注意すべき点として写真用品店で販売されているフィルム用X線防止袋は絶対に使ってはいけません。X線防止袋を使うと検査機は正体不明の物品と認識、InVisionでは最大出力を誘因して取り返しのつかないダメージを受ける元です。通常検査機でも出力を上げる要因になり最悪の場合は感光することがあるため、フィルムを保護しようとして使うとやぶ蛇になることも。また精密検査のためにバッグの開封を求められるなど良いことはほとんどなく係員の心証にも良くありません。
X線防止袋は普段のフィルム保存用に活用するのが一番です。あまり知られていませんがフィルムは光のない暗黒に保存していても宇宙からの自然放射線によって徐々に感光しています。X線防止袋はこの被曝を軽減することができるので長期保存用アイテムとして有効利用ができるのです。

検査の際は身なりも重要で、きちんとした身だしなみほど手検査を受け付けてもらいやすい傾向があります。聞いた話では上位クラスの搭乗券も効果があるとかないとか…。たしかに第一印象が係員に与える影響は大きいと思うので、長期旅行等の場合でも不審者と思われぬよう小奇麗な身だしなみを意識しておきたいものです。


フィルムを持って楽しいフライトを!

誤解を防ぐために追記すると、検査機による影響を受けるのは未現像フィルムのみで、現像処理後のフィルムは問題ありません。またデジタルカメラやビデオカメラの記録媒体に関しても感光物質ではないので問題はありません。ですがカメラなどの精密機器や貴重品を受託荷物とするのはリスクが大きいので、いずれにしても機内持ち込みすることをおすすめします。

今回のニュースは制作者、空港関係者双方共にプロの仕事としては信じられないような珍事でしたが、実際にこういうことがあるんだという具体例となったと思います。損害額30万ドルという規模の大きさにも驚かされました。ドラマの撮影にビデオではなくフィルムを使用していることに驚いた方もいらっしゃるかもしれませんね。

余談ですが最初にこの記事を書き上げた直後、トラブルで全て消去してしまいました…。本記事は当サイトとしては長文の記事なので消えた瞬間は茫然自失…。第一稿はもっと長かったのです。内容がアレなだけに笑うしかありませんでした。皆様もお気をつけください!?

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2007年2月21日 (水)

File.83 映画館設備マニア

前回のFile.82 映画館マニアに続いて、映画館マニア記事の第二弾です。

シネマコンプレックス(複合型映画館)によく出かける方はお気づきかと思いますが、近年の映画館における映写設備の向上はめざましいものがあります。大手シネコンを中心として作品の力を存分に引き出すための様々な設備・工夫が施されるようになり、映画館は単に映画を鑑賞するのではなく「体感」する施設へと変貌しつつあります(参照 File.61 東西最新シネコン)

同時に増加しているのが今回ご紹介する映画館設備マニア。彼らは映画館で映像や音響の性能を独自判断し、高性能で好みに合う映画館を探している人々で、そのなかで中心的存在となるのが音響マニア、映画館の音響に対して一家言を持つタイプです。

一般的に理解しがたい世界かもしれませんが、音響マニアと自認するほどの人になれば気分や作品に応じて映画館を使い分けるようになります。同じ作品でも映画館によって音や映像の再現能力が異なるために、自身の経験から作品にマッチするであろう映画館を独自に選出してわざわざそこに出かけて行くのです。彼らにとって映画を観ることと同時に「この作品をこの劇場で観る!」という強い動機が存在するんですね。

さらにのめりこめば映像と音を愉しむために同じ作品を複数の映画館で見比べに出かけることもあります。映画を楽しむと共に、同一作品を違う劇場で見比べて映画館の上映クオリティを判断するのです。同じ作品を違う劇場で見るということは比較対象を設けることとなり、劇場の性能や個性を明確にチェックする基準となります。違う劇場で見なければ音響の良し悪しが作品によるものなのか、劇場性能によるものなのか判別しにくいため客観的にチェックする良い方法と言えるでしょう。

ここまでお読みになって「信じられない!」という方も大勢いらっしゃると思います。しかし映画館ごとの音響性能は軽視できないほどの格差があることは事実で、音響制作者が満足に足る再生能力を持ちうる劇場は多くはなく、それらの劇場で鑑賞する作品は音声だけでも説得力を感じさせる力を持ち得ています。ハリウッド大作映画では音の制作にも多くの時間が割かれ、入念に音響が創り込まれているのを実感することができます。

映画館と一口に言っても設備水準や映写性能には大きな差異が存在していて、とくに現行のデジタル音響を効果的に再生するには音響学、映画音響学、建築音響、室内音響、電子工学などを踏まえた劇場設計が不可欠となっており、最新の映画館はこれらを踏まえた綿密な配慮がなされていますが、それでも劇場ごとの性能差は歴然と存在しています。つまり、最新のシネコンでも必ずしも完璧ではなく、逆に従来の映画館でも優れたサイトは存在するということです。

映画館設備マニアはそういった高品質な映画館をインターネットの口コミや劇場の設備内容から予測して出かけていきます。ディープな人だと音響と内容に期待をかけている作品であれば新幹線や航空機を使ってまで遠路の劇場に遠征していくことすらあるんですよ。
そんな遠征音響マニアを最も多く生み出したであろう映画はやはり『スター・ウォーズ』シリーズ。1977年の第一作から常に最新最高の映像音響技術を投入し続けたハイテク映画で、映画音響の新たな次元を切り拓いたTHXの生みの親としてもこれは疑う余地がありません。日本からアメリカの劇場まで遠征しに行ったファンの武勇伝を何度も耳にしたものです。

その一方で『スター・ウォーズ』の上映は映写係にとって非常にストレスのかかる作品でもありました。『スター・ウォーズ』は音響マニアでなくても熱狂的ファン層の厚みがあり、そのうえ音響に対しては特に厳しい音響マニアがウジャウジャ観に来るので(笑)、THX認定シアターともなれば絶対に映写事故は許されない状況に追い込まれていましたね。最終作のエピソード3は全国でデジタル上映設備に不具合が頻発し、悲劇的な状況に陥った映画館もあったようです。

お話しを戻します。

映画館設備マニアの多くは音響を重点的にチェックします。ホームシアターシステムの流行で家庭でもサラウンド音響(スピーカーを並べて音がグルッと自分の周囲を回ったりするやつです)が手軽に楽しめるようになったことから、家庭用機器から本物の映画館のサラウンド音場に興味を持った方も少なくないようです。また映画音響のデジタル録音による高音質化に伴い、ピュアオーディオから転向してくる人もいます。
しかし映像や映写技術に対してチェックを入れる人は少なく、映像よりも音響に興味がある方が多いようですね。映画館音響マニアに比べると映画館映像マニアは少数派と思われます。
映画は映像あってのものなので、もっと映像にも興味を持っていただきたいと思うこともしばしばです。

以前は音響再生方式(SRDやdtsなど)の違いがマニアの間では注目されていましたが現在はSRD(ドルビー・デジタル)での上映が主流のため、再生方式にこだわりを見せる人は少なくなりました。
むしろ最近乱立傾向にある、
映画館独自のオリジナル劇場規格に注目が集まっています。ルーカス・フィルムが確立したTHXを筆頭にそれにならって構築されているものがほとんどですが、各映画館が工夫を凝らして開発しマニアの心をくすぐっています。規格ごとに個性もあるので聴き比べる楽しみ、劇場選択の幅が拡がることでもこういった劇場規格は歓迎されていますね。劇場設計を重視して設備を前面にPRする興行会社も増えてきました。

こうして映画館マニアの間で評判の良い映画館が口コミで広がっていきます。音響マニアの方ならいくつかリストアップすることができるのではないでしょうか?
ただし
重要なのはマニアに評判の良い映画館が必ずしも良い音・良い映像の映画館とは限らないということです。

音響には個人の嗜好が大きく関わるため、人によって判断基準が全く異なります。料理の評価が個人の味覚によって異なるように、映画館の性能も個人の評価基準によって変化するのです。よって本当に良い映画館というのは最終的に自分の好みにマッチした映画館ということですね。

映画館設備マニアや映画館設備については触れたいことも多くあるので、日を改めて少しづつご紹介したいと思います。劇場設備に関心を持つ方がもっと増えることを願うと共に、今お読みの方のなかに映画館設備マニアの方が少なからずいらっしゃれば個人的に嬉しく思います。

けれども映写をする人間にとっては映画館設備マニアは実は恐怖の対象! 劇場入口の機材表示、場内でスピーカー等の機材をチェックしている人を見かけるたびに戦々恐々であります。映写品質にご満足いただけなければインターネット上で何を書かれるか分かったものではありませんからね。そういった面では監査役とも言える存在なので映画館のクオリティ向上のためにも映画館設備マニアはもっと増えてほしいと思います。

次に音響マニアが活発に動き出すと予想される作品は2007年5月5日に公開予定の『スパイダーマン3』。セリフの録音やアクションシークエンスのサウンドデザインが作り込まれていることと、いまや希少価値となりつつある「SDDS」と呼ばれる音響方式での上映が期待されるため鑑賞館を模索している人もいると思われます。

今回は専門用語も多数交えたマニアックな内容となってしまいましたが、あなたも映画館マニアの扉を開いてみませんか。映画の楽しみ方がまたひとつ増える…かもしれません!?

コンパニオン5

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2006年11月17日 (金)

File.74 託されたシャシン

前の2回の記事(参照 File.72 セクション配置)(参照 File.73 セクション選び)で映画館の各セクション(部署)の仕事内容と適性をご紹介し、ご反響を頂戴いたしました。どうもありがとうざいます。今後も映画館のお仕事については機会をみて触れていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今回も映画館のお仕事に関連する内容として、映写業務意識について述べてみたいと思います。

映画制作には多くの人間の力が必要なのはみなさまご存知の通りで、劇場公開映画作品は数多くのスタッフの努力が積み重なって世に送り出されます。とくにハリウッド大作ともなれば関わるスタッフの人数や製作費は膨大なものとなることも珍しくなく、企画立ち上げからスタートして最終的に劇場で公開されるまで、実に長い道のりを経て私たちは鑑賞できるのですね。

大作映画ではエンドクレジットで延々とスタッフ&キャストの名前が流れますが、その一人一人が作品の制作のために努力をしてきました。エンドクレジットは関係者全員の名前が登場するわけではないので間接的に関わった人やエキストラ、関連会社、裏方さん、ボランティア、関係機関など有形無形問わず名前の登場しない人や組織も含めればその何倍、何十倍もの人間が多かれ少なかれ制作に関わっていることになります。
完成した作品は映画現像所で公開プリントが作られ劇場に配送、公開日を迎えてようやくみなさんのお手元(?)に届くのです。

なぜこのような前置きをしたかというと、このことを映画館のスタッフ、とくに映写スタッフには意識しておいてほしいからです。

前述のように映画は無数の人と人との関わりがあり、多くの才能・知恵と技術、資金を投入して生み出されてきます(例外もあるかもしれませんが…)。企画から長い過程を経て劇場公開までたどり着くのですね。例えるならばひとつの作品を各分野の専門家がリレー方式で受け渡して完成させていくようなもので、最終走者は映画館のスタッフになります。
つまり映画館のスタッフは最終走者としてバトンを観客に手渡す責務があるということです。今回の表題「託されたシャシン」のシャシンとは制作や興行の世界で使われる言葉で映画作品のことを指しています。

映画会社は制作スタッフが精魂込めて作り上げたきた自信作=シャシンを映画館に託します。言い換えれば映写スタッフはシャシンを責任を持ってお客様に提供することが仕事です。もしも上映トラブルやプリントにダメージを与えるなどしてお客様にご満足いただけない上映となってしまったら、今まで努力してきた製作陣の苦労はその一瞬で台無しになってしまうのです。

映写スタッフには上映準備のプリント編集作業をはじめとして、上映に関わる作業を慎重・丁寧に行うのは当然のこと、少しでも作品のクオリティを忠実に再現する映写技量が求められます。せっかく映像・音響が作りこまれた作品だとしても映画館の上映環境が貧弱であったり、スタッフのオペレーションが良くなければ作品の力をお客様にお伝えすることは難しいのです。

また映画は基本的に直接作り手が鑑賞者に作品を提供することができないことも重要なポイントです。どういうことかというと絵画や彫刻、写真などの作品は制作者が制作から構成、展示にいたるまですべてを一人でコントロールすることができます。ギャラリーの選定や作品の展示方法を作家本人が自由に構成することが可能なわけです。
しかし劇場公開映画はそうはいかず、監督が映画館で直々に映写機を回すことはありませんし、公開劇場を選ぶこともできません。作品は監督ら制作者の手を離れ、映画館と映写スタッフが上映における権限を持つことになります。

そのため制作陣は上映には関われないからこそ作品の最終調整にいたるまで綿密にテストを繰り返して、少しでも狙い通りの表現になるように苦心します。最終的な上映は自分たちのコントロール範囲ではないわけですから、プリント完成ギリギリまで作りこんで最高の状態でシャシンを映画館に託すのです。映画現像所でもプリントの品質管理には気を配り、様々なチェックを行ったうえでプリントを発送します。

こうして完成された作品が狙い通りのクオリティで上映されていなかったら、制作スタッフはどれだけ悲しく思うでしょうか。これは表現活動をしている方には切実な問題であり、個展を開いたことのある方などはよく分かるかもしれませんね。
作品がピンボケで上映されていたり、映写ランプの寿命が来たような暗い画面で上映されていたとしたら撮影スタッフは辛いでしょう。音が割れた音響や、台詞がこもった再生環境であれば録音・音響スタッフは不本意でしょう…。

余談になりますがこういったトラブルを防ぎ、作品本来の映像と音響を忠実に再現するために研究開発された規格が、ルーカス・フィルムが最初に提唱したTHXシステムです(THXについてはいつか日を改めてご紹介する予定でおります)。THXは劇場設計構造を規格化することで、制作環境に近い映写環境を一般劇場において実現することを目的としたライセンス制度で、国内にも多数のTHX認定劇場が存在しています。基本的に理論上ではTHX認定劇場は映画の録音場所(ダビングステージ)と同等に近い音響再生が可能とされています。

映写知識のある人間が映画館で映画を観ればその映画館の映写意識や姿勢がいくらか感じ取れるものなのですが、きめ細かく気を配った高い映写意識で上映をしている映画館は意外にも少ないようです。
映写の知識や技術を身につけていても、良質な映写を目指そうとする意識がなければ技術はうまく機能しません。まずは技術を身につけるよりも、より良い映写品質を目指すことを追求していくことのほうが映写スタッフには大切なようにも思えます。そうすれば自然と実技は身についていくはずなのです。

またこれは映写スタッフだけにとどまらず他のセクションにおいても同様に言えることで、例え良質な映写であってもロビーなどでスタッフの対応が悪ければ楽しい映画鑑賞も後味が悪くなってしまいます。ひいてはそれが劇場のみならず、作品の印象にまで影響することも珍しくはありません。「映画は良かったけど映画館の接客が良くなかった」というお客様の声は方々で耳にします。悲しいことです。

今回はお堅いお話になってしまいましたが、映画館スタッフはエンドクレジットに掲げられた多くの人々からバトンを受け取っていることを意識して勤務していただければと切に願います。長い製作時間を考えれば一瞬に過ぎない上映時間ですが、お客様が映画を鑑賞するその一瞬をお預かりしているということ、エンドクレジット全スタッフの名前を自分たちが背負っている、そう意識することでお客様に満足いただける劇場へと一歩近づくことができるのではないか…、そう思えてなりません。

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2006年9月29日 (金)

File.69 プログラム販売

映画館で販売される主力商品にプログラムがあります。別名をパンフレットとも言う、作品の紹介・資料集的な役割を持つ商品としておなじみですね。映画館で映画を鑑賞される方にはこういったアイテムを収集されている方も多く、映画館売店にとっても大切な商品です。他に収集目的で人気があるのにポスター、チケット半券、チラシ、前売券などがあります。

本日はこのプログラムにまつわるお話をしたいと思います。

プログラムは主に担当配給会社が企画・制作を行っており(外注制作もあります)、公開規模に応じて制作数が決められます。書店で販売するわけではなく在庫を抱えてしまうと不良債権化してしまうので、むやみに大量印刷するわけにもいきません。逆に在庫不足になりそうな場合は増刷することで対応できますからね。

劇場は配給会社の担当部署に必要部数を発注し、公開初日から販売を行うことが一般的です。予想外のヒットなどによって公開途中にも関わらず在庫数が少なくなってしまった場合は再発注をかけますが、制作元の在庫が切れてしまっている場合などは系列館から間に合わせで在庫を分けてもらうなどして、かき集めて対応します。公開終了日が近い場合は再発注しないで売り切れ扱いが通例です。

単にプログラムといってもいろいろありまして、同じ作品なのに少々特殊なものや違いを持たせて、希少性を高めることがあります。具体例は増刷の際に仕様に差異をつける、コレクターに人気の館名入りなどでしょうか。
まず仕様の差異ですが在庫数の減少などで増刷されたり、または最初から大量の売れ行きが予想できる作品は
初版と増刷版とで表紙のデザイン等が微妙に異なるものを制作してプログラム自体に希少性を持たせることが出来るのです。館名入りも同様で表紙に固有の劇場名を印刷することでプレミアムを持たせることが可能です。館名入りは日本劇場(現日劇PLEX)が有名で、当該劇場でしか入手できないうえに制作数も限られているため熱心に収集されているファンが多いですね。

プログラムの売れ行きが好調と聞くと「ヒットしている」と感じられるかもしれません。しかしここには不思議な落とし穴があって、売れ行き好調=ヒットとは限りません。たしかに話題作であるほど販売部数は伸びるのですが、重要なのは部数よりも一人でも多くの方にご購入いただくことです。

たとえば動員数300人の上映回で30冊売れたのと、動員数100人で20冊売れたのを比較してみましょう。販売・動員成績としては前者のほうが勝っていますが、購入された確率は後者のほうが倍の数値です。
このことは多くの場合、
作品の客層に販売成績が大きく影響されることを意味し、コアなファンがいる作品ほど後者のように購入確率が上昇します。とくに有名原作の映画化、アニメ映画、音楽映画などで顕著に見られます。コレクターが多いジャンルでも同様で、お客様一人当たりの売上げが伸びるのはメジャーな大作映画よりも熱心なファンのいる作品なのです。ミニシアターで作品関連グッズが充実しているのもこういった理由があります。動員規模が小さくても物販成績が非常に高い映画も多くあるので、プログラムの販売数はヒットの大小とはあまり比例しません。

海外旅行好きな方には有名ですが、意外なことにプログラムはほぼ日本独自の商品で海外ではあまりお目にかかれません。外国人旅行客には日本の映画プログラムが密かな人気お土産になっていることなど、文化の違いを感じさせます。プログラム制作には作品中のスチール写真やコメント、プロダクションノートをふんだんに使用するため、洋画ではごく稀に本国の製作会社から制作許可が下りないこともあります。また極端に公開規模が小さな作品はコストと売上げが釣り合わないため制作されないこともあります。

プログラムの楽しみ方にも触れてみましょう。パラパラめくるだけでも映画の記憶が呼び覚まされて楽しめますし、お気に入りの俳優の写真や映画評論家のコメントなど細部まで読むことで作品をじっくりと堪能できます。
あとプログラムで要注目なのは
エンドクレジットがそのまま収録されているもの。邦画ならともかく洋画だと外国語の羅列なので全く興味がない方もいらっしゃると思いますが、フルサイズのエンドクレジットは公開後に何年も経ってから見るとおもしろい発見があったりします。有名俳優がまだ無名時代に出演していたことに気づいたり、特別協力の欄に有名俳優の名やすでに消滅した会社の名があったり…。その他大勢のスタッフのなかに、もしかしたら未来の大物が隠れているかもしれませんよ。また使われた撮影フィルム、キャメラのメーカーや音響方式、ロケーション地名など多くの情報が詰まっています。

プログラムは劇場物販コーナーやグッズ売店で販売されている他に、映画館によってはポップコーンやドリンクと一緒に販売されていることもあります。劇場側としては販売効率の向上化に重点を置いているのでしょうが、ここで気になるのは汚れ。特に黒い表紙だと飲食売店スタッフ手洗いをせずに扱ったときに指紋や汚れが思いのほか目立ってしまうことがあります。コレクターアイテムとして、鑑賞記念として大切にしたいと考えているお客様も多いので手袋をしたり、最初から袋に包装しておくなどの配慮をしたほうが良いですね。
お気に入りの作品があったらぜひ鑑賞記念にプログラムをどうぞ。一緒に作品のチラシと半券を挟んでおけば立派な資料にもなりますよ。

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2006年8月24日 (木)

File.67 予告編と未公開シーン

映画本編の前に上映されるおなじみの予告編。映画館によっては予告編を上映しないこともありますが、たいてい数本の新作予告編が本編の前に上映されるのが一般的です。以前にご紹介したFile.25 予告編と特報File.26 予告編のスコアに引き続き、本日は再び予告編に関連する話題を映画の撮影・編集作業と軽くリンクさせながら取り上げようと思います。

映画の制作過程に編集と呼ばれる作業があります。ひとくちに編集といっても非常に幅広い種類の作業を指しますが、一般的に編集というときは撮影フィルムを切り貼りして一本のまとまった形の作品へ仕上げていく映像編集を意味します。

撮影のほうはストーリーの進行順に撮影するわけではなく、役者・スタッフのスケジュール、美術セット・衣装の準備やスタジオ/ロケの日程や天候、そして予算といった様々な要因に影響されるので、ストーリー展開とは全く異なる順序で進んでいくことが一般的。極端な例ではラストシークエンスからクランク・インすることもあり、役者も様々なシークエンスを個別に撮影していくので役作りや演技力といった役者としての能力が重要なのは言うまでもありません。脚本通りに撮影を進めていく順撮りをされる監督もいらっしゃいますが、予算とキャスティングディレクターらスタッフへの負担がかかる撮影方法ですね。

撮影されたフィルムは映画フィルム現像所へと送られて現像処理され、マスターネガ(原版)と呼ばれる世界にひとつのオリジナルネガとなります。撮影の際はひとつのカットに対してテイク(撮影回数)を重ねたり、別のキャメラから撮影するなどして複数のバージョンを撮影しておき、そのなかから完成意図に最も近いものが本編に使われます。
ネガの映像をコンピュータに取り込んだりラッシュと呼ばれる粗焼きを素材として、膨大な時間をかけて編集作業を行っていきます。
編集次第で作品の表現や意図は180度変わるほど緻密で難しい作業で、編集者のなかには「10年続けてやっと一人前」と言う方もいらっしゃいます。写真家アンセル・アダムスの言葉を借りるなら脚本・撮影ネガは楽譜、編集は演奏とも言えそうです。

さて、ここから予告編のお話に入ります。

予告編を制作するのに本編の完成を待っている時間的余裕は当然ながらないので、完成よりも以前に準備しておく必要があります。本編が完成するころには公開日も迫っているため、宣伝媒体である予告編の存在意義が無くなってしまうからです。
そこで
本編の編集と平行して予告編も同時進行で制作してしまうわけですが、このときに本編が完成していないと次のようなことが起こりえます。

予告編では観客の好奇心・関心を引くためネタバレにならない程度に作中の映像を組み合わせて表現していきますが、まだ本編が完成していない状態で作ると最終的に本編では使われずにお蔵入りになったシーンが予告に登場することがあるのです。つまり本来は本編で使う予定だったシーンが、編集の都合であえなくカット(ボツ)されてしまったのですね。
また先述のテイクに関連するものでは
本編とは違うテイクが予告編で使われていたり、映像は同じでもアフレコ(台詞音声の再録音)のバージョンが違っていたりと様々なパターンがあり注目してみているとおもしろいですよ。

このような例は頻繁にあるので注意深く観察しているとお目にかかることができます。予告編をしっかり観てから公開本編を観ると微妙に違うバージョンのシーンが登場したりてなぜか落ち着かない気分になったり…。
大作・話題作でも同様なことはよくあります。参考例では
『スター・ウォーズ エピソード1』(1999)の予告編で本編と微妙に違う場面があったり、『タイタニック』(1997)ではレオナルド・ディカプリオ演じるジャックがボディ・ガードを殴るシーンや、船内の上流階級旅客の姿など本編では観られないシーンを目にすることができます。

予告編は映画本編と同じように綿密なプランのもとに編集され、予告編制作会社が存在するほど専門性の高い仕事です。映画予告編はいわば映画のCM、公開時期の前後のみ観られる貴重な映像作品とも言え、本末転倒ですが本編よりも楽しめる予告も時々見受けられる気が…。
予告編は本編が公開されると目にする機会が激減してしまうだけに何度も鑑賞することは難しかったのですが、最近だとDVDの特典映像として収録されることも多くなりました。お手持ちのDVDソフトに予告編が収録されていたら、試しにご覧になってみてはいかがでしょうか。もしかしたらお気に入りの作品の見たことがない場面があるかもしれませんよ。

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